(7)念押し
§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§
< Side:キラ >
一つ目の巨人を縛り上げたあとは、魔力を吸い取って十分な力を発揮できないようにしてから散々に痛めつけることにした。
魔力を吸い取るというのは、枝根動可で使えるオプション的な能力の一つになる。
もともと土壌から養分やら水を吸い取る能力がある植物だからこそできること……だと思う。
それ以外にもオプション的な能力はあるけれど、今は関係ないので横に置いておく。
ちなみに巨人を痛めつけたといってもグロテスクな展開にしたわけではなく、ハリセン的なものを用意してペチンペチンと殴っておいただけである。
最初はビンタのようにやろうかとも考えていたのだけれど、こちらへのダメージ(主に手のひら)が大きくなりそうなので止めておいた。
魔力を吸い取りつつお仕置きをしていると、結果的に魔力が生存に必要最低限というくらいにまで下がってこちらの役目は終わりとなった。
その時には既に一つ目の巨人は気を失っていたので、ギャーギャー騒がれることもなく晴れて医務室送りということに。
その後のメンタル的な処置なんかはルファがやる事なので、こちらの役目としては完全終了となった。
その証拠に、闘技場内で様子を伺っていたルファが近寄ってこう言ってきた。
「――お疲れ様。これでどうにかなりそうじゃ」
「そう? それなら良かったよ」
「プライドだけは高そうでしたからねぇ。これだけの衆人環視がある中でペシンペシンとやられたとなると、かなりの精神的ダメージでしょう」
そう言ってクスクスと笑いながら近寄ってきたのは、領域から出ることができないタマモに変わって来ているイチエだ。
そのイチエに対してシルクが鋭い視線を飛ばしているのはいつものことなので、気にすることはしない。
「報酬は追って連絡をしよう」
「いつもダンジョンを騒がせているから気にしなくてもいい……と言いたいところだけれど、そっちが気にするか」
「うむ。第五十層程度だとこちらも痛手にはならぬからな。正直好きにしてくれとしか言えぬ。というわけで、報酬はしっかりと用意する」
「……まあ、いいか。期待して待っているよ」
「任せよ。――イチエ殿には……いらぬか。キラに余計な負担を押し付けたのはそちらの責任であるしの」
「あら。そういうことを言ってもいいのかしら……と言いたいけれど、今回に限っていえばそのとおりですね。こちらはこちらで謝礼を用意しておりますので、お気になさらず」
「それはそれで怖いなあ」
ヒノモトに名の知れたタマモとルファの用意する謝礼というのが、人族の枠から外れたものになるのは間違いない。
ユグホウラであれば十分に使いこなせるものではあるのだろうが、問題は今の身の丈に合ったものになるかは微妙なところだろう。
もっとも、既に人前で実力を示してしまったので今更トモエいなくもないけれど。
タイミング的にはそろそろいいかと考えているので、折角貰えるものは貰っておくことにする。
「あ、そういえば、あの人たちはいつ返すのかな?」
一部の見学者席を陣取っている御家の面々を見て、担当者であるイチエに聞いてみた。
「もう見せるべきものは終えたので、いつでも返せますが?」
「それならもう少しだけ待ってもらえるかな? ちょっとだけ話をしたい」
「よろしいのですか? 色々と面倒だと思いますが?」
「確かにそうなんだけれど、全員揃っているうちに終わらせておいたほうがいいかなってね」
その言葉でこちらの目的を理解できたのか、イチエはすぐに頷いてくれた。
それだけではなく、折角なので改めて場を設けようかとまで言ってくれたけれど、それはそれでやりすぎな気がしたので辞退しておいた。
どうせ話すことはこちらから一方的にならざるを得ないので、変に畏まった場を設けると勘違いされかねない。
威圧なりを使って抑え込む方法もないわけではないけれど、どうせだったら力技ではなく言葉で伝えるべきことは伝えておきたい。
ルファとイチエとだけ話すようなことは終わったので、そのままルファと分かれて見学者席へ。
実は御家当主たちがいた見学者席(特別)とは別にダンジョンの多くの魔物たちが別の席に座っていたが、ここからは見えないようになっている。
いくら安全だと説明されていても、多くの魔物に囲まれていると分かると何をするのか分からないからという理由からだ。
いきなり錯乱したりすることはないだろうけれど、余計な騒ぎを起こさないとも限らない。
――というわけで、シルクと一緒に観客席へ向かった。
部屋に入るなり一斉に注目を浴びて、腰が引けそうになったけれどそこは我慢しておいた。
話を切り出す前にアンネリとアイリの顔を伺ってみたが、いつもと変わらない様子だったので事前に話し合っておいた予想を超えていないと判断。
このまま予定したとおりの話をしても問題ないと分かったので、軽く頭を下げてから話を切り出した。
「ご当主の皆様方、私のためにお集まりいただきありがとうございます。戦いの前にご挨拶をとも考えましたが、後になったことをお詫び申し上げます」
戦いの前に会って色々と問い詰められるのが面倒だったというのもあるけれど、先に実力を示しておいたほうが面倒がないと考えたことは口にしない。
「不肖ながら、今ご覧いただいた通り私は魔物を相手に戦う冒険者をしております。ですが今のところ個人的な指名依頼は受け付けておりませんのでご了承いただければ幸いです。ギルドを通して依頼されても受けない可能性が高いことをご理解いただければと思います」
その言葉にお歴々の幾人かが顔色を変えていたので、既にどの依頼をすべきかを検討していたことが予想できた。
ほんの数秒ほどの時間を空けて、護衛代わりに連れて来たと思われる側近の一人が問いかけて来た。
「――それは、ギルド内での評価が下がると分かっていてもか?」
「私自身はギルドのランクはあまりこだわっておりませんからね。クランについてもお蔭さまで運営資金に困ることはありませんから」
言外にユグホウラとの直接取引があるからということを含めて言うと、ヒノモト側の方々はしっかりと理解してくれたようだった。
「ただ一応誤解の無いように言っておきますが、私個人とパーティ単位での指名依頼を受け付けないというだけであってクランへの依頼は受けることはあるでしょうね。場所はマキムクとヘディンに限られますが」
「ヘディン?」
「シーオのノスフィン王国にあるダンジョンです。あそこにいる彼らの活動拠点になります。今はマキムクで活動をしていますが」
「ふむ。なるほど」
そう言って頷いていたのは一人の当主だったが、他の面々も何やら考えるような顔になっていた。
今までの話でこちらが何を言いたいのかは理解してくれているはずだ。
クラン単位で依頼をしてくれれば、ダンジョンで取れる素材の採取だったり、魔物一体の丸々確保だったりの依頼は受けると言っているのだ。
個人で依頼をせずともクランを通して繋がりを得られるのであれば、そちらを経由してでも絆を深めておきたいと考える人が出るのは当然だろうしそれを狙って話してもいる。
今はあくまでもクラン単位での成長というのが第一目標なので、クランに対する依頼は有難く受け付けている。
それに御家の当主たちにとってもヒノモトでは手に入りにくいシーオの素材が手に入ることは、決して悪い取引ではないはずだ。
そのことを十分に理解したうえで依頼をしてくれれば、こちらとしては何の問題もない。
あとは各々の当主方がどう考えるかになるけれど、それは今後の展開次第といったところだろう。
§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§
是非ともフォロー&評価よろしくお願いいたします。
m(__)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます