第98話 テレビ番組②

 大道芸人さながらの火属性魔法を使ったパフォーマンスはそれなりに受けた。


「小栗さん、ありがとうございます。カージノ王国の神様の加護は日本人である小栗さんにも表れたという事は、我々でも身につけることが可能と言う事でしょうか?」

「そうだと思います」


「それでは当然、小栗さんと一緒にカージノ王国に行かれた七名の方はそれぞれ能力を授かったのですか?」

「はい、そうなります」


「蘭さんはどんな能力を身につけられたのですか?」


 話がホタルに振られると【言語理解】に関しては発表してしまうことにしていたので所持していることを告げた。


「今私が喋っている言葉が、みなさんには日本語に聞こえているはずですが、それは間違いないでしょうか?」

「あ、はい。確かに間違いないです」


「この席にネイティブな言語が日本語でない方はいらっしゃらないですか?」


 その質問にコメンテーターの席に座っていたアメリカ出身の大学教授が驚愕の表情を浮かべているのをカメラがとらえた。


「どうされたんですか? クラーク教授」

「あ、ああ、私の耳には、ここにいるアララギさんの言葉が、アメリカンイングリッシュにしか聞こえていなかったんだ」


 その直後には全国の外国人視聴者から番組SNSを通じてそれぞれの母国語で喋られていたとする書き込みが相次ぎ、ホタルの能力が本物であることは証明された。


「蘭さんは普通に日本語を喋るだけで誰にでも通じるのですか?」

「少し違います。スキルを発動させて喋ればということです。今の発言はスキルを発動させていませんので日本語にしか聞こえないはずです」


 再びカメラがクラーク教授に向かうと教授が頷いていた。


「女神の加護を受ける方法と言うのはお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「モンスターを倒すことですね。ここでいうモンスターと言う存在は体内に魔石と呼ばれる魔素を凝縮させたものを宿す生命体となります。初めてモンスターを倒すと現地で【お告げカード】と呼ばれる身分証のようなものが現れます。そこに記載された能力がスキルと呼ばれるものになります」


「では……カージノ大陸の人たちはみなさん特殊な能力を持たれているという事でしょうか?」

「そこは私カージノの人々がどのような能力を持たれているとか調べているわけではありませんが、特別に能力が高い人がたくさん存在すると感じたこともありませんので、力を身につけている人もいる。と言う程度の認識だと思います」


「なるほど、誰でもが超人と言うわけではないのですね」

「そうですね。ただし、このスタジオにも来ているフローラやフラワーのような獣人族などは初期値から優れた運動能力を持っていたりするので、そういう部分では地球人類と比べることは出来ないですね。ただしステータスの合計と言う事であれば、初期値では種族間での優劣は少ないと言えます」


 そこで話題を変えて魔道具の話に移る。


「先日カージノ大使館や、日本政府の税関を移築が行われましたが【マジックバッグ】と呼ばれるアイテムが使われたと伺っています。ああいった今までの地球の常識になかったような魔道具などはこの先、日本などでも出回るようになるのでしょうか?」

「マジックバッグやカージノ大使館に設置された転移の扉と呼ばれるような魔道具は一般的には出回っていません。私もカージノ王国で売っているのを見たこともありませんし、仮に売っていたとしても恐ろしく高額なのではないかと思います」


「それは残念ですね」

「そうでしょうか? 逆に助かったと判断するべきだと思いますよ? もし、そういった魔道具が簡単に手に入るものであれば、運輸、流通産業は壊滅的な状況になるでしょうし」


 最後にJLJがカージノ側に提供したい物として、魔法などはカージノでも一部の人しか使えるものではなく、魔法を使える人物とそれ以外の人では格差があることも事実なので、その格差をなくしていくために地球文明では当たり前のように使える、家電製品をカージノ王国で利用できるように提案していきたい。

 ということが当面のJLJ社の主要事業であることを発表した。


「現在、カージノ王国では電力は全く使われていないのですよね?」

「はい、動力としての化石燃料や放射性物質なども存在していない上に上流階級では電力でできることは、ほぼ魔法で代用できるために発達していなかったようですね」


「その状況で家電製品を持ち込むというのは状況的に厳しいのではないでしょうか?」

「それに関しては、明日、日本政府と電力各社も集まったうえで、JLJと協力企業から新しい方式の発電機が発表されますので、ご期待ください」


 最後に結構大きな爆弾を投下して番組は終了した。

 明日の合同記者会見もとても盛り上がるだろう。


 番組を終え家に戻ってから掲示板のチェックをしていたホタルが、その盛り上がり方の凄さにテンションが上がって、匿名で参加しながら煽りまくっていた。


「ホタル、あんまり煽るなよ?」

「だって反応が面白すぎますよ?」


 実家から日本刀を持って戻ってきていた東雲さんの刀の錬成をしながら少しだけ呆れていた。

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