第14話 人間社会不適合者

ただいま! 

そんな挨拶、しなくなったのはいつだったか?


「むねよし!」バシ!


僕が家に帰るなり、母が僕の顔を殴った


「ねぇ!ドアの鍵閉めないで、学校行ったでしょ!」


どうやら、僕は、ドアの鍵を開けっぱなしで出て行ってしまったらしい


「ふざけんなよ!泥棒入ったらどうするんだよ!」


こんな家に金目のもんなんか、あるわけねぇだろ!


借金してんだろ!


本当はそう言いたかった


僕は、実の母にすら、まともに会話ができなくなっていた


「無視すんな!」ピシ!


また、殴られた


もうずっとこんな感じだ


毎日毎日、毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日


ずっとこんなんだ!


なんだこれは?

僕はなんなんだ、

僕の人生はなんなんだ!


また、涙が溢れる


なんか、最近、毎日泣いてるな


《死にたい》


生きたくない


明日が、来てほしくない


「うぅ…」


でも、現実は残酷だ!等速で時間が流れる


寝て覚めたら、また、次の日だ


今日も、僕の宿題が白紙だ!


明日が来る、


廊下で怒られる


家に帰り、母のストレス発散器具になる


明日が来る、


みんなが見ている中、黒板の前で怒られる


家に帰り、母のストレスサンドバッグになる


明日が来る、


学年の前で怒られる


家に帰り、母の罵詈雑言が飛んでくる


明日が来る、


全生徒の前で怒られる


家に帰り、母が泣いている……


「泣きたいのは、こっちだよ!

いや、もうすでに、泣いてた」


明日が来る、


学校に……行ってない


これが、《引きこもりの始まりである》


家でひたすらぼーっとしている


すごく楽だ!楽しい!幸せだ!


「人と合わないということは、こんなにも清々しく感じるものなのか!」


ゲームだってやりたい放題だ!

勉強だってしなくていい!

努力なんかしなくていい!


自由な時間は限られていた…


母が帰れば、また殴られるだろう


でも、それでも学校へ行く苦痛は終わった!


僕は勝てた!勝てたんだ!


人生で初めて、誰かに勝てた!


《誰にだ?》


急に虚しくなる、昔のことを思い出す


「相撲……あの時、

早くに負けを認めたな~」


《小鳥遊琴人》は、元気にしてるだろうか?


きっと、僕とは違くて、

信頼できる友達もいて

勉強もできて

運動もできて

特技があって

学校生活が楽しくて

努力が報われて

家庭環境も充実しているんだろな…………





「クソ!!!!!!」


僕は頭を壁に打ちつけた!


何度も、何度も、何度も、何度も、


涙がいつもより溢れてくる


「うぅ…うぅ…うぅ…」



《死のう!》


そう決意すると僕は、家の階段を降りた


階段の手すりのところに足を乗せた……


「ここから、頭を下にして落ちたら、

きっと《死ねる》」


迷いはなかった


僕は頭を下にして、落ちた……


落ちている時の時間はやたら長く感じた10mくらいの距離だったはずなのに


悲しい思い出ばかりだ、


いや、楽しい思い出もあったな


《もう、忘れちゃったけど》


ドスン!!!!


僕は……………………気を失った



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