第2話中川玲子と封筒と朝

 そして依頼相手の旦那さんと女性がホテルからでてきた写真をメールへ添付した。

私はほっと一息してコーヒーを入れようと思ったが今朝の目玉焼きの失敗が頭をよぎり今日は余計なことはしまいと缶コーヒーにすることにし、キッチンにおいてあるタバコを手に取り、ライターで火をつけ、一吸い目は吹かした。換気扇のボタンの「強」を押し、その下にある椅子に座り缶コーヒーを勢いよく飲んだ。

 タバコが半分のところまで来たときパソコンの通知音が鳴った。


「よっこらしょ」


 タバコをくわえ、重たい腰を上げ、パソコンの画面を覗き見る


通知2件

1件 あずま亮

「今日は玲子の命日だ。忘れているわけじゃないよな?約束の時間、いつもの喫茶店で待ってる」


通知1件 鈴木社長

「お前宛に変な封筒が朝事務所に届いていた。今日は一度事務所に来てくれ」


 私はいつも事務所へは行かずそのまま依頼の調査に行ってしまうのでそれを思って書いてくれたのであろう


「わかりました。一度事務所へ寄ります」


マウスで送信ボタンを押した。

私は咥えていたタバコの火を消し、上着とズボンを着て家を出た。


私の移動手段和主に自転車である。バイクのようにガソリン代もかからないし税金もかからない。自転車はその点において非常に優れている。


家から事務所までは自転車で15分程度で着く。

今日はもう夏になろうかというのに風がごうごうなっていて自転車でこけないように走るのがやっとである。







「そこで何しているの?……。……。」


「中川さん……。ですか?」


僕は焦っていた。高校生のころあの日は今日みたいに風が強いそんな日だった。


風に押されてこけたところをあの中川玲子に見られ、話しかけられたのだ。


「あなた私のこと知っているの?」


知らないわけない!

容姿端麗、成績優秀な子なんてめったにいるものじゃない


「あ……。はい……。中川さんは学校じゃあ知らない人はいない有名人だか   ら……。」


「あなたは長谷川君……。だよね?」


どうして中川さんが俺のことを?

皆目見当もつかなかった。だけどうれしい!


実は俺のことが好きだったり……。などと考えたが彼女の次の発言ですべてが分かった


「亮からいつも話は聞いてるよ。君があの長谷川君だね! これからよろしく!」


これが中川玲子に恋して失恋した瞬間だった










 そんなことを思い出すのはこの日とこの気候のせいだろう。

やっとの思いで事務所につくと下で首を長くして鈴木さんが待っていた。 


私が不思議そうに近づいて行くと


「やっと来たか! この寝坊助! こっちはあの封筒のことが気になってしょうがないんだ!」



「あぁ、あの封筒ですか! 中身見たんですか⁉」



「あんな封筒見ずにいられるかい!」


 と怒られてしまった。電話くらいくれたらよかったのにとも思ったがその封筒を見て理解できた。その封筒には


「あなたはあの事件の真相は知りたいですか?」


と赤い文字で大きく書いてあった


「長谷川これはいたずらってことでいいな?」


と諭されたがふっと中川さんのことを思い出し、今日が命日であることも思い出した。

今日という日と中川さんの事件のことがつながったような気がした。


「ちょっとその中身みせてもらっていいですか?」


その封筒は白く、文字を切り取った字でさっきの言葉がならべられていた。


封筒はすでに鈴木さんによりあけられており、その内容はこういうものだった


「今から十年前の8月6日、中川玲子は死んだ……。あなたたちはあの事件の真相を知る義務がある……。どうか事件の真相を追ってほしい。今日あの場所へ来てください」


十年前……。

8月6日……。

中川玲子……。

あなたたち?

事件の真相……。


この封筒の差出人はいったい誰だ? なぜ直接依頼に来なかったのか?


「長谷川……。中川玲子っていったい誰だ?お前はこの封筒の意味が分かるのか?」


 「ええ……。中川玲子は僕の高校時代の同級生です。10年前の今日なくなったのですが……。」


「その玲子ってのは聞いたことあるなあ」


 「彼女は大学教授のむすめでしたし、彼女の死には不審な点が多くありましたからマスコミが興味を示さないわけありません。

なのでマスコミは未解決事件として扱ったんです。警察は事故死だと判断しました。

が。それに……。」


「それになんだ?」


「一人容疑者がいたんです……。」


「容疑者がいたのか⁈」


「はい。彼女の友人で同級生の小林あかねです。」


「お前はその小林あかねってのを知ってるのか?」


「はい。同じオカルト同好会のメンバーでしたから」


その時亮から着信があった。


「どうした健司?約束の時間だぞ!」


「あ、すまない。すっかり忘れていた。それより亮、気になることがあってな……。」


私は亮に封筒が突然届いたこと、その内容について話した。


「封筒⁈ しかも玲子の名前まで……。 いたずらにしちゃあ手が込んでいる。一度見せてくれ」


どうやら鈴木さんと話し込んでしまっていて約束の時間を過ぎてしまっていたらしい


「鈴木さんこの封筒僕がもらっていいですか?」


「あ、この封筒か? 持っていけ! そもそもお前宛に届いたんだから」


私は急いで喫茶店へ行かなければと思ったが自転車でそう離れていな事務所に来るのがやっとなこんな日に喫茶店まで行けるわけがない。

 そうもたもたしていると鈴木さんが


「長谷川! 今日お前休みだろ? 休みの日にお前を呼び出してしまったんだ。

 悪いから車で送って行ってやるよ。

 今日は喫茶店で待ち合わせの予定だろ?今日は妙に風が強いからな」


鈴木さんの車はいかにも九十年代といった私にはお世辞にもかっこいいとは言えない車だ。


しかしこんな日にはありがたい。

 喫茶店までの道中何回もエンストしそうで怖かったが何とか無事に送り届けてもらった。鈴木さんにお礼を言い車のドアを閉めようとすると


「長谷川、お前封筒に書いてあった場所に行くんだろ?しっかり仕事して来いよ」

と渇を入れられた。そうして鈴木さんと別れた私は待ち合わせの喫茶店へ入っていった。

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