夜明けの瞳
絵空こそら
第1話
空が上手に焼けている。
朝は、どんな一流の料理人よりも上手に空を焼く。コツを心得ているのだ。あの黄金色の、とろけるような光とか、頬を染めたような雲、薄く水色に伸びていくグラデーション、何もかもが完璧だ。
こんな朝は、ペダルをこいでいた足を止めて、うっとり空を眺めてしまう。目に映るだけで胸が高鳴るような、そんな朝もあるんだよって、今夜彼にも教えてあげよう。
わたしは澄んだ空気を大きく吸って、もう一度ペダルを踏みこんだ。目指すのは朔宵神社。わたしは出勤する前、必ずここに寄る。
石段の下に自転車を止めて、駆け上がる。鳥居の前で一礼して端を通り、社の前で、狛犬のように座っている男の子の石像に挨拶する。
「照くん、おはよう!」
もちろん返事はないけれど、彼が起きているときと同じように声をかける。何も見えていない彼の眼は、朝日を受けてきらきらと輝いている。
「行ってきます」
わたしはもう一度大きく息を吸うと、明け始めた朝に向かって踏み出した。
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