壊し愛

RIM

一章 🏥

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包丁を握り締めていたその手は力を無くし、刃は重力に従って床に突き立てられる。


木の床に浅く刺さる音の後、ゴトッと持ち手の転がる音、カランカランと刃の弾む音が耳に届く。




その手首には冷えきった指先が、決して弱くない力でしっかりと私を掴み、離されない。


ベッドの上に一瞬で組み敷かれたのだと遅れた思考がようやく脳へ届き、目の前の男を睨む。






「残念でした」






感じる力とは裏腹に、ふわりとした笑みを浮かべる男──私の対象物。




すぐに左腕で男を退かそうとするも、その腕も既に男の腕により動けない状態になっていた。


体をよじっても、足で蹴りあげようとするも、頭突きすらしようとするも、どれも男の体にダメージを与えることなんて叶わず。






──だんだん疲れて力が入らなくなってくる頃を見計らい、横からすくい上げるように、その唇が鎖骨の上に落ちる。









今回も、殺し損ねた──。

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