第37話 やっぱ止めますってありかな・・・
俺は町へと入り、早速現実に直面していた。
検査も終わり意気揚揚と行こうとしたらカルスさんに止められ、入町税なるものを取られた。居住者と冒険者以外は徴税の対象らしい。
居住者は分るがなぜ冒険者もかというと、一つの産業だかららしい。
ガブスさんに教えて貰った魔法使いの有用性は“魔物を倒せる者”であればそのまま通用する様で、
「素材を持ち帰り、売って得たお金を町で使ってくれる」
冒険者は、1次産業と2次産業を同時に盛り上げてくれるので、観光業などより余程確立した税収源のようだ。
他方、やはり荒事も比例する様だが、そこは施政者の力量だろう。何事もバランスを取るのが上に立つ者の役割なのだから。
さて、そんな訳で町に入るのに毎回、金を取られては堪らないし、そもそもそれしか道が無いのでさっさと冒険者となるべくギルドへと向かう。
因みに入町税は銀貨1枚だった。冒険者登録を済ませば身分証を発行して貰えるので、それを見せれば返して貰えるらしいが、一応その仮払い的な意味の割符を預かっている。
収入の当ても確立出来ないまま、支出のみ先行する現状に若干の焦りを覚える。
物価がイマイチ分らないが、今日の宿も泊まれるか心配になってきた。
今はギルドまでモーラさんに案内して貰っているが、露店はいくつもあれど“何”を“いくら”で売っているのか書いてないのでさっぱり分らない。
そうこうしていると、
『着きましたよ、ここが冒険者ギルドです。』
そういって案内された場所にあったのは、まるで西部劇の酒場の様な風貌で、木造2階建ての建物だった。
入り口には「これ扉の意味あるの?」と、言いたくなる様な、例の丈の短い観音両開きの扉が付いていて、看板には剣と楯の絵が木に掘られたレリーフが掲げられていた。
(おお!ついに来た!異世界の王道、ここが冒険者ギルドか!)
もう、気分は完全に観光地のお上りさんである。
ザ・異世界に感動していると、
『それでは私はここで失礼させて頂きます。』
『あっ!すみません。わざわざ案内までして頂き、ありがとうございました。』
『いえいえ、冒険者は危険と隣り合わせですので、どうかご無事で。』
そう言葉を残しモーラさんは去って行った。
(・・・やっぱ危険なんだ・・・どうしよう・・・今更やっぱ止めますってありかな・・・。)
先程までの観光気分から一転、急に現実を突きつけられて早くも及び腰になってしまう。
しかし既に退路はないので、とりあえず進むしかない。
まるで昔の配管工の兄弟をテーマにしたゲームの様だ・・・彼らもきっと今の俺と同じ心境だったに違いない・・・。
時間で左から右へ場面が無理やり進められた彼らの様に、俺も既に陽が落ちつつある現状に押され建物の中へと入るのだった。
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