第3話

 早く帰って妻との時間を過ごす事よりも他のことを優先するように。


 なかなか会えない大学時代の友人との飲み会から、一月に一度の会社の同期との飲み会、そして週一ペースで行われている友人たちとの飲み会など。


 度重なる飲み会ラッシュにより、ハードルは少しずつ下がっているようです。


 いやはや、一時はどうなることかと思いましたが無事に目的は達成できそうです。


 最近は女性が半分くらいを占めている同期全員での飲み会などにも参加していました。


 まあ流石に合コンに行かせるとかは彼の性格上無理でしたが。


 まあ慰謝料を取りたいわけではないらしいので問題は無いですが。


 とりあえずここまで来ると縁を切ってしまった際の影響力が低くなるはずです。


 それでも多少影響はありますが最初の溺愛してた時よりはマシです。


 脳内の奥様の比率が80%も占めてるとかなんですか。あの人奥様以外ほとんど見えてなかったですよ。


 現在は大体20%に満たない程度ですね。ある程度関係が良好な夫婦の場合の値ですね。この程度であれば他の同じ程度に高い比率を持った何かしらがいるはずなので、一人で立て直せます。


 というわけで準備も出来たことですし、一気にやりましょうか。


『最終奥義、離縁の術!!!!!!』


 これで終了です。そのまま奥様に報告ですね。


「これで無事に終わりましたよ」


「本当に縁が切れたんでしょうね?」


 前日までの旦那様を知っているので当然疑いの目を向けてきます。奥様にはこういった力や道具を一切見せていませんものね。


「それはもうばっちりです。今から離婚届を渡してしまえばあっさり受け入れてくれると思いますよ」


「これであんな男から別れられる。本当に助かったわ」


 謝礼金の入った封筒と共にお礼を頂きました。


「お疲れ様でした。それでは良い男を捕まえられるといいですね」


「もちろんよ」


「縁切り代行と私は名乗っていますが今回行ったのは夫の妻に対する好意を初期値に戻しただけです。つまり、あなたへの記憶が消えているわけではないです。また、周囲も同様であるため周りの人たちから復縁の手伝いをされるかもしれませんのでそこらへんはご注意を」


「そんなことは承知してるわよ。高校からの仲なんだから二度と会わないレベルまで持っていく場合友達の記憶を消して夫を遠く彼方へ飛ばす以外方法がないでしょ。流石にそれは人間としてやりたくないわ」


「その通りです。ちなみにそれを決行することとなった場合、記憶消去という縁切りとは別の料金が発生します。そのため金額が途方の無いものになってしまいますので離婚程度で使用はお勧めいたしません」


 ちなみに一度だけこのサービスを使用された方がいましたが、その際は軽く数千万を超えました。(どこかの社長だったようであっさり払っていただきました。)


「最後に。縁切りの力は闇の力による干渉です。行ったことは一種の洗脳のようなもののため、あなたに対して強く心を動かされてしまうような出来事があれば旦那様の感情は魔法をかける前に戻ってしまいます。念のため思い出の品は奥様が全て処分なさってください」


 その後奥様は去っていきました。


 少し気になったので後をばれないように追ってみたところ、その日に無事離婚が成立したようです。二人で離婚届を役所に届けに行っていました。


 喧嘩別れによる結婚ではなく、お互いの仲が冷え切ったことによる離婚ですしね。二人とも非常に理性的でした。


 会話が「突然だけど離婚しましょう」 「分かった」だけでしたからね。


 その後奥様は二人で住んでいた家から出て行きました。実家に戻ることは無く、前々から当てをつけていたアパートに転がり込んでいました。


 旦那様は一切準備もしていなかったので、次の家が決まるまではこの家に留まるのだとか。


 今回は少し旦那様にとって悲しい結果となってしまったのでしょうか。それともああいった妻と若いうちに縁を切れたため運が良かったのでしょうか。


 そしてその数日後、その旦那様の家にとある男性が現れました。小学校からの幼馴染のようです。旦那様は突如家に押し掛けてきた友人に驚いていました。何故ここに来たのかが分からなかったようです。しかし幼馴染の態度を見て大層嬉しそうでした。


 無理もありません。長い間絶縁状態になっていたのですから。それも幼馴染からの一方的な形で。


 旦那様はその理由に対しかなり負い目を感じていたので辛くはあったものの受け入れるほかなかったそうで。

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