(3)色々続き

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 アンネリから話を聞いた翌日も、俺自身はそれまでと変わらずに地脈探索の続きを行っていた。

 話をしたアンネリ自体が、そもそも愚痴のようなことを言いたかっただけらしく、話を終えた瞬間にはいつも通りの様子に戻っていた。

 それを見て、特に行動を変える必要はないかと考えたからということもある。

 それに『大樹の頂』のメンバーそれぞれに諜報部隊兼護衛を付けているのは変わらないので、あまり力づくでどうこうという事態が起こりづらいということもある。

 絡んできた相手のことはまだよくわかっていないけれど、次に同じようなことが起こればそこから尾行なりをして情報収集を行うことになっている。

 今の段階でも相手のことを調べることは出来なくもないが、ただ単に気まぐれのナンパだった可能性もなくはないので積極的に調べる予定はない。

 狙い撃ちしてくるようであれば何かしらの狙いがあることは確実になるので、そこからでも遅くはないだろうと判断してのことだ。

 もっともただのストーカー気質という可能性もなくはないのだけれど、そこはそれ、である。

 

 話は変わって地脈探索については、進んでいるともいえるし進んでいないともいえる状況になっている。

 以前、毛細血管のように細い地脈からより太い地脈にまで移動できたのは変わらず、そこから先はほとんど状況は変わっていない。

 感覚的な距離でいえば先に進んでいるのは間違いないけれど、その向かっている先が『中央』であるかは確証がない状態だったりする。

 向かうべき中央の方向が確実に分かっていれば断言もできるのだが、残念ながら全く分からない状態なので進んでいるのか離れていっているのかは実際に中央に着いてみないと分からないだろう。

 

 一つ確実に分かっていることは、細い地脈から太い地脈に出た時に流れている魔力の濃度が違っていることに気が付いたことだろうか。

 単純に太さが太くなっているから魔力が濃くなっているのは当然として、それ以外にも濃度自体が上がっているように感じている。

 それを確認するためにも何度か細い地脈と太い地脈を出入りしたので、間違いないと思う。

 そこから考えて魔力の濃度の濃い場所を目指せば、より中央に近づけるのではないかという予測を立てている。

 

 地脈探索については他プレイヤーも進めていて、様々な考察がされている。

 ただしそれについては、出来る限り触れないようにしている。

 そもそも俺がやっている魔力珠に精神を移してから探索をするという方法は、他プレイヤーがやっていない方法になる。

 元々の移動方法(?)が違っているので、同じように進めていくとどこかで齟齬が出るかもしれないとも考えている。

 

 それから地脈探索で今のところ一番驚いたのは、探索を終えたところから再開ができるということだった。

 何故そんなことができるようになっているのかは分からないけれど、探索を終えて次に再開するときには前に探索を終えたところからの再開になる。

 地脈探索が出来ている全てのプレイヤーが同じことが起こっているので、恐らく地脈で探索をしている魂が位置情報を記憶しているのではないかと言われている。

 実際のところは本当にそうなのかどうかはわかっていないのだけれど、途中から再開できるのだからと皆ありがたがって利用している。

 

 ちなみにこの探索地点の再開機能(?)は、初期位置から一定以上離れた場所まで行った時に発動するようで、一定範囲内をうろうろしているだけだと探索後の地点から再開とはならない。

 そんな状況になった時には、その日のスタート地点だった場所に戻されるようになっているらしい。

 折角最初のころに作った目印だったけれど、これらの機能によってほとんど意味をなさなくなってしまっている。

 ただ世界樹のある場所が地脈のどのあたりになるのか知るための目印としての機能は残っているので、そのままにしてある。

 

 そんな感じで今日も今日とて地脈をうろついてから拠点に戻ると、アンネリたちはまだ戻ってきていなかった。

 この日はダンジョン探索を予定していたはずなので、少し長引いているのかもしれない。

 そんなことを考えながら辺りを見回すと、すぐにこちらの様子に気付いたシルクが話しかけて来た。

 

「主様、戻ってきましたか」

「うん。何かあった?」

「あったと言えばあったのでしょうね。――ダンジョンから戻ってきたアンネリたちに、噂の集団が絡んできたようですわ」

「また? 昨日の今日じゃないか。――それはいいとして、その様子だと大したことにはなっていないみたいだね」

「はい。特に大きな騒動になることもなく。見た感じはごく普通のナンパという感じでしょうか」

「連日のナンパがごく普通かどうかは別にして……諜報部隊はつけられたんだよね?」

「問題ありませんわ。ただアンネリの予想通りに、ごく一部は裏がありそうです」

「それはまた。今はまだ深入りはしなくていいから。とりあえず情報だけは集めるようにしておいて」

「畏まりました」


 この場合の深入りというのは、あくまでも物理的な対処をしないという意味だ。

 情報収集をするという意味では、はっきりと背後を調べるまでとことん行うようにという指示を出している。

 ユグホウラが行う諜報は基本的に蜂や蜘蛛を使うので、人族だと気づかれ難い。

 ただし魔法的な技術を使われたりすると一定以上の能力を持つ人材が必要になるわけで、何でもかんでもすぐに集められるわけではない。

 これも情報を集める相手がどの程度の力を持っているのかによって変わって来るので、一つの目安にはなるのだけれど。

 

「それにしても裏、ねえ。アンネリ個人に対してのものなのか、それともパーティ単位に対してものなのか。それによって対処が変わって来るかな」

「そうですわね。それからまだ転移装置狙いということもあり得そうです」

「あらま。そこまで大きな組織が絡んでいるんだ」

「確定事項ではありませんが。当人たちはいいように動かされているだけというのは、ほぼ間違いないようですわ」


 アンネリたちに対するナンパが最終的に何の目的で動いているのか分からない以上、こちらは当たり前のようにナンパお断りという態度を貫くしかない。

 こちらが背後の組織なり個人なりがいることを掴んでいるということは、相手に知られてもいいことは何もない。

 しばらくの間は、あくまでも一般的な対処をしているだけだと見せかけるのが一番だろう。

 そのためにも諜報部隊が掴んでいる情報は、アンネリたちには知らせるつもりはない。

 もっともアンネリにしてもアイリにしても、こちらが何かしらの情報を掴んでいることは分かってしまうだろうけれど、敢えて聞いて来るようなことはしないはずだ。

 情報には知っているべきものと知らないままでいいものがあるということは、二人ともきちんと理解しているから問題はないと思う。

 

「ちなみに、絡んできている人たちの実力ってどうなの?」

「全く問題ありません。アンネリたちだけで抑えることが可能でしょう」

「それはまた。まさか当人たちはそれすらも知らずに絡んでいるなんてことは……そうなんだ」


 シルクの顔を見て現状を理解できたので、一気に興味が無くなってしまった。

 勿論裏からのサポートはしっかり続けるつもりだけれど、今の状況が続くようであれば彼女たちに任せてしまっても全く問題はないだろう。

 いざとなれば眷属たちも動いてくれるはずなので、わざわざ男の俺が介入して火に油を注ぐような真似をすることもない。

 ただしアンネリたちにとっては面倒事であることに違いはないので、戻ってきた時にはきちんとフォローはしておこうと思う。




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是非ともフォロー&評価よろしくお願いいたします。

m(__)m

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