第六章 プロトコルの目的は
何度も触れている通り、プロトコルの目的は、加害者を断罪することではない。
いじめを封じ込めて、ストップさせること、そして何より、被害者の側に立ち、被害者の心に寄り添うことが対処チームにとって最重要のタスクとなる。
被害者は、いじめの被害を受けるだけではない。
巻き込まれるのを恐れて友達は離れていくし、親や教師も自身の置かれている深刻な立場や心情を理解してくれない。下手をすると自身が悪いと責められたりする。大変に孤立した状況に追いやられる。
最悪の事態を誘発するのは、いじめ行為そのものよりも、むしろそうした状況の方に原因があるのかもしれない。
解決が困難であっても、被害者の側に立つ人間が一人でもいたならば、最悪の事態だけは防げる可能性が高い。しかし、それを教師や学校に求めるには限界がある。
対処チームには、調査をすると同時に、被害者の保護及び物心両面でのサポートが求められる。そのために必要な手段と権限も、予め検討しておくべきであろう。
そもそも、証拠を掴んでいるのであれば、それらを加害者に突き付けてやれば済む話かもしれない。
しかし、プロトコルでは、そうした手段は選ばない。わざわざ授業中に聴取を行う。
実はここにも意味がある。
まず、いじめの事実を認定して対処するためには、実態を把握しなくてはならない。大勢の生徒に効率よく聴取を行うのであれば、どうしても授業中ということになる。
聴取によって、学校全体がプレッシャーに晒されることになるが、これがいじめに対する無言の圧力となる。
加害者にいじめを認めさせて、自ら話をさせることで、処分ではなく、穏便な解決が図れる。
警察のように拘束して取り調べが出来ない以上、一定の期間と制度的枠組みが必要となる。
被害者に執着し、加虐行為に依存するのは、何らかの精神的、現実的問題を抱えているためである。
彼らに対するケアを可能とするためにも、時間をかけて対話することが必要となるのである。
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