前年度優勝者

『第1ブロックは、想像だにしなかったダークホースが、その頭角を現しました!続いて第2ブロック、舞台の修復は恙無く終了し、今!参加者が入場します!』


 大扉が開き、第2ブロックの参加者たちが闘技場へ入場する。その中でも注視すべきは、前年度優勝者のハイだろう。


『ギアルトリア魔闘会、第2ブロック、バトルロワイヤル!試合、開始!』


 ゴングが鳴る。次の瞬間、俺たちは皆目を見張ることになった。


「お、おお?」

「ちょ、どわぁああ!?」


 凄まじい突風が吹き荒れリング上の参加者を次々と巻き上げていく。それはリングを中心に竜巻を生した。


「竜巻…だと!?前回はこんなこと…!」


 竜巻に攫われた参加者たちは空高く吹き上げられ、やがて上がりきった彼らは外へと放り出された。


『うわぁぁぁあああっ!!!』


 リング内、場外問わず地に落ちた者らは札の効果で転移していく。リング上になお残っているのは、爆発魔法などで風を捌き続けた者たち。そして━━━━


「うん、早いうちに決まったね」


 大事を成したというのにケロリとしているハイのみだった。


『な、なななんとぉ!?ハイ選手、突然の大魔法!リングの上に残ったのは僅か4名!開始直後、早くも試合終了だぁ!!』


 なるほど、恐るべき魔法を使う。あの控え室での一件では距離も近かったためにこちらから攻撃できたが、こうして試合を見てみればその実力の高さをよくわからせられる。


 これは早々に対策を練らねば。この大会に出ているからには優勝する。そして優勝するためには、あれも倒す必要がある。


「第3ブロックの方々!大扉へ集合してください!」


 係員が呼びかけ、ぞろぞろと選手が流れていく。次いで、試合を終えた第2ブロックの参加者たちが戻ってきた。


「無理だ無理だあんなの」

「なんてこった、地方からはるばるやって来たってのに……」


 意気消沈する者らは荷物を纏め、観客席側へと去っていく。未だに残るのは4名のみだ。


 その中にハイの姿があった。彼は軽く控え室を見回すと、こちらを見つけ寄ってくる。来るんじゃねえ。


「やあ。試合は見てくれたかな?」

「……ああ」

「そっかそっか。ならしかと目に焼き付けておくといいよ。あれぐらいは凌げなくちゃ相手にならないからさ」

「…………」

「別に煽られたことは気にしてないよ。あの時はちょっとタイミングが悪くて、メラメラとしてたからさ。だけど、君の一撃はかなりのものだった。常に纏ってる魔法障壁が簡単に破られちゃったからね。君は強い、きっと勝ち上がってくる。そう思ったからこそこうして声をかけた次第さ」


 彼の言うとおり、顔に嫌悪などの感情は見られない。新たに頭角を現した敵にワクワクしているかのような、純粋なものだった。


「……そうか。なら遠慮なく対策させてもらおう。戦う時が楽しみだ」

「へぇ……やっぱり面白いね、君」


『第2ブロックもまた、驚きに満ちたものでした!続いて第3ブロック、舞台の修復は既に終了しました。それでは、参加者が入場します!』


「おっと、試合が始まるね」

「………………」

「よーく見ときなよ。魔闘会覇者の出るブロックだ。あの人もきっと、前回よりも強くなってるだろうから」


 魔法の術式が組み込まれたローブは40人余りの参加者の中でも目立つ。


『ギアルトリア魔闘会、第3ブロック、バトルロワイヤル!試合、開始!』


 魔闘会覇者ロウ。その力が発揮されようとしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る