『木の人』による異世界の歩き方 ~二周目~

早秋

プロローグ

※本作は「『木の人』による異世界の歩き方」の続編になります。

 まずはそちらをお読みいただくようお勧めいたします。


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 多くの世界を所持(維持?)していると思われる『運営』によって誘われた世界は、ゲームの世界だった。

 そんな運営に俺たちのようなプレイヤーが異世界に導かれた理由は、運営の一番トップと思われる上司と呼ばれている存在(人かどうかもわからない)の趣味のためだと最初から公言されていた。

 そもそも俺たちプレイヤーが地球から見ての異世界に招かれる前から運営が公言していたので、疑う余地などないだろう。

 他人の趣味のために人生を決められるのはたまらん! ――と内心で思っているプレイヤーもいるだろうが、少なくとも全員がそれを了承した上で生きているはず。

 少なくとも俺自身は、上司の趣味だろうが何だろうがせっかくの異世界生活を楽しみたいと考えている。

 俺が新たに人生を送ることになった世界は、ステータスやらスキルがあるまさしく異世界ファンタジーといった感じの世界だ。

 そこで『木の人』と呼ばれながら生きていくことになるのだが、何故木の人なのかといえば転生した先が世界樹だったからだ。

 正確にいえば世界樹の精霊や妖精として生きていたので世界樹そのものかといわれると怪しいのだが、そのあたりのことは俺自身もよくわかっていない。

 

 そして今現在俺が何をしているかといえば、プレイヤー一人一人に割り当てられている『ハウス』で最初の頃から備え付けられてあった端末を覗いていた。

 その端末では他のプレイヤーとの会話ができる掲示板やショップ機能が使えるようになっていて、特に情報収集の面においては大変重要な役目を担っている。

 最初の頃はショップ機能も便利に利用されていたのだが、今はプレイヤー同士が直接やりとりできる場所である『広場』があるので当初ほどは利用されていない。

 とはいえ端末のショップは普通のお店と同じように店員がいなければならないわけではないので、いつでも利用できるネットショップ的な立ち位置で今も活躍している。

 

 プレイヤーだけが存在できるハウスと異世界は、基本的に自由に行き来することができる。

 この「基本的に」というのは、異世界からハウスに来ている間、異世界にあるプレイヤーの体は眠ったような状態になるため、タイミングを間違うと変人だと思われかねないという事情があるためだ。

 ハウスに来るために町のど真ん中でいきなり眠ってしまって後でどう言われても構わないというのであれば、いつでも好きなタイミングでハウスに来ることはできる。

 俺自身は、そんなことをするつもりは全くないけれどね!

 

 ちなみに一周目が世界樹の妖精だった俺は、いきなり消えたとしても周囲から特に何も言われたりはしなかった。

 あくまでも本体は世界樹だということは皆が理解していたので、世界樹から見れば分体である妖精が消えたところで何の不思議もないと思われていた。

 といってもそれは最初のころだけで、俺が特殊な立場であるプレイヤーでありハウスという空間に出入りしていることもすぐに理解された。

 そのお陰で好きなようにに異世界とハウスの間を行き来できていたのは、他のプレイヤーに比べてもありがたかった。

 

 話は変わって、先ほど『一周目』と言ったのは、すでに異世界における世界樹の妖精としての生を終えているからだ。

 その一周目が終わってしまった理由は、不意打ちを喰らったとか予想外の状態になってしまったとか言い訳は色々とあるが、最終的には自分自身で妖精としての生を終わらせることを決めたからだ。

 そのせいで色々と仲間たちには迷惑をかけることになってしまったが、俺自身は妖精としての生を終わらせたことに後悔はしていない。

 それよりも、これから始まるはずの『二周目』の人生を楽しみにしていた。

 

 別に一周目の人生を投げたわけではないのだが、それ以上に二周目に期待している。

 というのも俺も含めた他のプレイヤーは、いい意味でも悪い意味でも安定期に入ったというか、あまり大きな進展がなかったということがある。

 それならば折角の機会なので、一周目を終わらせて二周目の人生を楽しもうと決めたのだ。

 それが正しいことなのかはわからないが、これから先の人生でそれが決まるはずだ。

 

 ――と、今はこんなことを考えているが、実はつい先ほどまではハウスに用意してあるゲームなんかで遊びまくっていた。

 何気に一周目は忙しく過ごしていたので、二周目を始める前にのんびり寛ごうと考えていたためだ。

 そんなのんべんだらりとした生活もひと月も過ぎれば飽きてしまって、こうして二周目をはじめようとしているわけだ。

 一度終えている異世界での生活が楽しいと思えるのは、やはり一周目の人生が充実していたからだろう。

 

 というわけで、今は二周目の人生を始めるために端末に向かっている。

 一周目を始めるときにはそれこそ異世界ファンタジーからSF的な世界まで様々な世界から選択できたが、二周目以降は一周目と同じ世界で生きていくことが他のプレイヤーの経験からわかっている。

 それでも職業やらスキルやらは自分で決めることができるようにはなっているのだが、ここでは『運営おすすめ』を選ぶと決めていた。

 これにはきちんとした理由があって、一周目も同じくお勧めを選んだからというのもあるのだが、それ以外にもプレイヤー間の検証で『運営おすすめ』を選んだほうが活躍しやすいという結果が出ているためだ。

 

 人外の選択肢もある異世界で活躍とは何ぞやという問題はあるのだが、ここでは「変な事象に巻き込まれずに生き続けることが出来る」と定義されている。

 なんとも曖昧な言い分だが、単に戦闘職や生産職だけではなく、人外プレイヤーまで存在している以上は何が活躍かと決めるのは難しい。

 当初は運営に流されているだけじゃないかという声もあったのだが、今ではほとんどのプレイヤーが『運営のおすすめ』を選んで異世界生活をしているはずだ。

 とはいえこれが当てはまるのは俺がいるサーバーだけで、他のサーバーでどういう評価がされているかは分からない。

 他のサーバーがあることはわかっていてもそこではどんな会話がされているのか知る手段はないので、知るすべがないためだ。

 

 俺は俺がいるサーバーの評価に頼って、二周目もおすすめを選択することにしていた。

 もっとも一周目のおすすめされた職業も上手く行っていたので、敢えて別のものを選ぶという選択肢はないとも考えている。

 今のところ定番ファンタジーの世界でどうしてもやりたい職業がない――というよりもやりたいことが多すぎて選べないので、運営にお任せするのがいいという優柔不断的な考えもあるのだが。

 とにかく二周目も『運営のおすすめ』を選ぶことは、一周目を終える前から決めていたことだ。

 

 ついでにいえば、『運営のおすすめ』を選ぶとなにで始まるか分からないというワクワク感があるのもいい。

 特に二周目は始まる世界は異世界ファンタジー系だと決まっているので、ある程度の範囲内で収まることが分かっていることもいいことの一つだ。

 これでいきなり宇宙のど真ん中にある宇宙船にぽつんと置き去りにされていたとなると、何をしていいのかわからずに困ったことになってしまう。

 ……それはそれで少し楽しいかも知れないと思う自分もいるのだが。

 

 それはそれとして、今は二周目の人生を始めるために先ほどから端末の画面内で自己主張激しく点滅している『運営のおすすめ』にカーソルを持って行った。

 これをクリックすれば新しい人生が始まるわけで、若干の緊張もあってほんの少しだけ手が震えてしまった。

 それを抑え込んでクリックをした次の瞬間、俺は新しい人生を始まるべく新しい土地と体を手に入れてその地に降り立っていた。

 

 ――いざ第二の人生スタート!




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※お待たせいたしました。

 二周目の更新を再開いたします。


是非ともフォロー&評価よろしくお願いいたします。

m(__)m

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