恋歌
小笠原雅
第1話 恋歌
恋歌
恋文をあなたが消してしまった。
私の恋の文は
夜の薄暗い褥の中で
あなたを想い、
恥ずかしい思いを綴った
栗の花の残り香のような
快楽(ケラク)の果て
いやらしい妄想。
その思いは
どこにも行くことができずに
ただ私の心の内をゆらゆらとめぐり
あてもない言葉となって
彷徨って行く旅に
やっと止まり木が出来たと云うのに。
それは土を耕し汚れた肌を
痒い痒いと掻いた跡
ミミズ腫れの浮き出た
思念の赤い色
爪の中に残った
汚い爪垢
如き忌まわしい物
身を蕩けさすような交接は
若き知りえぬ者の憧れ
高ぶるエストロゲンの毒の刃に串刺し遭い
我が身の野生を知るのでしょう
なぜ人は真具合うのか
それは己が命を
60ミクロンの小さな袋に託す為
120ミクロン大きな母に出会うため
淫靡な妄想をする私に
あなたはプレゼントをくれた。
それは青少年にそぐわない
「激しい性の描写を書いた小説家もどき」
と云う称号
でも嫌わないでくださいあの文は
私の心の体臭のようなもので
私がそこにいると言う証のようなもの
ですから
愛してくださらなくても
私があなたを思い続けるように
残り香がずっとそこにあるのですから
恋歌 小笠原雅 @yasutomi7536
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