(8)合同探索③

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 オトとクファのことについては先延ばしにすることになったのは、この先の彼らの人生に関わることになりかねないこととしっかりと調べるには時間がかかるからだ。

 二人がどの道に進むとしても、今やっているサポーターとしての訓練はやっておいた方が良い。

 というわけで緑の光が見えることに関しては適当に誤魔化しておいて、予定通りに合同探索を続けることになった。

 他の子たちの訓練も必要なので、オトとクファのことばかりに時間をかけていられないという事情もある。

 カールたちによるサポーターの訓練は、俺たちにとってもためになることばかりなので一緒に講習を受ける感じで話を聞かせてもらっている。

 特に各魔物によってバラバラな位置にある魔石の取り方なんかは、聞いたことのないコツやなんかを含めて色々とためになる話を聞けた。

 一周目の時は沢山の魔物を倒していたが、眷属任せで自分で魔石を採取するなんてことはしてこなかったので経験値はほとんどないに等しいからね。

 それにしてもカールたちの行動や話を聞いていて益々サポーターの重要性に気付いたわけだが、何故あまり人気がないのか不思議になってくる。

 

 サポーターの不人気はともかくとして、探索中に教わっている色々に対してそろそろ何かお返しをしたいと考えている。

 ……のだが、何気なく食事の最中にそのことをポロリと漏らすと、カールとラウが顔を見合わせながら笑っていた。

「何を言っているんだ。この食事だってそうだが、十分礼はされているぜ?」

「そうそう。何よりもここまで順調に探索と訓練が進むと思わなかった。もう冒険者なのにしっかりと話を聞くあんたがいてくれるお陰で、子供たちがしっかり話を聞いてくれるからな」

 カールとラウは時間を見つけては子供たちのサポーター訓練をやっているが、普段は「サポーターなんて」と考えて真面目に話を聞かない子が一人は出て来るらしい。

 それが今回は、既に冒険者としてやっている俺が真面目に話を聞いていることで、子供たちのやる気が普段と比べて違っているそうだ。

「俺たちはもともとこの町で育った孤児だからなあ。外から来たキラが真面目に話を聞くだけでここまで効果があると思わなかったよ」

「そうなんだ。多少なりとも役に立って良かったよ。……それでもなあ。足りているとは思えないんだけれど……」

 最後にそう付け加えると、カールたちはまだ言うかという顔になっていた。

 

 恩の押し売りをするつもりはないが、気持ち的な問題で引っかかっているので仕方ない。

 そんな俺にちょうどいいタイミングで助言をしてくれたのは、やはりというべきかアンネリだった。

「技術的なことを教わっているのだから、こちらも同じようなものを教えたらどう?」

「なるほど。……といっても技術的なことか。うーん。どうしたもんか」

「おいおい。さすがにそれはもらい過ぎじゃないか? 俺たちみたいに独り立ちしたら技術的な助言は、師匠とかがいない限りは金でもらうのが普通だぜ?」

「それを言ったらこっちも同じだよ。――あっ、そうか。一つ思いついたかもしれないな」

 アンネリの言葉にしばらく考えていた俺は、近接戦闘を行う冒険者にとってちょうどいい技術的なことを思い出した。

 

「ちょっと確認だけれど、身体強化って意識して使えてる?」

「身体強化って魔力を使ってのか? んなもん、魔法がからっきしの俺が使えるはずがないだろ?」

「俺も同じだな」

 カールとラウは、どちらも同じような顔になって出来るわけがないと首を振っていた。

 もっともこれは、俺から言わせれば二人の勘違い――というか知識不足で使気付いていないだけだったりする。

「やっぱりね。多分無意識なんだろうけれど、俺が見た感じだと二人とも魔力操作使っている時があるよ?」

「「……は?」」

 二人揃っての驚愕にやっぱりかと納得した。

 

「とはいえいきなりそんなことを言われても分からないか。うーん、そうだなあ。普段剣を使っている時に、絶対上手く切れないはずなのに妙にさっくりと相手を倒せる時ってない?」

「それはまあ。これだけ剣を振っていれば一度や二度どころじゃなく経験することだろ?」

「だよな。上手く行くはずないのに綺麗に切れたりするから妙に気持ち悪かったりするんだが……って、まさか!?」

「ラウの想像通りだと思うよ。恐らくそれ身体強化を使って相手を切っているから上手く行ったりしているはず。その時のことを思い出して剣を振って行けば、その内意識しなくても使えるようになるんじゃないかな」

「う、嘘だろ。あれが身体強化だとは思わなかった」


 そう言葉に出したのはカールだったが、ラウも同じようにびっくりした顔をしている。

 何故二人がこうも驚いているのかというと、近接戦闘を行う冒険者にとって身体強化を使えることは一つの大きな壁と言えるからだ。

 身体強化が上手く使いこなせるようになると冒険者ランクでいえばBランクの上位、あるいはAランクさえも見えて来る。

 逆にいえば、身体強化を使えなければそこに到達するのは難しいとも言えるだろう。

 俺からすれば身体強化が使えないのに今のランクにいる二人が凄すぎるのだが、周囲に使える冒険者が少ないことからそれが当たり前という感覚になっているのだろう。

 もし自在に身体強化が使えるようになれば、二人の技術から言ってもランクを上げることも夢ではないだろう。

 

 身体強化のちょっとした助言を聞いたカールとラウの二人は、食事もそこそこに剣を持って少し離れた場所へと行ってしまった。

 どうやら聞いた話をもとに、身体強化が使えるようになるかを確認したいようだ。

 さすがに剣のことはあまり詳しくはないので、これ以上はあまり助言できることもない。

 今の話も以前掲示板で見た内容を、そのまま受け売りで話しただけだったりする。

 

 それでも身体強化が使えるようになるかもしれないという事実は驚きだったようで、カールとラウが子供のように剣を振っている姿が確認できた。

 その様子を笑いながら見ていると、ふとエルゼが何か言いたげな表情でこちらを見ていることに気付いた。

「…………ねえねえ。魔法使いには何かアドバイスはないの?」

「あるにはあるけれどねえ」

「教えて! 近接戦闘ばっかりずるい! 教えて!」

 食い気味に顔を寄せて来るエルゼに、思わず腰が引けてしまった。

「わかった。わかったから。といってもそんなに難しい話じゃないんだけれどね。――ちゃんと毎日魔力操作の訓練はしてる?」

「魔力操作……? え、えへ?」

「これだからもう。魔力操作は魔法を扱う上で基本中の基本だよ。どんなに能力が上がっても魔力操作の訓練だけはさぼっちゃダメだから」


 魔法を使えるようになればなるほどより上位の魔法を習得することに夢中になってしまって、意外と訓練をさぼりがちになるのか魔力操作だ。

 プレイヤーの間では、昔から何があっても魔力操作の訓練だけはさぼっては駄目だと言われている。

 これは多分に俺の影響があると事あるごとに言われているが、魔力操作が魔法を扱う上で及ぼす影響を考えれば俺のせいにされても全く問題はない。

 むしろどんなに揶揄されることになっても構わないので、魔法使い系の職にいる限りは何を置いても魔力操作の訓練はするように言い続けたいところだ。

 

 その意図が伝わったのか、割と軽い調子で言ったのにも関わらずエルゼは何かを考えるかのように黙ってしまった。

 よくよく見れば魔力を感じ取るような仕草をしていたので、早速魔力操作の訓練を試しているのだろう。

 なんだかんだで急がば回れではないが、地道な訓練が上達の一番の近道ということなんだと思う。




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m(__)m

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