第28話 ニワトリのタマゴ

《アラサーのサラリーマンふたりの会話。テレビで鶏を見た所である》


「なぁ二朗。鶏って言うのもよく見たら可愛いよなぁ」


「鶏なんて可愛いかぁ? 俺、子供の頃飼ってたけど、けったいな事があってからちょっと苦手なんだよ」


「それはまたけったいな話やなぁ。あ、でも省三って鶏肉好きじゃなかったっけ」


「それとこれとは別やん。鶏肉は確かに美味しいけど、生きてる鶏が、雄鶏がちょっとあれやねん……実はな、子供の頃飼ってた鶏って言うんは、夜店で買うたヒヨコやねんな」


「夜店でヒヨコってきょうび珍しいなぁ」


「言うて二十年ほど前やけどな。まぁヒヨコやった時は本当に短かったわ。すぐに鶏になりよったわ」


「ああそうか、ヒヨコが育って雄鶏になったって事は、突かれたり蹴飛ばされたりしたんが怖かったって事?」


「いやいや、そんな話じゃないさ。あいつ雄鶏のくせにある日卵を産んだんだよ……」


「雄鶏なのに卵ってそれはまたけったいな話やな。それとも雌鳥だったんかな?」


「あれは本当に雄鶏だったんだよ。蹴爪もあったしコケコーって啼いてたし。

 それよりさ、コカトリスって知ってるか? 蛇と鶏の合いの子みたいなバケモンやけど、それは雄鶏の卵から産まれるらしいんだよ」


「もしかして、その卵からコカトリスとかが産まれたとか?」


「いや解らん。卵はすぐに爺ちゃんが処分してくれたから……鶏もどっかに行ったよ。まぁ、バケモンの卵を産んだ雄鶏の事は不気味に思い始めてたし、その晩は豪勢な鶏料理やったから別に気にならんかったけれど」


「そっかぁ……」


 結論:何のかんの言いつつも一番恐ろしいのは人類……かもしれない。

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