375.グレイ中植物と過去最高に呆れたお顔
「僕のグレイ
そう、苔の間になかなかファンキーな形のお目当ての食虫植物様発見!
思わず叫んじゃうよね!
何だろう····あっちの世界で有名な宇宙人、グレイの顔の形をしてて、どこぞのSF映画みたいに真ん中から縦にパカッて割れてる所に虫が入ると閉じるんだ。
名前は別にあるんだけど、やっぱりここは宇宙人のグレイから命名だよね。
僕もグレインビルだし、お揃いだ!
周囲をキョロキョロすれば、1メートルくらい下に畳で3畳分くらいの広さの苔畑。
その隙間にすましたお顔や今にもパクッとしそうなお顔でたたずむ小さな
ファンタジー、ううん、SF映画の世界!
天井はここより2メートルくらい上にある。
対面の壁にはここと同じくらいの高さに、人の姿の僕がぎりぎり立って歩いて抜けられそうな半円状の穴が空いてて、奥に続いてる。
風はそこから流れてるみたい。
少しずつ明かりが小さくなっていく苔畑を暫く観察してから、ピョンと飛び降りる。
地面は割りと硬いんだろうけど、苔が良いクッションになってくれて足も痛くない。
グレイに近づいてツンツン。
あ、パカッてしてたのが閉じた!
目みたいな模様もついてて正にグレイ!
可愛いね!
思ってたよりも小さいから、ムササビハンドで根っこを傷つけないように掘り返す。
手をパンパンして巾着から少し前に収納しておいた魔光苔の袋を取り出し、ここの苔もついでに追加してグレイ達と一緒にもう1度収納し直した。
そして意気揚々と風の流れる方へ向かってこの場を後にする。
暫く進めば風が少しずつ強くなってきて、僕のお髭がふわふわ揺れる。
あ、光が見えた。
多分外の光かな?
魔光苔の光とはまた違う、天然由来の自然光だ。
暗がりに慣れていた目をちょっとずつ慣らしながら進めば、やがて
「え、崖なの····」
そう、ここは断崖絶壁の中腹くらいにできた狭小な足場だった。
まあ狭小っていっても僕と家族の誰か1人くらいなら寝転がって日光浴できるくらいのスペースはあるんだけど。
上を見上げても、左右をキョロキョロしても、岩壁。
きっと上の岩壁がたまたま崩れて、ここがせり出したように見えてるだけで、元は岩壁に空いた穴だったんじゃないかな?
「ん?」
不意に声が聴こえてきて足場から身を乗り出す。
「お嬢様ー!」
「ニーアー!」
斜め下に僕のできる専属侍女の····。
ハッ、マズイ!!
僕がうろちょろしてたのが····。
「何をしているんですか!」
うん、バレた····それに怒ってる。
比較的無表情なんだけど、あれは比較的、そこそこに怒ってる時のお顔だ····。
「えーっと····何か色々あったのー!
あとチンピラ王子と子分と········あと何か良くないのがいるー!」
「何ですか、それは!
そもそもアンタ裸で何やってるんですかー!!」
そういえば裸だった!
ああ、確実にお説教時間が延長される!
それくらいには怒りが増し増しになっていってるぞ?!
ニーアにアンタなんて呼ばれたのはセバスチャンの侍女教育終了以来じゃないかな?!
よし、ひとまずムササビのつぶらな瞳ともふもふの毛皮でニーアの怒りを鎮めよう。
暫くは白いむくむくで過ごさないと、いつまででも怒られそうだ。
「そっち行くから、待っててー!」
「ちょっ、お待ち····ああ?!」
珍しくニーアが慌てているけど、そんなの関係ない。
さっさと怒りを鎮めないと僕が困る。
助走をつけて足場を蹴って飛び降りる。
四肢を大の字にして飛膜を広げれば良い感じに風に乗れた。
それはそうだよね。
ニーアは風の魔法も得意だもの。
ちゃんと自分の方に風で引き寄せてくれ····。
ガシッ。
ん?
何かそんな感じの衝撃が体に····。
「チッ、だから待てと言ったのに!!」
「へ?!」
ニーアの舌打ち混じりの雄叫びと僕の間抜けな声が重なるけど、僕の体はバサッバサッという音と共にどうしてか上昇?!
何が起こったの?!
ニーアが魔法で小さめの火球を僕の上に向かって投げつける。
ポヒュン。
あ、絶対ガード君(改)が····。
消えた火球を目で追ってみれば、斜め上でバサバサ羽ばたいている黒く艶のある羽。
ムササビの僕からすると大きくて尖った
「嘘でしょ?!
何でこうなるのぉー?!」
「ア〜ホ〜!
ア〜ホ〜!」
思わず叫んだ僕を嘲笑うかのようにあちらの世界でいうところの········カラスが鳴いた。
ちなみにこの世界のカラスはあちらの2倍くらい大きい。
ニーアの姿がどんどん遠ざかる。
絶対ガード君(改)が守ってしまってる以上、ニーアにもどうしようもない。
あ、ニーアってばそのまま崖から飛び降りた。
きっと僕を追いかける為だ。
指笛が微かに聴こえたから、お馬の次女とはすぐに合流できるはず。
少し前に僕があんなにも怒ったのに、また危ない事した?!
けどまあ、僕を抱えてるわけじゃないからそこは心配ない····そもそも今の僕に怒る資格があるはずもない。
何となくだけど、遠目に見えるできる専属侍女のお顔は····過去最高に呆れたお顔だったよ。
何か痛い。
主に心が····とっても痛い気がしてきたぞ。
よし、別の事を考えよう。
そうそう、あの王子と子分が完全に放ったらかしになってしまったんだった。
でもアレのあの様子だと始末される事はない····と思うしかないよね。
利用価値は····あるかな?
きっとまだ····あるよね?
なんて頑張って現実逃避していれば····。
「ア〜ホ〜!
ア〜ホ〜!」
カラスはなおも鳴く。
「カラスならカァって鳴けー!!!!」
そしてあまりにも不測が過ぎまくってるこの異常事態に、僕はカラスに鷲掴みにされたまま········とうとうキレて叫ぶのだった。
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【稀代の悪女と呼ばれた天才魔法師は天才と魔法を淑女の微笑みでひた隠す〜だって無才無能の方が何かとお得でしょ?】
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