映画『咆哮』

じじいが死んだ

……

星になった

……

馬鹿野郎

星なんてのは石っころ

こいつはただのカルシウム

……

なんでそんなことを言う

……

じじいは

ぐだっぐだっびゃん、ごり

ごりい

すり鉢にいれたゴマ

くえねえゴマだ

名前がある星にはなんねえよ

名前はあるよ

……

石に刻めるほど金あんか

……

金あんのかよお! ねえだろ!

ねえんだよ!

あれかあ、お前は粉あ抱えて

毎日せんこぉあげんのか

お前が死んだらゴミ箱だ!

……

なんで悲しいことを言う

言わなきゃつらくなんないの

進んでんの逃げてんの

怒ってなきゃやってらんないの?

……

ちげえよ! 現実みろよ! 金がねえ!

金がねえんだ! 金がさあ!

墓もたてらんねえ!

じじいはしゃべんねえし

なにもいわねえよ!

だから捨てるぜ、ゴミの日に!

……

それはやめよう、あんまりだ

せめて土にまこうよ、埋めようよ

……

馬鹿言えよ

んなあことしたかあねえ

庭に埋めるだ、まくだあ、やめろよ

やめろ

……

なんでさ

……

じじいが庭に立つだろが

まいにち庭を見るだろが

だから捨てろよ、捨ててくれ

じじいは骨だ。粉なんだ

そこに何もありゃあしねえ

……

もうねえんだ、なにもねえ

なにもしてやれねえ

なあ、なにも

……

ごめん

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