宗善の第一章 物心が着いた瞬間、人間の人生はある程度決まる

第1話 臆病者の、はじまり

ふと気付いた。「あれ?声が出る。言葉が喋れる!何か聞こえる言葉が理解できる!、自分の体が動かせる!一体、自分は誰なんだ?」


「僕の名前は、真田 宗善(さなだ むねよし」

今、車に乗って保育園に行く。運転しているのはおばあちゃんだ。家から大して離れているわけじゃないのに、なぜか、毎日毎日車で送って行ってくれる。

お母さんとお父さんは仕事だ。朝早くから居ないからおばあちゃんが送ってくれるらしい。

保育園に着いた見慣れた先生がおばあちゃんと笑顔で話している。


「そういえば、この先生って誰だっけ?」


見慣れている顔なのに名前がわかんない。まぁ、いっか。

建物の中に入る、なんだかよくわかんないんだけど、沢山人がいる、顔もお互いに知っている。


「でも、名前がわかんねぇんだよな~www」


保育園にはいろんな遊びがある。例えばパズルに絵本につみきにお手玉、腹面とか。皆集まって折り紙折ったり、追いかけっこしたり、竹馬乗ったり、土玉作ったり、なんかよく分かんないけど、何も考えないで遊びまくった。

何事も挑戦的で計画性がなくて、間違えっぱなしで、先生に何回も怒られたよね。凄く楽しい時間だったよ。

苦い思い出もあるよね。出し物をするって事で、皆のお父さんお母さんをおばけ屋敷で驚かそう!ってなったんだけど、同じ役の人が2人なんだよね。2人でやるのかな~って思っていたら


「それじゃあ、2人の中で上手いと思った方を本番でやってもらいます!」


って言ったんだ。


「え~~」「ヤダ~~」「みんなでやりたい!」


皆がそれぞれの反応を示している中で自分は燃えていた。


「絶対に自分が勝つ!」そう強く決心した。

「よ~し、そろそろだ!もう少し、次が僕の番だ、近づいてくる!」


お客さん役をやっている先生が近づいて来る。一歩一歩確実に僕の所にやって来る。


「もっと引き寄せろ、ギリギリまで、まだだ!」

「ねぇ!」

「うわ!」


先生が顔を出してきた


「なんで、出てこなかったの?」  「え?」

「私、通り過ぎちゃったわよ、」


あまりの緊張に身体中が力んでしまったようだ。どうやら僕という存在は緊張しやすく、大事なところで失敗してしまうらしい。おかげで僕は代表から外れた。

お化け屋敷は、いろんなお父さんお母さんとくじで決めて歩く事になった。そして練習で何回も通ったルートを歩いた。なんだか、とても情け無い気持ちになった。

戦ってもいない。ただ1人思い上がり勝手に負けたのだ。


「自分はもっとできるはずだ!、そもそもおれの方があいつより上手かったはずだ!」


やり場のない怒りは自分の自信をかすかだが、取って行ってしまった。


「一体あの感覚はなんだったんだろう」


ふと感じた疑問だった。


「全身が震えたあの感覚は、なんだったんだろう?絶対に勝つって思ったのに、いざ本番になって逃げたい気持ちになったのはなんだったんだろう?二度と取り返しがつかない失敗だったんじゃないか?僕の代わりなんていくらでもいるって事じゃないか!自分は要らないんじゃないか?」


心臓の辺りが苦しくなった。明日に希望が見えなくなった。

でも、


「今日はハンバーグよ!」

「やったー‼︎‼︎ヒャッホー‼︎‼︎」


僕は単純なのかもしれない。

大好きなハンバーグひとつで、こんなに元気になれるんだから!


「今日はおばけ屋敷やったんでしょ?お母さんとお父さんは仕事で行けなかったけど、どうだったの?」


母がさりげなくそう口にした。でも僕は、


「うん!たくさんおどろかせたよ、すごくこわがってたー」

「そうだったの~頑張ったわね~」


嘘をついた。


「(まぁでも、来てないんだし、嘘ついても平気だよね。)」


僕は、自分が負けたことを無かった事にした。いや違う、負けたことを、認めたくなかった、


「自分は絶対に必要な人間だ!要らないはずが無い、自分には才能がある、何があるのか分かんないけど、特別ななにかを持っている、保証がないけど。結果が出てないだけだ!。そもそも自分はおばけなんて信じていない!自分の才能は別にあるんだ!あいつらとは違う!」




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芸能人とかスポーツ選手とかアーティストとかって良いですよね。産まれ持った才能、産まれ持った家庭環境、産まれ持ったスタイル。どれかひとつ、無くしていたら、成り立たなかったはずだと思いたい。たまに、武井壮のように、貧しい暮らしをしていてもそこから、這い上がれる人がいる。すごく尊敬しています。僕もそういゆ人になりたかったです。ひょっとしたら、無意識の内になろうとしているのかもしれませんね。

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