一日一編集『七月の映画』

映画『かえるの夢』

この世のカエルの中に

毒を持つカエルがいる

かれらはカエルですが

『かえる』なので

不本意でした

二言目には

「ただ毒があるだけ」

常に前にいる毒無しカエルを見ては

そう、言うのです

いいカエルは

『運』が良ければ

世界中を見ることができます

もちろん見られないことも

世界中の人に愛されることができます

もちろん愛されず死ぬことも

それを『かえる』は知りません

さらに、かれらを好んでいる人のことも

だから小さい世界の中で

「ただ毒があるだけ」と言うのです

毒は人を殺しました

生まれてから『かえる』は毒をだすので

人々に忌み嫌われ、悲しみを生み

生者の泣き声も、死者の無念も

『かえる』になる前の

絶望も、愛も、失墜も、喜びも

なにひとつ知らず

「ただ、毒が、」と続けるのです

カエルも『かえる』も同じ存在

何も違いはありません

しかし、ただひとつの違いを

血眼で探し、片付け、運命を語るなら

「運がなかったですね」と

この世の何もかも貶（けな）して貶（おと）めて

他者が笑いながら言う言葉でしょう