2021/07/19「5の2」

朝起きると、小学生になっていた。

小学生の時の記憶というわけではない。

別にタイムスリップしたわけでもない。

だってこれは夢なのだから。


それが分かったのは通学路。

真夏の夜の夢には不釣りあいな雪が降っていた。


雪の中を歩く音しか聞こえない。

気付くと、小学校に到着していた。

湿っぽい靴を下駄箱に入れて、上履きに履き替える。


階段を登って3階へ。

授業中の教室に忍び込む。

その教室が「5の2」


先生は僕が教室に潜り込んだことに気づいたのか気づかないのか。

気にしない様子で、授業を進める。


国語の授業だった。

順番に生徒が教科書を朗読する、よくあるヤツだ。

だが、僕は教科書を持っていない。

代わりに、なぜか横光三国志を机の上に広げていた。


仕方ないので読むしかない。

「げっ! 関羽!」


当然先生に怒られるだろうと思ったが、先生は何やら戸惑っている様子。

そして教室に備え付けられた電話で誰かと話し始めた。

他の生徒たちは、僕の顔を見て、互いにひそひそと話し始めた。


どうやら、僕が本当の小学生ではないことがバレてしまったらしい。

教室から逃げるように走り出す。

追ってくる人は誰もいない。


教室を飛び出て、1階にある保健室に身を隠す。

保健の先生がいないのが、なぜかわかった。

かわりに、一人の女の子がベッドで横になっていた。

女の子は、幼くて華奢で、儚そうな白い肌だ。

よく見るとなぜか裸で眠っているようだ。


僕は、何をするでもなくその子を眺めていた。

すると、女の子は目を閉じたままニコリと笑い、僕に手招きした。

僕は近寄ると、女の子の白い手が僕の陰茎を優しく包み込む。

女の子の手が冷たいと感じるのは、僕の陰茎がアツくなっているからだろう。


僕もベッドで横になり、女の子に弄ばれる。

幼く見えたが、背丈は小学生の僕とそう変わらなかった。

女の子が僕に覆いかぶさるように、僕の背中に女の子の胸が当たる。

女の子の手は、僕の陰茎から手を離すことはなく、一定のリズムで刺激を与え続ける。

「いいよ、だして」

そう聞こえた瞬間、激しい射精感に襲われて、僕の夢は灰色に濁り出した。

快楽に耐えきれず、僕は目をつむる。


目を開けると、学校の屋上にいて、まだ雪が降っていた。

冷たくない雪が、僕に降り注いでいた。

僕は、もう一度目を閉じることにした。

次開くときは、真夏の朝になることを信じて。



余談。

起きた時、夢精したんじゃないかと不安になったが、そんなことはなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る