第4話 ヴィラン
ヒーローがヴィランに堕ちることは無いのだろうか。仮にフィクションなら有り得ないと言い張っても問題はないだろうが、現実はそう甘くはない。
元々ヒーローとヴィランは表裏一体。能力の有無なんて関係なく、希望に満ち溢れたヒーローであっても何かの拍子で簡単に悪の道に外れてしまう、なんて事は普通に起こり得る。
じゃあ何がヒーローの心を支えているのか。市民の声援などは言わずもがな、最も大きな存在は仲間だと思う。
今より前の世代の一人で戦い続けていた世代のヒーローは果たして報われたのだろうか。
◇
ある休日の事、メアとラミーナは仲良く街へ買い物に来ていた。最近のメアのスケジュールは週に三日はミカ達との小隊訓練があり、残りの四日はラミーナとの個人レッスンで埋まっている。メアとラミーナは元々波長が似ているのもあって、休日のプライベートでも一緒に行動する事が少なくなかった。
「ミー先輩もう半年分くらい買ったー?」
「そうねー、これで満足かな!後はメアちゃんのを買うだけ!」
「わ、わたしそんなにお金持ってないんだけど…」
メア達がいるのは街中でも大きくて評判のデパートで、ラミーナは向こう半年で必要になるであろう必需品や簡易食などの物資を買い揃えていた。
流石は大きなデパートなだけあって軍人向けのコアな商品だったりととにかく幅が広い。ラミーナはダンボール数箱位の大荷物をシュルツの自室に配送する手続きを済ませると、楽しそうな顔でメアを抱き寄せる。擬似姉妹にしては抱きつき癖が妙に似ている二人だ。
「いや、私が払うよ?というか私がメアちゃんに買ってあげたいんだもん」
「えー、そんな悪い…いくら先輩がめちゃくちゃ稼いでるって言っても」
単純戦闘力なら今のシュルツの第3イタリア支部のトップ3。シュルツ全体で見ても最上位クラスに位置するラミーナは相当お金を稼いでいるのは間違いない。そもそもシュルツの資金制度は隊員のクラス別基本給に活躍毎のボーナスが加算されていくシステムである為、ヒーローとしての名声を上げれば上げるほど金額もうなぎ登りに増えていく。
「もー、変に硬いこと言わなくていーの!お姉ちゃんが妹の為に色々プレゼントしたいのは当たり前じゃん!それにぃ、義理とはいえ姉妹なんだから〜、お揃いの物とか持ってみたいし〜」
「お揃いの…!確かにそれは欲しい!むー…、じゃあ今度何かお返し用意しとくね…?」
「いい子過ぎない!?」
ラミーナはぎゅーっとメアを抱きしめると腕を引っ張ってお洒落なお店を回るのだった。
それから早数時間。二人はすっかり暗くなった街をシュルツ目指して歩いていた。
「あー楽しかったぁ〜、今日付き合ってくれてありがとね?」
「ううん、わたしも先輩と居るの楽しいもん!それよりあんなに沢山貰ってよかったのー?」
ラミーナは結局メアに沢山の物を買ってあげていた。ラミーナは元々性格は明るいが、そこまでお洒落な物などを買ったりする方ではなかった。どちらかと言うと実用的な物をストックさせておかないと気が済まないタイプだ。しかし、実力はあれど若手故に今までシュベスターを組んでいた人は居らず、初めてメアという存在ができたのがそれはもう嬉しかったのか最近のラミーナは良くお洒落をするようになった。
彼女の交友範囲で1番そういうお洒落な事に精通しているであろうルエのシュベスターであるサラーサにわざわざ教えを乞う程だった。
「私さ〜メアちゃんがオファー受けてくれてほんとに嬉しかったんだー」
「へ?どうしたの急に」
「私結構明るく振舞ってるけどあんまり仲良い子居ないんだよ」
「え!?でも結構色んなところで声掛けられるよね?」
「確かに知り合いは多いし皆からおちゃらけた子って思われてるけど、本当に素を出せる人ってエルマとサラーサ位しか居なかったんだよねー」
ラミーナは人一倍人の顔色を伺う性格であり、今の様に明るく振る舞う前はじっと大人の事を観察している大人しい子供だったのだ。
「そうだったんだ…。ミー先輩いつも優しいから気づかなかったや」
「私もあんまりそういう姿は見せないようにしてたからね〜。でもね、メアちゃんが私のシュベスターに、妹になってくれたおかげで心の底から楽しいって思えるようになったんだよ?」
「……ミー、先輩?」
ラミーナはふと立ち止まるとメアもつられて立ち止まる。夜の静かな川の音と涼しげな風が二人を包み、オレンジ色の該当が淡く照らす。
ラミーナは春の野原のようにポカポカと温かいメアの体を愛おしそうに抱き寄せると、その優しさに浸るように目を瞑る。
「メアちゃんは凄いね。太陽みたいだよ。どんなに冷えた心でも優しく温めて溶かしちゃうんだもん」
「ううん、そんな事ないよ。わたしなんて皆に助けて貰ってばっかりだもん。わたしは一人じゃまだ誰も助けられないよ…」
「そんな事ないよ…。確かにまだ未熟かもしれないけど立派な私のヒーローだよ」
「あははっ、わたしこれからもっと頑張ってミー先輩と並べるような立派なヒーローになるよ!」
「それじゃあ私も追いつかれないようにもっと先に行かなくちゃね!」
ラミーナは懐から何かキラキラしたものを取り出すと優しくメアの首にそれを掛ける。
「ミー先輩?これって…!!」
メアは今しがたラミーナに掛けてもらった物を見て目を丸くする。
「これってネックレス?それもこんなにおっきな宝石付いてる…!」
ラミーナが渡したのは太陽の形を模したネックレスで、中央にはオレンジ色に輝くオレンジサファイアが装飾されていた。
「良かったら貰って欲しいな」
「も、貰えない!だってこれすっごい高いじゃん!」
「もう…、良いから貰って?せっかくペアのを買ったんだから」
そう言って首元から銀色の月の形をしたネックレスを覗かせる。そちらにはメアのとは対照的に水色に輝く宝石があしらわれている。
「これを身につけてる限り私は絶対に負けないから…。メアちゃんに何かあったら絶対駆けつけるからね」
「ミー先輩ってば……。」
メアは涙が溢れて止まらない目を押さえながらネックレスをギュッと抱きしめる。
『……メア。あなたはお母さんの太陽よ。これからすっごい辛いことがあるかもしれない。でも、メアはその笑顔で人を温めることの出来る子だからね…?メア、優しく育ってくれてありがとう』
「お、お母さん…?」
「メアちゃん?」
唐突に頭の中を反芻した昔の母との記憶。
メアは泣きながら笑ってみせる。
「ううん、ありがとう。わたしもミー先輩がお姉ちゃんでよかった!」
メアは太陽の様な優しい笑顔でそう伝えるのだった。
◇
幸せそうな二人、そうして一日が終わりに向かおうとしていた時だった。
デパートのあった方角から突如大爆発が起こり、目を覆いたくなるほどの閃光が闇が支配する街を一気に明るく照らしだしたのだ。
瞬時にスイッチを切り替えた二人は遅れてくる爆風から身を守るように物陰に身を隠す。
「え!?何事!?」
「ほんと、なんで今日なのかなぁ。せっかくメアちゃんといい雰囲気だったのにぃ。許せないんだけど!」
ラミーナは愚痴を垂れつつ状況を確認しようと液晶端末を取り出すと丁度アベルから通信が入っていた。
「もしもし?アベル?」
『無事か!?メアに通話繋がらなかったんだが近くに居るのか!?』
「うん、大丈夫、今隣にいる。メアちゃんは…ただ電源落としてただけみたい」
『そうか…。それで二人は今現場からどれくらいの位置にいる?』
「ほとんど真裏って感じかな。大通り逸れて脇道に入ったって所。爆風も凄かったんだけどヴィランの仕業なの?」
『今しがた声明があったから、十中八九ウロボロスが関わってるって話だ。とりあえずシュルツのマキア隊員には現場に急行するよう指令が出た。俺も今から急いで向かうから二人は救出作業に当たっていてくれ』
「りょうかい!もしかしたら戦闘になるかもだから急いで来てね」
『分かった。二人とも無事でいろよ』
アベルからの通信は切れ、二人は目を見合わせる。
因みにアベルが言っていた「マキア隊員」
とはラミーナも位置する最上位ランクの総称で、中位に位置する「メノア」、メアも所属する下位ランク「アテナ」に分かれている。そのマキア隊員だけに出動命令と言うからには今回の事件はそれだけの危険度だと言えるだろう。
「さてとっ休日だけどお仕事しちゃおっか!」
「さっさと帰って今日はミー先輩と映画見る約束だもんね!気合い入れる!」
ラミーナは下げていたカバンに上着を仕舞うと下に着込んでいたスーツを起動させる。
グランギルド社長の力作で起動すると青いラインが浮かび上がり、パワーアシストなどの各種機能が開放される。黒地に青いエーテルラインがアンドロイドのそれを彷彿とさせるデザインで、マッハガールと言えばこれ!と最近では認知されている。
「やっぱオリジナルスーツ!って感じでかっこいいなぁ」
メアは若干羨ましそうにラミーナのスーツを眺めながら、自分もナノシューター等を装着していく。
「スーツ作るのにもお金は掛かっちゃうからねー、メアちゃんも早くランク上げてお給金増やそうね!」
「うー、気が重いー。それにサラ、アーマーつくるのあまり乗り気じゃなかったからなぁ」
メアは二人の荷物を見つかりにくい場所にナノワイヤーで固定すると、ほっぺたをパチンと叩いて気合を入れる。
「よしっ、行くよ!!」
「はい!」
◇
爆発が起こった大通りは元のしっとりとした大人びた雰囲気から一変。逃げ惑う人々の悲鳴と連鎖的に起こる小規模の爆発等が混ざりあって惨劇を巻き起こしていた。
警察や消防も続々と到着しつつあり、市民の避難を誘導していた。
「こんにちは!シュルツ第三イタリア支部のマッハガールです。現状を教えて貰えますか?」
ラミーナは現場で指揮を取っている警官に近づき、名乗りながら情報を求める。
「あぁ!マッハガール!ありがとう!助かります!」
「今は私と私の妹分の二人しか居ませんが、もうすぐにシュルツからも人員が集まりますので」
「ありがとうございます!えっと、爆心地は目の前に見える高層ビルでして、閉館間際という事もあり客は居なかったようですが、まだ中に従業員が残っている可能性があります」
「分かりました。中の探索は迅速に行いますので、周辺の封鎖と避難の誘導をお願いします」
「了解しました!」
二人は警官に頭を下げると爆心地の高層ビルの真下まで来ていた。
「酷い…主犯格はどこにいるのかな…」
「分からない…。とりあえず私はビルの上から中に逃げ遅れた人がいないか探しに行くから、メアちゃんはいつものナノワイヤーで弱くなった構造部の補強と中の調査をお願いね!」
「分かった!」
「いい?敵が仕掛けてきたらすぐに連絡入れる事。極力1人では戦わないでね」
「デバイスの電源も入ってる!大丈夫!」
「じゃあ行くよっ!」
ラミーナは足で能力を発動させジャンプするとビルの5階部分まで飛び上がって中に突入して行った。
残されたメアは崩壊寸前のビルから逃げてくる人の避難を誘導すると同時に亀裂が入ったコンクリートにナノワイヤーを使って補強を施していく。巻取りながらアンカーとしても使え、射出しきるとワイヤーとしても使える。改めて考えても物凄い発明である。
「大丈夫ですかー?逃げ遅れた人居ないですかー?」
ビルの1階の奥まで進んでいくとショーケースが粉々に砕かれ、中の貴金属が盗まれたりしているのを発見した。
(これって…強盗?その為にわざわざこんな大きい騒ぎを起こしたの?)
ただの強盗にしては起こした災害の規模が大きいし、より身に危険が及びそうなものだが強盗の思考なんて理解しようも無いのも確かだ。メアは考えるのを止め、神経を最大限尖らせる。
(まだ強くは感じられないけど…何かおかしい気がする…。普通の強盗じゃない…?)
ヒュッ……!
(なに!?)
メアは咄嗟に腰に差しているナイフを抜くと対象が何かも確認する前に振り抜いた。
カキンという甲高い音が鳴り、メアは自分がナイフで弾いた存在を直視して目を思わず丸くする。
(え…宝石?)
拾い上げてみるとそれは見事に真っ赤なルビーで、大きさからして数十万はくだらないだろう。でもメアは宝石が飛んできたという驚きより、その宝石が普通でない事の方が気になっていた。
と言ってもメアには勘でその宝石が『おかしい』と言う事しか分から無いので、尚のこと警戒しているようだ。
先の奇襲?からしてどこから攻撃が飛んできてもおかしくない。メアは液晶デバイスにゆっくりと手を伸ばすとポケットの中でラミーナの電話に繋がるようにセットしていたボタンを押す。ワンコールで通話を切ると目をつぶって、いよいよ本気で集中する。
『あれを防ぐなんてキミは何者だい?』
辺りを反響して声が響いて聞こえてくる。
「あなたこそ何者?人に聞くならまず自分から名乗るのが普通じゃない?」
メアも神経を尖らせながら言葉を返してみる。
『ふっ、お生憎さま名は捨てた身でね…。ドッペルとでも言っておこうか』
不気味な笑い声がフロア中に反響して居場所を特定することが出来ない。
メアは頬を伝ってくる嫌な汗を拭う。
「この爆発騒ぎはあなたの仕業なの?なんの為に?」
『わからないのかい?悪党が狙うのは金さ。使い切れないほどの資金。それは武力に繋がる。まぁ、私は興味ありませんが』
「じゃ、じゃあなんで…」
不気味な男の声はまた噛み殺したような笑い声をあげると、憎悪が籠った声で話す。
『ヒーローを潰すためさ』
ハッと何かに弾かれたようにメアは考えるより先に左手に握っていた宝石を放り投げる。
瞬間、鈍い輝きを増していくと爆弾のように轟音を立てて弾け飛んだ。
「うわっ!?」
確実にメアを仕留めたと思ったのか、男はブツブツと何やら呟いている。
『それも避けるか……。くくっ、なんなんだお前は…、興味を惹かれるなぁ』
「宝石が爆発したのは貴方の力なの?」
『教えるわけがないだろう?自分から手の内を晒すのは三流のやることだ』
「ならっ、とりあえず姿を見せてもらう!」
メアは片っ端から隠れられそうな所を攻撃していく。傍から見れば無謀そのもので隙も大きい。
普通なら敵に攻撃してくださいと言ってる様なものなので、危険な行為だがメアにとっては敵を釣る最適な手段だった。
「うりゃりゃりゃりゃー!」
『なんだコイツ!?』
いきなりの怒涛の無差別攻撃に動揺したのかドッペルは姿を見せたと同時に攻撃を仕掛けてきた。
「かかった!」
『!?』
姿を見せたのは長身の痩せた男だった。
男は少しメアの強気な顔を見て歯を噛み締める。ドッペルの手に握られた紫色の宝石がキラキラと輝いている。どういう能力なのかは分からないが、圧倒的パワーを秘めていることは火を見るより明らかだった。
『くたばれクソガキッ!ジュエルバレット!』
「!!」
メアはその宝石のパワーを避けきれないと判断すると、拳を強く握って男の宝石パンチを相殺させようとする。
メアとドッペルの拳がぶつかり、衝撃が風となって周りの瓦礫を吹き飛ばした。
「ぐぅううう!」
『生身で俺の宝石術を相殺出来るわけないだろ!!』
メアのパンチは生身。特殊能力を携えたドッペルとでは力に差がありすぎる。ダメージを相殺しきれずにメアの左手の服と血管が限界を超えて弾け飛ぶ。
『どうして避けない!お前は感知しているのだろう!?』
ドッペルとしてもこの攻撃は避けられると予想していたらしく、メアが拳を突き合わせてくるとは思ってもいなかった。
「だって…!わたしが避けたらっ、ビルが倒壊しちゃうから!」
『!?…くくくっ、ならビルごと吹き飛ばしてやる!』
男は宝石を握る手に更に力を込めると、宝石は一層紫色の輝きが増してメアの体を吹き飛ばした。
「くはぁ!」
左腕から血を流しながら背後の柱に打ち付けられそうになる。一瞬意識を失っていたが、考えるより先にナノアンカーを射出、間一髪の所で運動エネルギーを打ち消したのだった。
「ハァハァ、痛っ」
メアは血が滴る左腕を押さえながら息を整えようとする。
「……ふぅ、強いね、おじさん」
『……俺は自分の直感は極力信じるようにしている』
「?」
唐突に語り始めたドッペルにメアは眉を顰める。
『戦場じゃ上司の指令は役に立たない。結局は自分の判断が生死を分ける』
「だ、だからどうしたの?」
『俺は今強く思う』
ドッペルは明らかに目の色を変え、さっきまでとは違う色の宝石を多数握りしめている。
『お前は……ここで殺さなきゃならない』
「……え!?」
◇
それからのドッペルの攻撃は比にならない位のスピードとパワーを有していた。
『お前はいずれ強くなってしまう!ならその因子は早いうちに摘み取っておくしかない!!!』
「し…んで!たまるか!」
ドッペルの叫びと共に明らかに何らかの推進力を得た無数の宝石が部屋内を縦横無尽に跳ね回る。それだけならまだしも、宝石術は宝石を媒介に様々な現象を引き起こす奇怪な技。一つ一つが別の効果を持っているため、刃物のように鋭い物もあれば高熱を放っている物もある。そんな物がひっきりなしに襲ってくるのだ。
メアは未知の宝石術に翻弄され、危険を察知することで致命傷は避けているが、着実にダメージは負っていた。
『お前は逸材だ!俺の攻撃をここまで耐えた奴は10年振りだ!どうだ、ウロボロスに鞍替えする気は無いか?そうすれば見逃してやる』
いくら攻撃しても一向に倒れないメアにドッペルは半ば感動していた。
「誰がっ、行くもんかっ!」
メアは宝石の弾丸を避け、ナイフで弾く。そして一瞬の隙を付いて反重力ブーツの推進力でドッペルに肉薄する。
「ここだぁ!!」
『お前はまだ経験が浅い。だから俺がみせた隙に誘い込まれる』
「その攻撃は分かってる!!」
『!!』
ドッペルは待ち構えていたように緑色の宝石で目の前に斬撃の衝撃波を飛ばすが、メアはその攻撃を体を軽く捻るだけで避けてみせる。
(よしよし!見える未来に体が追いつける!)
メアの反射神経は成長の余地が大きい。日々のラミーナとの特訓だけでなく、今この時も成長し続けているのだ。
『だからなんだ!お前は所詮多方向からの攻撃に弱い!それを理解してもなお向かってくるか!?』
「わたしがやるべきことはこれだから!」
メアはドッペルのランブル・ジュエリーの攻撃を交わしながら距離を詰めていく。
『もういい、殺してやる』
「チェック!!」
ドッペルが拳を引き絞り、宝石術を発動させようとした時、その違和感に気がついた。
『なんだこのワイヤー!?』
メアのナノワイヤーがドッペルの体に巻き付いていて、拳を上げようにも動かない。
『くっ、さっき無意味に距離を詰めてきてたわけじゃなかったか』
「それだけじゃないよ!出番だよ先輩!!」
『あ!?』
その直後、天井がミシミシと音を立てて崩壊する。
「はああああ!メテオスマーッシュ!!」
『何――――!!??』
突如崩れ去った天井はラミーナが殴り割ったからだったようだ。
圧倒的速度とパワーによる一撃で周りの物が風圧で吹き飛ばされそうになる。
『…………くっ、舐めやがって!何故当てなかった!』
ドッペルは鼻先におろされたバチバチとエネルギーが迸るラミーナの腕を見て怒りを露わにする。
それを聞いてラミーナはすっとメアを庇うように立ちあがる。
「あなたの話を聞かなくちゃだから。それより…。よくも大切な妹を傷つけてくれたね!!」
ヒーローに憧れた少女達は呪われていた あるみす @Arumis
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