第43話 ゴブリンの集結

 ゴブリン狩りを行っているところだ。

 依頼にあった3匹の討伐は完了した。

 ここらで切り上げてもいいが、せっかくなのでもっと狩っておこう。

 追加の報酬が得られる。


 だが、今までのように1匹1匹を探知して、こちらから出向くのは少し効率が悪い。

 ここはーー。


「ぬうううっ! うおおおぉーーん!!!」


 俺は大きな雄叫びを上げる。

 つまるところ、大声を出してただ獲物をおびき寄せるだけの技術だ。


 地球にいた頃もたまに使用していた技だ。

 鹿、狐、狸などの中小サイズの動物は、逆に逃げてしまう。

 熊やライオンあたりは無反応なことが多い。


 俺の雄叫びを聞いて寄ってくるような動物は、人間を獲物だと認識している好戦的な動物である。

 この異世界で、寄ってくるとすればーー。


「ぎいいぃっ!」


 そら来た。

 ゴブリンだ。

 こいつらは、なぜか積極的に人間を襲う性質があるからな。

 俺が大声を出せば、寄ってくると思っていた。


「ほいっと」


 俺は軽くゴブリンを蹴散らす。

 ザコの獲物がわざわざあちらから出向いてくれて、手間が省ける。


「「ぎいいいぃっ!」」


 さらに、追加で2匹。

 少し離れたところからは、合計で10匹以上の足音がする。


「ふん! せえいっ!」


 俺はとりあえず2匹を瞬殺する。


「これは、大きな功績を上げられそうだな。ザコとはいえ、連戦なら多少は手応えがあるかもしれん。期待したいところだ」


 俺はそうつぶやきながら、追加のゴブリンを待つ。


「「「ぎいいゃっ!!!」」」


 3方向からの同時攻撃。

 さしもの俺も、腕は2本しかない。


 ここはあの技を使うか。

 俺は片足を上げる。


「烈震脚!!!」


 上げた足を下ろし、力強く地面を踏み抜く。

 ズドオン!

 大きな音とともに、地面がめり込んで砕け散る。


「「「ぎゃっ!?」」」


 地面からの岩や砂を受けて、ゴブリンの攻撃態勢が崩れた。


「指弾」


 パチン!

 俺は指パッチンの要領で、空気弾を飛ばす。

 狙いは、体勢を崩しているゴブリンどもだ。


「「「ぎいいゃあっ!!!」」」


 やつらはそう断末魔を残して、息絶えた。

 その後も、俺は迫りくるゴブリンたちをバッタバッタとなぎ倒していく。

 30匹を超えたところで、後続が途切れた。


「ふむ……。もう終わりか。まだまだ動き足りないのだが……」


 せいぜい、朝の準備体操ぐらいのものである。


「ゴブリンたちは、同じところから来ていたな。あそこに巣でもあるのか?」


 まだ暴れ足りないし、行ってみるのもありかもしれない。

 ……いや、今日のところはやめておくか。

 害獣のゴブリンとはいえ、根絶やしにしたら生態系に狂いが生じたりするかもしれない。

 地球であちこち回ったときも、そのあたりには配慮して活動してきた。


 とりあえず今日のところは切り上げて、冒険者ギルドに報告してみよう。

 問題ないようであれば、明日にでもゴブリンの巣に向かえばいいだろう。

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