第76話 領主邸へ

 数日後――


「ふむ。ここが領主の屋敷なのか……。思っていた以上に立派な建物だな……」


 俺は貴族の屋敷を訪れていた。

 巨大な門を構えた豪邸であり、屈強な門番が2人立っている。

 中に見える広大な庭は美しく手入れされていた。


「ネネコは置いてきて正解だったな……」


 俺が領主邸に行くことを伝えると、彼女はとても萎縮していた。

 それでも付いてこようとしていたのだが、俺が止めたのだ。

 獣人の彼女は、この街では肩身が狭い存在だ。


 もちろん俺は気にしないのだが、他の者は別である。

 平民でさえ獣人を蔑む傾向があるのだから、貴族様ともなればその傾向が強まる可能性が高い。

 それに、彼女を連れて行っても緊張で固まるだけだと思ったのだ。

 俺はそんなことを考えながら、門の前に向かう。


「おい! 止まれ! ここはお前みたいな平民が来ていい場所じゃないぞ!」


 門の前まで来ると門番に止められてしまった。


「んん? 俺は呼ばれてここに来たんだがな……。誰かに取り次いでくれないか?」


「取り次ぐ? ははははは!! そんな必要はないわ!! お前のような平民、屋敷に入れるなどとんでもない!!」


「ほほう……なるほどな……」


 どうせこんな感じだと思っていた。

 貴族なんざ、面倒事の種でしかない。

 本人が傲慢なことはもちろんだが、使用人や門番までもが同じように染まりやすいのだ。

 さて、どうしたものか。





*****




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