第8話 母との数少ない思い出

ある日の朝、お母さんが嬉しそうにしてる。


片手に持っているのは電話だ。


誰に話しているのだろう?


◆◆◆


「え!そうなの!なんだ~それだったら早く言ってよ!」


お母さんが楽しそうに話している、


「お母さん、どうしたの?」


私は尋ねた


「お父さんがね、仕事が一段落したから、帰って来るんだって!」


「お父さん?」


私はお父さんと会ったことがない。

その響きに、懐かしさを感じない。


お母さんと私は、服を買いに行くことになり、外出することになった。


「お母さん?」


「なぁに?」


「この長いのはなに?」


「これは電車よ」


「でんしゃ?」


「乗っているだけでどこにでも行ける、便利な乗り物よ」


「そうなんだ~」


こんな鉄のかたまりが、すごい速さで動くなんて、私には想像できなかった。


「うわー!はやいー!


目的地の駅に降りて、ほんの5分歩く。


「たてものがたくさんならんでいる!」

「いろんなお店がある!」

「人もたくさんいる!」


見るもの全てが初めてだった。


「お外のせかいってこんなにひろいんだね!」


「そうよ!ここだけじゃないわ、世界はもっと、もっと広いのよ!」


お母さんが答えた


「え~もっと?すごい!」


もう少し大きくなったら、いろんなところに行きたいな!

あの電車に乗って、世界旅行ができたらいいな~

心に希望を膨らませ、洋服屋さんに行く


「お~!」


お店の中には、すごい数の服が並んでいる。

なんだろう?見ているだけで胸のあたりが、熱くなってくる!


「すごい!かわいい!これも、これも!あ!、こっちの服かっこいい!」


《たのしい》


純粋にそう思った。

お母さんも楽しそうに服を選んでいる


「琴人ー」


「こっちの服、どう思う?」


「かわいい!」


「そう!ありがとう!」


何時間もかけて服を選んだ。もう足がクタクタだ。


帰りはフルーツタルトが美味しそうな、レストランに入った。


「ん~~。フルーツタルトおいしい!」


いちご、メロン、マンゴー、キウイ、

いろんなフルーツがパイ生地の上にのり

ほんのり甘いカスタードがフルーツをさらに美味しくしている。


「美味しい?」


お母さんが聞いてきた。


「おいしいよ!」


「そう、よかった」


笑顔で返してきた。


《幸せだ!》


「ねぇ、琴人」


お母さんがゆっくり話しかけてくる。


「なぁに?」


私が返事をすると


「学校、行きたい?」


【学校】その響きは聞いたことがある。

たくさんの人がそこに行き、いろんな勉強を学ぶ場所だって聞いたことがある。


そのお母さんからの質問に



《うん、行きたい!》



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