第1話 我、感心する
新章開始です。
ちょっと短め
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画面には大きな広間が映し出されていた。かすかに見える壁はゴツゴツとした岩肌で、ほのかに発光している。
まだ画面上に敵影はない。
ざり、そんな音を立て手前にいくつかのシルエットが現れた。
と、同時に画面奥の天井より黒く粘ついたものが、ぽたりぽたりと落ちてくる。
地面に落ちたそれは、黒い粘液そのままにやがてずんぐりとした人型を取っていった。
「―――――――!!」
黒の粘液は身体を震わせ音のない叫びを上げる。同時に王冠状に黒い波が広がり、そこから分身のような十を超える黒の人型が現れた。
対する手前のシルエットからも、一人が前へと足を踏み出した。
少女だった。レザーゴシックに身をつつんだ彼女は、緊張か、顔をこわばらせながらも口を開く。
「Laーーーーー!!」
固く澄んだ声が響き渡り、黒の人型の表面にさざ波が広がった。
同時に、少女の傍らに白銀に光る半透明の戦乙女が舞い降りる。
その光に照らされるようにして、後ろに控えていたシルエットも明らかになる。
そろいの衣装を着た少女達だった。
ダンッと足が踏みならされ、四人が声を上げる。
「Wake Up,Grab It」
後ろの少女達の手に、ギターが、ベースが現れた。そして、さらにもう一人のまわりにはドラムセットまでも……。
そうして一番前、ボーカルの少女が声を響かせる。
――叫べ! 想いを! 変わりゆく世界に。
私たちの
ボーカルにあわせ戦乙女が突き進む。
銀の剣劇が光り躍る。そのたびに黒の人影が切り裂かれた。
かき鳴らすギターがそれを追いかける。切り裂かれた傷口はメロディーに合わせ分かち断たれる。
瞬く間に三体の人影が溶け落ち、黒の粘液になった。
――誓え! 世界に! 後ろを振り向くな。
私たちの
戦乙女のまわりに空白が生まれた。黒の人影が一歩引いたからだ。
銀剣を構え戦乙女が一歩前に出る。だが同時に黒の人影は鋭くとがらせた手を伸ばしてくる。
右に、左に、前に、四方から黒の切っ先が迫る。
だが、それにかまわず戦乙女は駆ける。
ベースの刻んだリズムが、無数の小さな盾となり、黒の切っ先を止め、弾き、反らす。
――打ち壊せ、偽りの
たどり着け、望蜀の
目指すべきは最奥にある、ひときわ大きな人型。この部屋の有象無象のすべての母体。
十重二十重と産み出される黒の人型を切り裂き、白銀の楔となって戦乙女は進む。
それを押しとどめんと無数の黒の手が、矢となり槍となりふり注ぐ。
それらの捌きをベースの刻む盾に任せ、戦乙女は愚直なまでに前に前に剣を振る。
――たとえ幾千の後悔が、たとえ幾万の挫折が
私たちに前に立ち塞がろうと歩みは止めない――
一振りの剣にギターのメロディーが絡み、幾条もの光となる。黒の人型は粘液へとかえり、前を塞ぐものはもういない。
一拍の溜め、戦乙女が黒の母体に剣を振りかぶったその時、
「――――――!!」
黒の母体が音を震わせた。
ベースの刻んだ盾がはじけ飛ぶ。と同時に、地面に落ちた黒の粘液が棘となり戦乙女へと襲いかかった。
「……ぐっ」
ボーカルの声に小さく苦痛がにじむ。だがそれでも彼女は歌うことをやめない。
――膝をつくな、
天に届かせろ、私たちの声を――
戦乙女は四方から黒の棘に刺し貫かれていた。
少女達の服にも、肩に足にと血がにじんでいる。
だがそれすらも熱情に変えるように、リズムは刻まれメロディーは高く響く。
ドラムがひときわ強く鳴らされた。
天井から羽が舞い落ちた。それらは弾け黒の棘を消し飛ばし、あるいは針となって黒の母体を縫い付けていく。
――ここにあるのは私たちのリアライズ
ボーカルが高らかに謳う。
戦乙女の振り上げた剣が形を変え、その剣身が太く長く伸びる。
少女達の生み出した音楽が光となって剣を輝かせた。
黒の母体もその場から逃れようと試みるが、身じろぎ1つすることができない
――すべてはここにある――
白の光が振り下ろされた。袈裟懸けに黒の母体を切り裂く。
数瞬。黒の母体は砂となり、そして消えていった。
「お、おおー。すごいのじゃ」
小さく分割された画面が現れた。そこに映るのは黒の髪に皙蝋の肌の少女。ダンジョンマスター迷ノ宮モナだ。
モナは感心したように声を上げ、手を叩いている。
《モナちゃん、歌が始まった途端ワイプどころか姿を消すのエライ》
《オマエラモナー》
《急にしんとしちゃうから》
《オレ達だって空気を読めるんだぜ》
《そう、いつもはあえて読まないだけだ》
《自慢できることか?》
しんとしていたコメント欄がにわかに踊り始めた。
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歌を歌いながら戦闘とか格好いいよね、とか安易な考えでオープニングを作っては駄目だ。
見るのはいいけど、自分でやるとなかなかにこれが。
書き直すかも知れません。
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