第5話 旅立ち前夜
遺跡へと旅立つ前夜のことだ。
わたしは下宿先のボロアパートで、人形たちの整備をしていた。
「これから長丁場だから、整備はきちんとやらないとね。」
「ロボボ~―!」
「こら、ロボ美!動かないの!」
わたしは暴れるロボ美を押さえつけ、ボディの汚れを拭き取っていく。
さらに、ロボ美の関節部のボルトの締め付けを確かめ、グリスを塗る。
ロケットパンチの発射機構も確認。これもよし。
「一応、魂石の様子も見ておこうかしら。」
わたしはロボ美の胴体部のカバーを開け、中から赤く光る宝石を取り出した。
天井で明滅するライトに照らし出され、手の中の宝石が怪しく光る。
この宝石こそが、人形たちの心臓部。
彼女たちの魂が封じられた神秘の魔石である。
この石がなければ、人形たちは動くことも考えることもできないのだ。
懐から取り出したルーペを使い、魂石に傷がついていないか確認する。
「うん、傷一つついてない。きれいなものね。」
まぁ、そう簡単に壊れるものでもないけど。
ロボ美の胴体に魂石を戻し、カバーを閉める。
仕上げにボディにワックスを塗り、これでロボ美の整備は完了だ。
「キレイになったロボ~♡」
「ロボ美、ワックス塗ったばかりなんだから、しばらくじっとしてなさい!」
次はレオナの整備だ。
背中のチャックを開いて魂石を取り出し、傷がないか確認する。
これもよし。
腕部の爪伸縮機構のチェック。
これも問題なし。
次にボディに傷やほつれがないか確認。
右足の付け根が少し破れていたので、修繕する。
綿の交換はまだ先でいいだろう。
最後に魂石を戻し、チャックを閉めて終了。
「レオナ、もういいわよ。」
「あぉぉ~~ん。」
レオナは大きなあくびをすると、お気に入りの毛布に潜り込み眠ってしまった。
同じような要領でステラの整備もすませる。
すべての人形の整備が終わった時にはすでに深夜になっていた。
「あ~、疲れた。わたしももう寝ようかな?」
明日の馬車の出発は早い。
夜更かしはやめてもう寝たほうがいいだろう。
「みんなおやすみ。」
「おやすみますたー。」
「おやすみロボ。」
「ZZZZZZZZ」
人形たちに挨拶をすませると、目覚まし時計をセットし、ベッドに潜り込んで目を閉じる。
眠りに落ちながら薄まる意識の中で、明日は大変な一日になりそうだなと、ふと思った。
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