第17話 セロー250

「で、どうするのよ?」

北極姫が早く選べと急かしてくる。

「うーん、やっぱり‥」

「どっちにするんですか?」

小鳥遊さんも北極姫よりも少し優しい口調で急かしてくる。そんなに早く決められませんよ。とちゃかしたくなる。

「おら!とっとと選ばんかい!童貞大学生!」

「ウルセェ!言われなくとも選んどるわ!あと、童貞大学生なんてフレーズを女子の前で使うな!」

「女もバイクも早く選ばないから何もできないんだっよ。人生は短いんだから即決で即実行で生きていけよな」

「何も考えずに突っ走るのをかっこいいと思うのは、アメリカの嫌いな所だね。日本人のように熟考して計画を練ってから動くのがカッコいいと俺は思うけどね」

「ふん、そんなことだからチャンスが来てもすぐに動けないんだよ。ほんとに日本人は、自分の感覚というのを大事にしないよな。そんなことだと一生フィアンセなんて手に入らないぜ、チェリーボーイさんよ」

久しぶりに会ったボブ・ゴンザレスは、相変わらず俺に対してデリカシーが無かった。相変わらずのその筋肉隆々の肉体とパツパツのT―シャツが威圧感を放っている。

「まぁ、いいや。初めてのバイクは誰でも悩むよな。でも、早く決めろよ。連れの二人が先に帰りそうになっているぞ」

「いや、あの二人が悩みの元凶なんですけど!」


俺は一昨日、自動普通二輪の免許を小鳥遊さんと同時に取得した。そして、今日正式に自分が乗るバイクを選びにまたバイクショップ『金剛力士』までやってきた。相変わらずダサい名前だ。前回と違うのは、北極姫と一緒に小鳥遊さんがついてきているということだ。

二人は、俺に対して勧めてくるバイクが全然違うのだ。

北極姫は、俺に対して前回見て良いと言ったKAWASAKIの『250T R』に乗るのがいいんじゃないかと言った。

「250T Rが良いと思うわ。やっぱり何と言っても男は、KAWASAKIよ!その系譜を踏むこのバイクが私は大好きよ!あと、真面目な話このバイクは、足つきが良くて初心者でも乗りやすくて、どんなシチュエーションでも様になって乗れるから初めて買うバイクとしては、大正解だと思うわ。色々なシチュエーション似合うということは、それだけ遊びの幅があって飽きなく乗れると思うのよ。だから、もうこのバイクで決定よね!あと、私のninjaと同じ会社というのも良いポイントよ」

以上が北極姫がこのバイクを推す理由である。所々、主観的な部分もあるが真面目な部分は、腑に落ちて『なるほど』となるような主張になっていた。

一方の小鳥遊さんは、『金剛力士』にある別のバイクを俺に勧めてきた。

「私が兎和さんに良いと思うバイクは、このYAMAHAの『セロー250』です。セロー250は、YAMAHAが販売している250ccの本格オフロードが楽しめるバイクです」

「オフロード車なの?」

「そうです!その証拠にフロント部分がアップフェンダーになっていますよね。所謂、砂利道や泥濘んでいる道を走るオフロード車は、そうなっているんですよ」

「それなら、250T Rもそうなっていないか?」

「あれは、なんちゃってのオフ車ですからね。本格オフロードには負けると思います」

北極姫の方を見て「そうなの?」て目で合図を出してみる。『うん』と少し悔しそうに頷いた。

「このバイクを推す理由は、何個かあるんですけど、やっぱり見た目がいいことを第一に挙げたいと思います!こういったオフ車は、仮面ライダーも乗っているほど、その機動性に優れていて、見た目もかっこいいので男の人が乗るとすっごくかっこよくなると思いますよ。そして、セローは取り回しが簡単で普段使いもツーリングもし易く燃費も良くとっても初心者に優しいバイクなんですよ。オフでもオンでもどんな道でも走れて楽しませてくれて、見た目もカッコよく独特な存在感を放つ唯一無二のYAMAHAが誇る名品を選ぶのが大正解だと思います!あと、私が乗るS R400と同じ会社というのも最高だと思います!」

どうしよう、普段とは違いどちらの意見もちゃんとしている。

「さぁ!どっちにするんですか!」と二人は、俺に迫ってくる。

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