第44話 ゴブリンの討伐報告

 30匹を超えるゴブリンを討伐した。

 討伐証明部位である右耳だけを剥ぎ取り、小袋に入れていく。

 耳だけとはいえ、30個以上もあるとさすがにかさばるな。

 俺はそのまま帰路に着く。


 そして、街の冒険者ギルドにやってきた。

 俺は入口のトビラを開け、中に入る。


 ざわっ。

 中にいた冒険者たちに、ざわめきが広がる。

 何だ?


「(おい、あいつが例の……)」


「(ああ……。Cランク冒険者の”赤い三連星”を一蹴したって噂だ)」


「(とんでもないルーキーだぜ。前職は騎士か軍人か?)」


「(見たところ、剣や槍は持っていないな……。どうやって戦うんだ?)」


「(噂では、格闘で戦うらしい。すげえ体をしてやがる。唆るぜこれは)」


 周囲からひそひそ話が聞こえてくる。

 俺の聴覚が人並みなら聞こえない程度の声量だ。

 しかし、俺は聴力もばっちり鍛えている。

 もちろん問題なく聞き取ることができた。


 俺が撃破した”赤い三連星”とやらは、そこそこの有名人だったようだ。

 あの程度で一目置かれる存在とは、ここの冒険者の戦闘レベルもたかが知れているな。

 機を見て、俺が指導してやれねばなるまい。

 俺はそんなことを考えつつ、受付前まで歩みを進める。


「よう。帰ってきたぞ」


「あら、リキヤさん。ずいぶんとお早いご帰還ですね……。さしものあなたでも、広大な森でゴブリンを探すのはうまくいかず、引き返されたといったところでしょうか?」


 受付嬢がそう言う。


「いや、もちろん狩ってきたぞ。俺を殴り合いだけの男だと思ってもらっては困るな」


 戦いに通じるものは一通り鍛えている。

 ここで言う戦いとは、殴り合いなどの直接的な戦闘に限らない。

 森の中で獲物を探すことも戦闘の一部だと言える。

 それに役立つ聴力や視力も、俺は鍛えてきた。


「そ、そうですか。やはり、リキヤさんは素晴らしい方ですね! では、依頼の規定通り、ゴブリン3匹分の討伐証明部位の提出をお願い致します」


「その件だが、別に3匹より多く狩ってもいいという話だったな?」


「はい。依頼料自体は当初の規定通りのものとなりますが、別途討伐報酬と功績は得られます」


 出発前に聞いていた通りの内容だ。


「わかった。実は、結構たくさん狩ってきたんだ」


「わかりました。さすがはリキヤさんですね。3匹より多くとなると、4、5匹でしょうか。いえ、リキヤさんのことですし、ひょっとすると10匹近く……?」


 10匹?

 俺が狩った数は、そんなものではないが。

 口で説明するより、見せたほうが早いか。

 俺は腰にぶら下げた小袋の口を開ける。


「どこに出せばいいんだ?」


「ええっと。こちらの査定カウンターにお願いします」


 受付嬢が隣のカウンターを指差す。

 依頼の受付カウンターとは、区別して運用されているようだな。

 まあ、ゴブリンの耳を置くとなると、汚れてしまうしな。


「わかった。では、そこに置いていくぞ」


 ゴブリンは下級の魔物ではあるが、人族に害のある魔物だ。

 30匹も狩れば、そこそこの討伐報酬と功績が得られるのではなかろうか。

 期待したいところだ。

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