第82話 400パワー
領主邸の応接室で2時間以上も待たされている俺は、筋トレを始めた。
腕立て伏せ、逆立ち腕立て伏せ、スクワット、片足スクワット……。
いい感じに汗をかいてきた。
「次は背筋と腹筋を……。いや、その前に腕と足をもう少し追い込んでおくか……」
最強を目指す上で、不要な筋肉などない。
しかし強いて言えば、やはり腕や足の筋肉が重要である。
「まずは逆立ち状態で、片手の腕立て伏せだ! ふんっ! ふんっ!!」
俺は腕の筋肉を追い込んでいく。
程良い疲労感が心地良い。
腕立て伏せとスクワットは、自らの体重を負荷とするという点で似ているトレーニング方法だ。
だが、可能な回数はほとんどの者がスクワットの方が多いだろう。
例えば腕立て伏せが1回もできないひ弱な女性やモヤシ君であっても、スクワットであれば数回程度はできるはずだ。
自らの体重を負荷にしている点は同じなのに、なぜこのような差異が生まれるのか?
その答えは、人間が普段から二足歩行をして足で体重を支えているのに対し、腕で体重を支えることは日常生活においてほぼないからだ。
足に比べると、腕の筋力はあまり発達していないのだ。
それは各人の生活習慣としての話でもあるし、人間という種の長年の進化によって生み出された構造上の話でもある。
つまり何が言いたいのかと言えば――
「ふう。腕はもう十分追い込んだな。次は足を追い込みたいのだが……」
純粋な自重トレーニングでは、足はこれ以上追い込めないのだ。
片足状態でのスクワットが1つの限界点である。
強いて言えば、片足でスクワットするだけでなく、伸ばしきった後に片足のままジャンプするというトレーニングもあるが……。
片足スクワットよりも少しだけ負荷が増える程度の話だ。
最強を目指す俺にとっては物足りない。
「自重トレーニングも悪くないが、やはり不便なところもあるな……」
俺はそんなことを呟きつつ、部屋を見回す。
そして、良いものを発見した。
「おっ! これを使うのはどうだ? ……よしっ! 悪くない重さだ!!」
俺は部屋に飾られていたとある物に目を付け、持ってみた。
重さにして100キロ以上はあるだろうか。
俺の体重と同じくらいあるかもしれない。
「普通のスクワットで100パワー! 片足にすることにより2倍の200パワー!! そして、この重りを担ぐことによりさらに2倍の400パワーだ!!! うおおおおぉっ!!!!! ふんっ! ふんっ!! ふんぬぁああ!!!」
こうして俺は、領主邸の応接室でいい汗を流していったのだった。
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