暴虐の『死の蛇』
――眼前の敵には、勝てない。
そう即座に判断し転進しようとする私達。
だけど、動き出そうとしたその瞬間。
「良い判断だ、だけど……逃がさない、やれ、クロウ」
男の指示に、いつの間にかおよそ五メートル、見上げるほどの大きさに膨れ上がっていた大蛇が大口を開け、その口腔内に闇が生まれた。
みるみるサイズを拡大したそれは、傍目から見ても分かるほど濃厚な呪詛の気配を周囲一面に漂わせ、大蛇周囲の草花を枯らしていく。
「二人とも! 私の後ろに!!」
そう叫ぶ兄様の声に私とレイジさんが盾の影へと飛び込んだ直後、大きく口を開けた影の大蛇の口から、昏い闇が放たれる。
――まるで呪詛を限りなく凝縮したような、
「させるか……! 『フォース・シールド』……っ!」
兄様が地面に突き立てた盾から不可視の障壁が展開され、闇と激突した。
それでも衝撃を押し殺すことが出来ず、突き立てた盾にもたれかかり支える様にして保持する、が……
「ぐぅ……っ!」
「きゃぁ!?」
「うわ……っ!?」
三者三様の悲鳴が響いた。
眼前が、衝撃で拡散した闇で包まれる。
轟音と、激しい振動。
「……なに、これ……苦しい……っ!」
「瘴気が、濃すぎるんだ……っ!」
拡散した瘴気が散り、周囲へと充満する。
肺に入り込んだそれが激しく体内から攻め立て、胸に激痛が走る。
そんな中……
――ピシッ
そんな音が、この衝撃がぶつかる轟音の中で、不意に大きく鳴り響いた。
「馬鹿な……破られる!?」
幾度も私達の危機を救ってくれた、絶対の筈だった障壁。私達の眼前で、その障壁に、ピシ、と亀裂が入った。
使用者である兄様の魔力が続く限り、どのような攻撃をもはじき返すと信じていたその障壁が、割れ始めていた。
「……くっ!」
咄嗟に兄様が、懐から一枚の札を出す。
『月光の魔符』……魔法などの威力を軽減する守護魔法が込められた使い捨ての呪符を手と口で破り捨てると、構えていた盾がぽぅっと淡い光に包まれる。だがその光は、目の前で荒れ狂う闇に対してあまりにも儚かった。
ミスリルが混ぜ込まれたインクで印字されたそれは最高級品であり、一枚で一般家庭のひと月の給与が吹っ飛ぶほどの値段がするはずのその呪符だが……それでも僅かに侵攻を押し留める程度の効果しかなく……
『フォース・シールド』が砕けると同時に、黒い蛇が吐き出し終えたブレス。
ついに砕けた障壁を飲み込んで爆風が巻き起こり、私達三人はひとたまりもなく飲み込まれた。
酷く長く感じる時間の中、全身を刺していた瘴気の爆風が、晴れる
身体が重い。
ミリィさんのくれた様々な耐性を持つ装備に加え、元々の呪詛耐性自体が高いはずの私でさえ、まとわりつく闇を押し留めきることが出来ずに酷い脱力感を感じていた。
ならば……同じ状況下に居た他の二人は……?
「……兄様、レイジさん……っ!」
がばっと跳ね起き、他の二人の安否を確認しようとして、息を飲む。
――景色が、一変していた。
ついほんの先程まで高原植物が生い茂り、多様な花々が咲き乱れる風光明媚な景観を見せていた高原は……その一部、私達の周囲一帯が荒れ地と化し、瘴気があちこちに残留する禍々しいものへと変化していた。
その中で、ある一か所――大地に突き刺さった砕けた盾の背後、まるで爆風を免れたかのように残った緑の大地。その先端で……いつも私を守ってくれていた兄様が、倒れ伏していた。
「……兄様!」
慌てて駆け寄り、必死に治癒魔法を施す。
「……駄目だ……早く、逃げ……」
「黙って、綾芽、今治すから……!」
朦朧としながらも絞り出されたその言葉を、無視して治癒魔法を唱える。
……効きが悪い。
全身に纏わりついた瘴気が、治癒魔法の光を妨害していた。
それでも、必死に何度も『ヒール』を重ね掛けしているうちに、徐々にだけれど怪我が薄れて来る。
「さて、結構頑張ったけれど、これで一人。それじゃ、力尽きた者にはご退場願おうかな?」
「くっ……!?」
聴こえてきた男の言葉に、咄嗟に倒れた兄様を庇い、回復魔法を維持しながら腕の中に抱え込む。
薄紙程度の抵抗にもならないだろうけど、それでも服のエンチャントがあるから一回くらいは……そう覚悟を決め、来るであろう衝撃に備える。
そんな私の眼前で男の手から黒い炎のようなものが放たれ……その間に割り込んできた人影、レイジさんの放った何かによって分かたれて背後へと抜けていった。
「させるかよ……!!」
先程の余波によってあちこち血を流しているレイジさんが、それでも私達の前に立ち塞がる。
その周囲には、以前にも見た不可視の力場の剣が、その周囲を回転しながらレイジさんの指し示す先、男へと向けて大気を貫き震わす轟音を上げながら順に射出されていた。
一本一本が、放つレイジさんの足が僅かずつ後退するほどの勢いで射出されている十二本の力場の剣。しかし……
「嘘だろ……素手で……っ!?」
何らかの魔法らしき闇を纏った腕で、まるでハエでも払うかのように面倒くさそうに剣を払いのける男。
だけど一二本目、最後の一本の『剣軍』が射出されると同時、その剣にすらも追いつくような速度でレイジさんが飛び出した。
抜き打ち気味に鞘から抜かれ放たれた、レイジさんの手にした『アルヴェンティア』が、鞘の中で光となって可視化するほどに込められた闘気によって眩く輝く。
その一瞬……男が何かに驚いたかのように目を見開かせ――レイジさんの剣を撃ち払おうと振りかぶった腕が止まり、隙が生まれた。
「喰らいやがれ、『リミティションエッジ』……!!」
会心のタイミングで放たれたレイジさんの剣。
男が一瞬、呆然とした表情を見せて固まっている中……跳び上がって体重と重力加速まで載せられ、全身全霊をさらに超えた力で振り下ろされた剣が、その頭へと叩きつけられる。
まるで鋼鉄の壁を叩いたかのような音と共に、その剣が直撃……したかのように見えた。
「……へぇ……今のはちょっと痛かったな」
「……なん……だと……っ!」
つぅ……っと額から垂れてきた自らの血を舐め取って……その程度にしか効いていないように見える男が、軽い調子で宣う。
「ああ、いくら何でもまともに食らったわけじゃないし。いや、ほら、全力で振り下ろされた刃物を生身で受けて無事とか、生物としてどうかと思うし、そんな訳ないだろ?」
そう何でもないことのように軽い調子で言う男の周囲にはうっすらと、黒い六角形がいくつも張り合わさったかのような力場が浮かんでおり、それがレイジさんの刃を阻んだという事を理解する。
そして……レイジさんの渾身の一振りですら、
「でもさ……痛い物は痛いんだよ……なあっ!!」
「この……っ! 『閃――』……」
追撃を加えようと、振り被ったレイジさんの白い剣が、男に摘まれる。
それだけで、まるで空間に固定されたように刃が空中に制止する。
「な……んだと!?」
「刃物で人を殴打してはいけないって、習わなかったか、人間……っ!!」
男が、脚を振りかぶった。
足先に集まっていく闇に、レイジさんが咄嗟に剣から手を離し、闘気を拳に集中させ……
「――がぁあ!?」
しかし、男の足がレイジさんの身体に叩き込まれる方が僅かに速かった。
蹴り飛ばされたレイジさんの身体が、冗談のように宙を舞って私達の側へと落下する。
「……レイジさん!?」
「……がはっ!? げふ、がっ……は……っ!?」
「そんな……そんなっ!?」
ごほごほと咳き込むたびに大量の喀血をしている様は、明らかにあばら骨を何本もやっており……治癒するまで、到底立ち上がれそうにない。
そして……まるで炎が燃え移るかのように、その体に纏わりついていた影が、レイジさんを覆ってしまい、その体が力無く崩れ落ちた。
残るは、直接戦闘力の無い私だけ。
強力な範囲回復も、詠唱の時間が確保できない以上使うことができない。
「さて……頼みの騎士様たちは二人とも戦闘不能だけれど、どうしようか?」
薄ら笑いを浮かべるその男に、ビクッと体が震えた。
――強い。ここまでなんて……っ!
これが、前国王とヴァルター団長が多大な犠牲の元に撃退した、大陸全土を震撼させたという災厄。
思い上がっているつもりなんて無かったけれど、それでも、数体の強敵を相手に勝利を収め、知らないうちに舞い上がっていたらしい心が急速に冷えていく。
――勝てない。
すぅっと足元から全身へと這いあがってくるそれは、絶望感。
「さて……それで、君はどうするのかな?」
へらっと笑ってそう語り掛けて来る男の目には、酷薄で嗜虐的な色が浮かんでいる。
だけど……手段は、ある。
二人を癒し、助けを待つ時間を稼ぐ手段は……ある。
使えるのは数日に一回、しかも維持には私の消耗が激しいが……一縷の望みを賭け、使わざるを得ないと判断する。
必死に、今にもへたり込んでしまいそうな脚を叱咤してお腹に力を込め、叫んだ。
「……開け『聖域』!!」
私を中心に展開した『聖域』が、見る間に広がって傷ついた二人を、その纏わりついていた呪詛を吹き飛ばしながら取り込む。
幸い、男に蹴り飛ばされたレイジさんは私のすぐ側へ飛んできているため、展開範囲は最小限で済ませられる。
全力を込めていても、以前よりも格段に上昇している私の魔力はまだまだ余裕がある。
今の魔力が流れ出すペースであれば、一時間はなんとか持たせられるはずだ。
このまま、二人が快癒し目覚めるか、救援が来るまで……
そう、必死に自分へと言い聞かせながら『聖域』を維持していると、睨みつけていた視線の先で、男が――嗤った。
「……っ!?」
その表情に、ぞわりと悪寒が背中に奔った。
――この状況に……誘導された……!?
そうだ、先程絶対の守護だと思っていた兄様の『フォース・フィールド』が破られたばかりではないか。
自分の失策に気が付いたと同時に、男の手が、『聖域』に触れる。
「……あ? ……え?」
ぞろりと、何か不快なものが体に触れたかのような違和感に、呆然と声が漏れた。
だけど、そっと視線を下ろしてみても、確かに何にも触れられてなどいない。
それは……まるで、撫でまわされているかのような感触。
そう……眼前で、男が私の『聖域』へと触れているように。
「…………あ、あぁ……っ!?」
次の瞬間、全身に何か異物が、悍ましい液体のような物が染み込んで来るような錯覚に、思わず悲鳴が漏れた。
――浸食。
そんな言葉が、苦痛に明滅する思考の中で脳裏に浮かぶ。
私の色に輝いているはずのその『聖域』の外縁部、男に触れられている場所が、黒と金のまだら模様を描いているのが視界の端に見えた。
「……ふん、ずいぶんと脆弱な『聖域』だ。指導者も居なければこのような物だろうけれど」
「いっ…………ぁぁぁああ、あ、あああっ!!?」
探るように表面を撫でまわしていたその指が……まるで粘土に指を突っ込んだかのように、ずぶ、と男の指が聖域に沈み込む。
その瞬間――まるで、身体の芯に異物が挿入され、かき回されたような感触が、全身を下腹部から脳天まで貫いた。
「く、くくっ、どうしたんだい? 必死に拒まないと、どんどん引き裂かれていくよ、なぁ?」
「ぅあ!? あぁぁああ!?」
まるで弄ぶかのように、ぐりぐりとかき回される聖域へと潜り込んだ指。
その度に、背中に、翼の付け根に激しい痛みが走り、びくっ、びくっと背中が仰け反る。
小さかった亀裂は、男が力を込めるたびに罅割れが広がり、びし、びし、と壊れていく聖域。
その度にみちみちと、身体が引き裂かれ、身体の中心へと穿たれてていくような感触が全身を襲い、膝が震えて折れた。
そんな時――
「…………て、めぇ……イリスに、手を……っ」
背後で倒れ伏しているはずのレイジさんの、譫言のような微かな呟きが、背後から聞こえた。
その声に、今、私の後ろには二人が居る、今回は私が護らなければいけない番なのだと思い出した。
――そうだ、私が……私が二人を守らないと……っ
「う、ああぁぁぁあああ――っ!!」
手が震え、過負荷に腕の血管が爆ぜ、薄い皮膚を突き破り紅い液体が舞った。
なけなしの気力を振り絞って、必死に『聖域』を維持する。
荒れ果てていたはずの大地に白い花が芽吹き始め、突き刺さっていた男の指が、輝度を増した障壁に少しずつ押し戻され始める。
「……へぇ」
ただ、関心したような男の声。
「頑張るじゃないか。そんなに、後ろの二人が大事?」
「あたり、まえ、です……っ! 絶対、負けない……っ!!」
ぼたぼたと額から汗を流しながら、キッと眼前の男を睨みつける。
虚勢だ。
勝てる気など、全くしない。
だけど……諦めるにはいかない。
そのために、ここで全部絞りつくすことが必要だったとしても……!
「全く……馬鹿な奴が末裔に、なったものだ!!」
男の手に、何か……いつの間にか仔蛇サイズとなっていた影の蛇が、まとわりついていた。それを目にした瞬間、迸る嫌な予感。
「くっ……『ガーデン・オブ・アイレ――』」
咄嗟に聖域を強化しようとその名を呼んで……その私の言葉が終わるか終わらないかという時。
「――ぇ……ぁ……?」
手の内から、掲げた杖の感触がズレた。
「あ……あぁ……っ!?」
手の内にあったはずの愛用の錫杖は、両手の間で半ばから断たれ二つに分かたれており――
その事を認識した瞬間、私の周囲の世界が――聖域が、無数の破砕音を奏でて罅割れた。
そしてさらにその次の瞬間――周囲を覆う真っ白に罅割れた『聖域』が、網の目のように……あるいは、私を捕まえるケージのように、黒い炎に包まれた。
「――――――ッッッ!?」
悲鳴は、声にならなかった。
魂が割り開かれ、引き裂かれるかのような。
私という存在を穿ち、その中を蹂躙するような。
まるで、乙女の薄膜を無惨に破り、好き放題中を蹂躙されているかのように。
まるで、希望や尊厳などを轢き潰しながら、大事な場所をぐちゃぐちゃに掻き回されるかのように。
もういっそ死にたい、死なせてと願いそうになるほどの喪失感、絶望感を孕んだ凄まじい悍ましさが、心と身体を蹂躙し――
そうして――『聖域』が、一片も残さず焼失した。
「はぁ……はぁ……っ、そん、な……っ」
『聖域』が、力任せに切り裂かれ、燃やされて消える。
そんな事が、できるなんて。
「……ぅ、がは……っ!?」
無理やり『聖域』が破られた余波で、全身の魔力の経路という経路が混乱して体の中を暴れまわり、視界が歪み、激しい嘔吐感が込み上げ、たまらず吐き出した。
体中を暴走する魔力が体内を傷つけていたらしく、胃液と血液が混ざった赤い液体がぼたぼたと地面を濡らす。
魔力はまだ残っていても、もはや身体が全く言うことを聞いてくれない。
抵抗の意思が折れ、先端の装飾部を失った杖の残骸にもたれながら、ズルズルとへたり込んだ。
「さて……クロウ、その娘を捕らえろ」
「ぃ、ゃ……来ないで……」
伸びてきた手と、いつのまにか三匹に増えていた影の大蛇。
それから逃れようとしても、震える脚に力が入らずに、尻餅をついてしまう。
それでもどうにか距離を取ろうとして、後退する。
抵抗しようという気すら、全く湧いて来ない。
身体が、心が、魂までもが、眼前の男に屈服してしまっていた。
だが……当然ながらそんな私よりも蛇の方が速く、右足に、両手に纏わり付いた。
「や、ぁ、嘘!? 服、入って、来ないで……あぁぁああ!?」
肌の上を這い回って登ってくる大蛇が衣類と肌の間に滑り込み、全身を直に舐め回して這い上がって身体中を締め上げた。
守護の下から直に触れている蛇から流れ込んでくる冷たい感触に、たまらず悲鳴が溢れた。
そんな私の体が、ギリギリと身体を締め上げる大蛇に釣り上げられ、足が地面から離れ宙に磔けられる。
「嫌、嫌だ……っ、やぁっ、何か入ってくる、離して、お願……」
「少し……黙れよ」
「あ……ぐっ!?」
首に男の指がかかり、力が少しずつ込められて、呼吸できずに呻き声だけが漏れた。
――寒い。
まるで全身が凍っていくかのよう。
以前、最初の町で、結晶の魔物に侵食された時みたいに。
いや、あの時を遥かに上回る勢い、密度をもって体内に侵入してくる冷たい感触に、あの時よりも成長したはずだったこの身体がまるで抵抗もできないまま、体の感覚が失せつつあった。
「……っと、クロウ、力を緩めろ。そんなペースでは、無力化する前にその娘が死んでしまう」
そんな言葉が聞こえてくると同時に、ふっと全身に掛かっていた圧力が緩む。
しかし、それでも尚、絶対に逃がさないとばかりにガッチリと固められた全身に、ドクン、ドクンと一定のペースを刻みながら緩やかに流れ込んでくる悍ましい穢れ。
「……やっ……あっ……あぁ……っ」
その度に体が痙攣し、体内をのたうつ穢れに責め苛まれる苦しさから、喘ぎ声が抑えきれずに口の端から漏れた。
「安心するといい、どうやって使用法を突き詰めたか知らないが、あの本……道具で作った紛い物だろうけど、一応同類のよしみで、殺しはしないよ……」
そう言って首に掛かった手から力が緩められた。
必死に酸素を取り込もうとする私の頰に、嫌に優しく触れる手の感触。
その突然の優し気な手つきに、戸惑う私の眼前で……その男の口が、酷薄な笑みを浮かべた。
「だけど……ここで、君のその身体を犯し尽くし、穢し尽くしてやる。ヒト共が、また君のような者が現れたからと、くだらない希望など抱けないようにな……!」
「うぁ……そんな、だ、め……っ、やめ、あ……ぁぁあ……っ!?」
まるで、死刑宣告のようだった。
そんな私の懇願を他所に、全身に絡みついた蛇から、首と頰に触れている男の手から、執拗に注ぎ込まれ続ける穢れ。
全身の魔力の流れていた経路が、相反する力に占領され、何も感じる事が出来なくなっていく。
逃げないと。
でないと私が、私にできることが……私が皆の中に居ることができる意味がまた、無くなってしまう。
……嫌、それだけは、嫌!
そんな衝動に突き上げられ、抵抗しようとする意思がまた僅かであっても湧いたその瞬間――そんな想いも虚しく、淡く明滅していた翼が……ついに、ふっと消えた。
目の前が、真っ暗になっていく。
世界が、色と音を失っていく。
もう、全身に何も力が感じられなかった。
からん、と杖の残骸が手から落ちた音すらも、遥か遠かった――……
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