(9)条件考察
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ホームに戻った俺は、早速事情を眷属に話して世界樹の麓に用意されている寝所へと向かった。
ここは世界樹の中に入るために用意されている専用の場所なので、長期間眠っていても問題にはならない。
寝ている間体の世話をさせることになる眷属たちには迷惑をかけることになるけれど、むしろ喜んでやってくれているところがあるのでいつも甘えさせてもらっている。
今回わざわざ世界樹を経由して地脈に向かうことにしたのは、そちらの方が体の負担が少ないと考えたためだ。
何度か幽体離脱を繰り返して気付いたことなのだが、世界樹を経由して地脈に向かうと何故か体の負担が少ないことが分かっていた。
正確な理由までは判明していないけれど、恐らく世界樹を経由していることで体と何かしらの繋がりが出来ているのではないかと予想している。
世界樹との繋がりが出来ていると、体の状態が健全なまま保たれるという寸法だ。
あくまでも推測であって絶対に正しいというわけではないのだけれど、その検証を知ったランカが何やら興味を持って調べているらしい。
俺が復活してからのランカは、どうやら治癒方面に興味を持ったらしく身体に何かあるたびに色々と聞かれたりしている。
そのお陰か聖属性も身に着けたようで、ドラゴンとして元々持っている魔力と合わせて最高の回復役になりつつあるそうだ。
世界樹の麓でいつものように魂だけで中に入った俺は、予定通りにそのままの状態で地脈へと向かった。
地脈と繋がっているガイアは、初回の時とは違って触れただけで話しかけて来ることはないけれど、こちらから話しかければきちんと応えてくれる。
「ガイア、聞こえているかな?」
「是」
「ちょっと質問があるので答えてもらえるかな?」
「内容次第」
これらのやり取りはいつも通りなので、特に気にすることもなく続けることにした。
ガイアは癖がある話し方なので、多少工夫をしないと意図した内容とは違った答えが返ってきたりする。
そのため事前に質問を考えておいたとしても、思惑とは違った方向に進みそうになることも多々ある。
それに加えて魂だけの状態でいるには時間制限があるので、あまり好きなように時間をかけられるわけではない。
それを加味したうえで質問をしていくと、ある程度知りたかった答えを得ることができた。
まず魂とマナの関係については、予想通り別物であることはわかった。
それから魂がマナの入れ物じゃないかという予想は、半分外れで半分当たっていたというところになる。
魂がマナを入れることができる器として機能していることは確かだが、別にマナを入れられるものは魂だけじゃないということだった。
そもそもマナは空中に漂っているということが分かっているので、ある意味では当然すぎる回答だろうか。
肝心のマナに対する五感を得ることについては、非常に微妙な回答が返ってきた。
ガイアから返ってきた答えが「可、不可。可」というものだったので、最初は何を言いたいのかすら意味が分からなかった。
ガイアの言い回しをよくよく考えてみると「可能ではあるが、不可能。でも可能(条件次第)」ということになる。
色々とこちらで付け足したりしているけれども、外れてはいないことはガイアに直接確認して分かった。
となると、あとはその言葉の意味をより深く考える必要がある。
後ろの条件次第というのは、その意味を考えた上での付け足しになる。
要するに条件が合わないと五感を得ることは不可能だということになるはずだ。
だがそれだけだと別に後ろの「可」は必要ないだろう。
それが引っかかったので改めてその意図を聞こうとしたところで、ふと気づいたことがあった。
「もしかして、俺は既に条件を満たしていたりするのかな?」
「是。当人次第」
「当人次第……ということは、俺自身でその条件に気付けるかどうかってことか。うーん……」
そこでしばらく考え込むことになった……のはいいのだけれど、既にそれなりの時間を話し続けていたのでここで時間切れが来てしまった。
気持ちとしてはまだ話したりなかったけれど、こればかりは仕方ない。
ガイアから聞いた意味を考える時間を得ることができたと考えることにして、素直に一度肉体に戻ることにした。
世界樹の麓にある寝所で体を起こしてから一度だけ大きく深呼吸をした。
特に肉体に疲れがあるというわけではないのだけれど、ガイアと話をするとどうしても気疲れしてしまうので気持ちをリセットするために行っているいつもの儀式になる。
それはいいとして、上半身だけを起こした状態のまま先ほど聞いた話をもう一度考え直してみることにした。
ガイア曰く、今の俺は既に『マナに対する五感を得る』ための条件を満たしているという。
その条件が何であるのか分からないと試すこともできない。
そもそも論として、以前ガイアにマナについて質問をしたときにはこんなにはっきりとした回答を得ることは出来なかった。
その時は五感云々を話に混ぜてなかったからとも取れるけれど、もしかすると条件を満たしていなかったからとも取れなくはない。
そう考えると前回と今回で違っていることが、その条件だと考えられる。
多少強引な考え方ではあるが、違っていたら違っていたでまた後から別の方法を考えればいいだけなので、今はそのまま考え続けることにした。
「――前回と今回で違うことか。思い当るとすれば魔力珠……いや。自力で作ってから一回は会っているかな。となると、やっぱり運営から話を聞いたことか、もしくは思念珠を作れるようになったことか」
そこまで考えたところで、運営から話を聞くというのは条件じゃないだろうと見当をつけた。
広場にいる運営はその時々で人員が変わっているし、なによりも『話を聞く』というあいまいな状態が条件になっているというのは考えづらい。
それなら『思念珠を作れるようになった』ということが条件だと考えたほうが、しっくりくる。
より正確にいえば、一部であれ魂をいれる器が作れる、もしくは用意することができること。
そしてその器に魂を入れることができるようになるということだろうか。
そこまで考えればガイアが言っていた『条件』がどんなものなのか、自ずと答えは出て来る。
「もしかすると地脈の中で思念珠を作れるようになっていないと駄目とかかな。魂の器があの場で作ることができれば、長時間いることもできそうだし」
地脈の中に長時間いることができないのが魂だけの状態でいるからで、魂を守るための器が必要になるということだろう。
考えてみれば、マナへの五感を得るために訓練が必要になるのであれば、魂が安定した状態になっている必要がある。
それなのに長時間いることができない不安定な状態だと、訓練もままならないということが考えられる。
一応筋の通った考え方ではあるので、一度試してみることにし……ようとしたところで、そもそも地脈から戻ってきたばかりだということを思いだした。
このまま無理をして地脈に戻ったとしても思念珠を作る前にまた戻ってこなければならなくなる可能性もあるので、大人しく間を置くことにした。
そして折角空いた時間なので、掲示板での考察がどこまで進んでいるのかを確認するためハウスに戻った。
その掲示板ではプレイヤーがそれぞれの世界のガイアに確認した内容が書かれていて、大筋ではこちらで聞いた内容とは変わりがなかった。
細かいところで違っているのは、もしかすると個人個人で身に着けている
それは納得できる考え方だったので、そのまま特に書き込みをすることなくまたホームへと戻ることにした。
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是非ともフォロー&評価よろしくお願いいたします。
m(__)m
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