35.精霊の理

「俺の愛らしい天使を不躾に調べて探りを入れようとするくらいには謎だったようだからな。

教えたんだから、アリーの件は善処しろ」

「宰相の方はどうにでもできるけど、あっちの王子は難しいよ。

今は留学中の王子として責任者として王太子の僕に申請を回してるけど、下手をすればザルハード国から申請しかねない。

第三王子や教会まで興味を持たれて困るのはアリーだしね。

それにあの第一王子の方もここ数日で何かを焦ってるみたいで連日アリーとの面会を催促してくるんだ」

「そういえばレイヤードの方にも当初は再三つきまとってたらしい」


 そっかぁ、やっぱりそうなっちゃったのか。

だとしたらかなり面倒臭いなぁ。

思わず、ほぅ、とため息が出てしまう。


「····アリー?

君、何か心当たりがあるんじゃないか?」


 ん?

ギディアス様、何で検分するような目に····。

あれ、義兄様も何で僕の顔をのぞきこむのかな?

もしかして何か顔に出ちゃったのかな。


「えぇっと····えへっ」

「俺の天使の誤魔化し笑いは可愛いけど、思い当たるならちゃんと教えなさい」


 うーむ、義兄様くらいなら誤魔化されるかと思ったのに、久々に兄らしい注意を受けちゃった····ギャップ萌えもありだね。


「多分あの闇の精霊さんが契約をしないまま、意図せず理に軽く抵触しちゃったんだと思います。

聞き流せば良かったのに、あの王子も私に話しかけてきちゃったから。

このまま何もしなければ闇の精霊さんは消滅か、それに近い事になるんじゃないかなって」

「どうして君がそれを?」

「精霊眼であの精霊さんを見た時、先に反応した精霊さんが“あの眼は····”て、つい言っちゃったから。

完全に言い切ってないのと意図せず言ったから、すぐに消失するのは免れたんだと思いますが」


 それを聞いて2人が顔を片手で覆った。


「「それ、早く教えて欲しかった····」」


 うん、おっきいため息つくとこまで息ぴったり。

仲良しさんだね。

でも僕にすれば不可抗力なんだけどな。

ちょっとギディアス様、僕にすがるような目を向けないでよ。


「回避する方法を君は知ってる?」

「1つだけ。

でも教えてあげられませんよ。

どうするのかは精霊さんが自分で決めて行動しなきゃいけません。

それが精霊さん達の理みたいです」

「君はあの王子に会ってあげたいって思う?」

「王子には本音を言えば会いたくありません。

そもそも私には会ったところで良いことが1つもありません。

精霊さんが大事なら、ちゃんと気をつけてあげなきゃいけなかったのも彼の方です。

でももし思った通りになっているのなら、闇の精霊さんに助かる機会はあげたいと思ってます」

「バルトス····」

「わかった。

俺達は天使の要望に忠実だ」

「すぐに機会を作る。

君には王城に来てもらう事になるが、かまわないだろうか」

「かまいません。

父様に付き添って欲しいのですが····」

「子供の君を他国の王子に1人で会わせたりしないよ」


 それからすぐにギディアス様はシル様に声をかけた。

シル様が王都で人気の焼き菓子をそっとくれて、渋く笑って頭を撫でてくれたのが嬉しかった。

ギディアス様が目を丸くしながら、あのシルヴァルトがって呟いてたのはどういうこと?

その後すぐに2人は王城に戻って行った。

シル様のお耳と尻尾はお預け。

残念すぎる。


 僕のモフりたい症候群が爆発して、レイヤード義兄様から預かってた魔具でバルトス義兄様に真っ白い兎耳、兎尻尾を生やした。

義父様が帰ってくるまでモフり倒したのは言うまでもない。

バルトス義兄様は僕をお膝に乗せてずーっとニコニコしていた。


 それから2日後、僕は義父様と登城した。

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