第87話 世界中にモンスターが出現するの?
総理と島長官がいるこの席で今朝、オグリーヌから仕入れた情報を伝える。
「それは今後世界中でモンスターが発生するということで間違いないんですね?」
「はい……避けることは出来ないと思います」
「問題はお告げカードと呼ばれる神の加護をカージノ大陸と同じように取得できるのかということですね」
「地球の神々がどの程度の力を持ちどのような加護を与えてくれるのかが全く未知数ですから、場合によっては自衛隊や警察組織の人間にカージノ大陸でお告げカードの取得をしてもらうという判断も出てきます。対モンスターとの戦闘ではスキル使用以外ではダメージを与えられない敵も出てきますので……」
「カージノではどのように対処しているのでしょうか?」
「対モンスターであれば冒険者ギルドのハンターがほとんど対応していますね」
「それは当然、一般市民なのでしょうか?」
「はい」
「この世界で特に日本のような一般人が武器を手にすることが少ない国ではモンスターハンターが一般的になるのは難しいかもしれませんね」
「そうですね。ただ化石燃料や放射性物質が魔素に変換されるという性質上現在の産油国などがもっとも危険な地域になるのではないでしょうか?」
「エスト伯爵、それは認識不足です。現在の科学力で採掘できていないだけであって、日本近海には未採掘のメタンハイドレードの鉱床が大量にあります。危険度では現状の産油国と比べても変わらないでしょう」
「それが事実だとすれば、モンスターハンターの養成は急務かもしれませんね」
「現実的には現状モンスターが実際にいるのはカージノ王国に限定されているので、仮に養成を行うとしてカージノ大陸でしか行えないという事実もあります。その辺りの受け入れをカージノ王国は提供してくれるのでしょうか?」
「シリウス陛下の判断になりますが、カージノ王国に対して友好的であれば受け入れも検討してくださるはずです。ただ、モンスターの発生が世界に壊滅的な危機をもたらすわけではないことは、カージノ王国が既に王国歴で三千年近くを迎えていることからも証明されています。ただし各都市は対モンスターの防護壁を構築するなど対策は必要ですけど」
「問題が大きすぎて頭が痛いですね。差し当たってポーラ王女の大使就任の晩餐会までにある程度の対策を協議し、カージノ王国に協力を求める部分を決めておきます」
「総理、モンスターが発生するということは魔石が手に入るということでもあるので、今後日本も資源産出国の仲間入りをするという捉え方もできます。マイナス面ばかりに目を向けずに、魔石の活用による新たな産業や文明を考えることも大事だと思いますよ」
「そうだな、エスト伯爵。JLJの小栗君としてもその分野に関しては協力をよろしく頼むよ。差し当たっては発電関係の設備開発をよろしくお願いします」
「はい。できる限りの協力はしたいと思います」
総理たちとの話は一週間後に迫ったポーラ王女の大使就任パーティ関係の話題に移り、現状の各国の参加状況などを教えてくれた。
G7並びに中国、ロシア、インドなどの超大国はすべて国家元首クラスの訪問が通達されたために、当初大使クラスで参加表明をしていた国家も軒並み国家元首の参加に切り替えてきたそうだ。
その話を聞いて少し思ったのが、今回国交の問題から招待状を出さなかった北朝鮮などが晩餐会当日に長距離弾道ミサイルなんか発射すると、世界は混迷を極めるだろうな? とか思った。
思った後に(フラグ立たないよな?)と結構真剣に考えてしまった。
当日は念には念をでカージノ大陸に貼ってあるのと同等の結界を東京都内全域に貼っておこう……
総理と島長官が帰られたタイミングで東雲さんから連絡が入った。
「小栗さん。事務所へ来ることは出来ますか?」
「ああ、大丈夫だけど急ぎの要件?」
「先ほど事務所に侵入しようとした中東系の人物に関連した話です」
「そういえば、そんな騒ぎがあったね。すぐに行くよ」
電話を終えると自宅へ転移し、小栗東の姿に戻り事務所へと降りて行った。
「小栗君お疲れ様。あそこまで大規模な魔法を目の当たりにすると流石に開いた口が塞がらないな」
大崎さんが声をかけてくる。
「大崎さん。魔法を行使したのはあくまでもエスト伯爵で、小栗東は一般ピープルですから……」
「先輩、さすがに一般ピーポーは無理があると思いますよ?」
「まあそれでもさっきのアラブ系の連中のようにこの事務所に忍び込んで盗聴器をつけようとしたりする可能性もあるから発言は気を付けましょう」
俺がそう伝えると他のメンバーも無言でうなずいた。
東雲さんが一応の対策を伝える。
「今後は念には念を入れて、毎朝私が出社したタイミングで事務所内のクリーニングを行うようにします。盗聴器の確認と社内で使用されるパソコンのウイルス関係のチェックですね。内閣官房でとられているセキュリティーと同レベルで対策させていただきます」
「よろしくお願いします。東雲さん。そういえば斎藤社長、タイラーさんとの契約はもう終わってたんですか?」
「正式な契約は今からだよ。ただ今朝タイラーさんから連絡があって『事務所周辺の喧騒が予想できるから、何があっても対応できるようにしておきましょう』と連絡はもらっていた」
「さすがですね。今後色々な理由で『パーフェクトディフェンダーズ』社との付き合いは深くなると思いますので、お互い、よい関係を築けるようにしていきましょう」
東雲さんが先ほどの中東系の人物に関しての情報を教えてくれた。
「彼らはアラビア語圏の宗教系の過激派組織のメンバーでした。邪教を許せないとか言っていたので、おそらくカージノ王国と最もつながりが深いJLJ社の内情を調査するのが主目的であったと思われます」
「宗教組織が相手となると日本の常識が一切通じない可能性が高いから面倒ですね」
俺がそう返事をすると無限さんが突っ込んできた。
「小栗君。宗教組織は日本でも、かなり危険な組織が多数あることを忘れてはならないよ。女神オグリーヌを信仰すれば他の神々を信仰するよりも良い加護を与えられるというような発言は闇雲に敵を増やしてしまう可能性がとても高いから公の場では、そういった発言は控えたほうがいいと思う。まあ僕自身はオグリーヌ様以外の神を信仰する気にはとてもならないけどね」
その発言を聞いて財前さんが質問してきた。
「一つ聞いてもよいか? 私は今の女房と結婚をする時に永遠の愛を教会で神に誓ったんだが、その場合は女神オグリーヌの加護を受けることは出来るのだろうか?」
「財前さん。『ダービーキングダム』からカージノの偵察に行った七人のメンバーは全員問題なく加護を受けることができました。メンバーの中に既婚者はいなかったんですが、俺とホタル以外は全員カトリックの洗礼を受けていたはずです。その事実から考えると、神様の縄張りのようなものが存在するのだと思います。どの神様の支配地域でカードを取得するのかで加護を受ける神様は変わるのではないでしょうか?」
「なるほどな。現在の信仰自体は大きな問題ではないと?」
「少なくとも毎日のように神に祈りをささげるような生活をしている方でなければ影響はないと思います。まだ実際には地球でのモンスターの発生が『ダービーキングダム』と共に転移してきたクラーケンと呼ばれるタコのモンスターとフィリピン沖で確認されたサメ型のモンスターだけで、どちらも地球人類が倒した実績がないので、はっきりとした事実関係は判りませんが……」
斎藤社長がここでいったん話を遮った。
「どちらにしても現状ではモンスターの対処であるとか加護の取得ということに関してはJLJとして係るべき問題ではないと思います。当社は予定通りに発電機関係の事業とカージノ大陸のエスト伯爵領の開発に集中して取り組み、それ以外の案件に関しては日本政府やカージノ王国側の要望があれば検討する。というスタンスで動きましょう。なんでも抱え込んでしまうには色々足りないものが多すぎますので」
「「「了解しました」」」
話を終えたタイミングで斎藤社長が電話をかけると、十分後くらいにタイラーさんが現れた。
正式な警備保障の契約のためだろう。
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