第81話 筋トレ
「遅い……。遅すぎる……」
俺は一眠りして目覚めた。
時間にして30分くらいだろうか。
そしてそれからさらに30分くらいが経過したのだが、まだ何の音沙汰もない。
「ただ待っているだけの時間というのは、退屈なものだな」
俺は独り言を言う。
これなら、天井裏の覗き人たちをボコボコにしてしまった方がまだ良かったかもしれないな。
さすがに今さら後悔しても仕方ないが……。
「仕方ない。部屋の中でもできる筋トレでもするか。まずは腕立て伏せから……」
いくら最強を目指す俺でも、最低限の常識ぐらいはある。
普段であれば、招かれた場所で筋トレを始めたりはしない。
ましてや、いかにも高そうな調度品が並ぶ部屋ではな。
だが、今回は待ち時間が待ち時間だ。
俺の暇つぶしのために、この部屋の物を壊さない範囲で好きにさせて貰おう。
「ふんっ! ふんっ!!」
俺はオーソドックスな腕立て伏せを開始する。
高速で100回ほどやった後、姿勢を変える。
今度は、逆立ち状態での腕立て伏せだ。
「ふんっ! ふんっ!! ふんっ!!!」
腕立て伏せは自重トレーニングの一種だ。
ウェイトトレーニングとは異なり、自重トレーニングでは負荷の細かな調整が難しい。
そのため、筋トレを始めたばかりの初心者は挫折しやすいし、細かな仕上げを求められるボディビルダーも避けやすい。
鍛えて筋肉を付けること自体が目的なら、ウェイトトレーニングが優れているだろう。
だが、体を自在に動かせるようにするということが目的なら、自重トレーニングも捨てたものじゃない。
こうして逆立ち状態で腕立て伏せをすれば、腕に高い負荷をかけられるだけではなく、逆立ち状態でのバランス感覚も培われるからな。
逆立ち状態で戦うときに役立つだろう。
「腕はこんなものでいいか。次はスクワットだ!!」
筋トレの王様とも言えるスクワット。
下半身の筋肉をバランスよく鍛えることができる。
ほとんどの格闘技やスポーツにおいて、下半身の筋肉は特に重要なものだ。
格闘技であれば、攻撃時の安定感やフットワークの向上に繋がる。
球技であれば、スイングの安定感が増すし、移動速度も上がる。
「ふっ! ふっ!!」
スクワットもやはり自重を使ったトレーニングだ。
適切なフォームで行えば短時間で効率良く効果が得られる。
唯一の弱点は、純粋な自重トレーニングとしては融通が利かないということかな。
「今度は片足でやるぞ! ふっ! ふっ!! ふっ!!!」
両足のスクワットから片足のスクワットに移行すれば、負荷を大幅に増やすことができる。
しかし単純に考えても分かるように、2本の足で支えていた体重を1本の足で支えるわけだから、その負荷は一気に2倍となる。
いや、1本足でバランスを取ることの難しさを考えると、2倍以上の負荷があると言ってもいい。
俺だからできるが、普通のスクワットでは満足できなくなり始めたぐらいの筋トレ中級者からすれば、片足スクワットは少し難易度が高い。
純粋な自重トレーニングに拘る場合に、挫折しやすいポイントだと言っていいだろう。
「ま、俺はむしろ片足スクワットでも物足りないがな。次はどうしようか」
俺はそう呟きつつ、次なる筋トレを考え始めるのだった。
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