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海蛇

報告書部門

巨大水棲生物対策部隊について


 リヴァイアサン、かつて神と呼ばれた高次元の存在によって作り出された『完全な生物』とされている。

 クラーケン、こちらは1800年代頃の航海日誌などに存在を示唆する文章、また当時の船乗り達からの同様の証言を記録した文書が多数発見・報告されている。

 どちらにも共通する事は『どちらも空想上の存在であること』と『強大な海洋生物であること』の2つだろう。一般の人間やこれを見ている君達はそう考えると思う。


 そのリヴァイアサンやクラーケン達の存在が、実際に目撃されてから世界は劇的に変わってしまった。


 その存在が、公的な映像によって確認されたのは、1900年代になってからの話。

 1904年にマリアナ海溝中層部にてリヴァイアサン1号が発見され、1920年には、北海に存在するノルウェー海溝にて、クラーケン1号とリヴァイアサン2号が戦闘している瞬間を撮影した。

 これによってリヴァイアサンやクラーケンは、世界中の海溝に生息していることが明らかとなり、国際的に海洋からの脅威を意識し始めた2000年、人類が地に落ちる事案が発生した。

 我々はこの事案を『起源の波』と呼称しており、原因は世界各地に生息していたリヴァイアサン・クラーケン達が、同時多発的に暴走したからである。

 これを聞いている君達の故郷を始め、私の故郷である日本。そして中国、アメリカ、イギリス、インド……実に100を超える国家が、山地を残して海に沈んでしまった。

 犠牲者も世界全体で、死者およそ43億8千人。推定行方不明者10億人という、尋常ならざる被害記録を我々人類にもたらした。

 この脅威に二度と同じ事を繰り返させる訳にはいかない。残された我々は、人種の垣根を越えて力を合わせる必要がある。

 そして今、ここに! 我等は巨大水棲生物対策部隊、Huge Aquatic Animal Measures Unitの頭文字を取って、HAAMU(ハーム)という名を持つ国際組織を設立するに至った!


 胸を張れ。我々は今まさに――人の住むこの世界を護る使命を帯びた戦士となった。

   初代アイアン・ワーカー アイアス=G=ジェネシスの設立記念公演より抜粋


 組織の基礎理念は『秘匿・研究・討伐』

 HAAMUには計11の大隊と分割部隊が存在し、現在活動している大隊と部隊は計9つ。

 各隊の隊長、独立技術部門、経理部門、総生物研究所、倫理委員会が集まり、合議制によって問題や方針などを決める。

 現在、第4鎮圧大隊『アンデット』と第7分割調査部隊『エージェント』が、無期限の活動停止状態になっている。

 第4鎮圧大隊からは、総生物研究所所属のアールグレイ博士が、責任者代役として第4大隊の意見を述べるため会議に出席している。

 異常存在『命名個体』と呼称する生物群の調査・秘匿ないし討伐。旧文明が有していたとされる失われた技術の獲得。他組織への牽制・交渉……仕事は山のように存在する。


大隊・分割部隊一覧

第1監視大隊『天秤』

  分割作戦部隊『ダモクレスの剣』

  処刑部隊『首無し鳥』

第2前衛大隊『ジャイアント・キリング』

第3後衛大隊『ダック・ハント』

第4鎮圧大隊:アンデット(活動無期限停止中)

第5研究大隊『五行』

第6通信大隊『沈丁花』

第7支援大隊『ノーサイド』

  分割調査部隊:エージェント(部隊再編中)

  分割救助部隊『ノアの方舟』

他部門一覧

 独立技術部門『アイアン・ワーカー』

 経理予算部門『ワイド・ブレーカー』

 総生物研究所『タイガー・アイズ』

倫理委員会『エーシックス』


各部門責任者一覧

 第1監視大隊隊長:テンパラス=R=ジャスティー

 分割作戦部隊隊長:ルーク=フォートレス

 分割処刑部隊隊長:無貌

 第2前衛大隊隊長:剣 士(つるぎ つかさ)

 第3後衛大隊隊長:ジャミー・ヘルツァー

 第4鎮圧大隊隊長:GLORIA(グロリア)

       代理:アールグレイ博士

 第5研究大隊隊長:六道院 比和(りくどういん ひわ)

 第6通信大隊隊長:ゼラニウム

 第7支援大隊隊長:マックス・グスタフ

 分割調査部隊隊長:エージェント・キングス(行方不明により欠員扱い)

 分割救助部隊隊長:人命蘇生装置・Raphael(ラファエル)


 第16代目アイアン・ワーカー:チェスカ・ギルダ

 経理予算総責任者:The Algorithm(ザ・アルゴリズム)

 研究所総合責任者:セイロン・スリランカ

 倫理委員会委員長:アクトン・ゼノン


異常存在『命名個体』とは

 この世界には生物の範疇どころか、物理法則すら歪めるほどの超常的な存在が多数確認されている。それは大抵の場合、リヴァイアサンやクラーケンなどの海洋生物だが、ごく稀なケースだが人の姿をしている場合がある。

 理念に討伐が含まれているが、実のところこの『討伐』の理念は最終手段に過ぎない。基本的には捕獲して研究を進め、異常の発生メカニズムを解明すること、また生態の完全理解が優先される。

 この異常存在の情報は、他組織からの悪用を未然に防ぐ目的で、如何なる外部の人間からも秘匿されなければならない。

 場合によっては、地球どころか宇宙全体の危機を招くほどの異常を発生させるため、調査よりも討伐が優先される個体も存在する。

 なお『命名個体』の詳細などは、長くなってしまうので後述とする。


「端折って説明すると、普通は『デカい奴が強い』ってだけ。例えば『ちっこい奴が強い』のは異常で危ねぇし、逆に一際デカすぎる奴も飛び抜けて危ねぇから、名前を付けてしっかり把握する必要があるってことだな」――説明を面倒臭がる隊員

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