魔闘会、開会!

「選手、入場です!」


 司会の声とともに、闘技場の一際大きな扉が開く。参加者が列を成して入ってくると、観客から歓声が上がった。


 参加者たちの全てが揃うと、扉が閉められ再び司会の声が響き渡る。


「ここに、マヌカンドラ帝国中から120余名の参加者たちが集いました!俺が、私が、此度の優勝を飾るのだと!その研鑽を披露し、最強は自分だと証明するために!」

『ウオォォオオオッッ!!』


 参加者たちの雄叫びが響く。司会は雄叫びが一段落したところで再び口を開いた。


「ではここで、マヌカンドラ帝国が帝王、我らが聖帝ベテルギアス様による開会宣言です!」


 観客席に連なる建物。そこに特別区専用の観客席があり、その最上階が王族の席だ。

 立ち上がったのは初老の男性。頭に被る王冠と厳しい顔つきをしている彼こそが、マヌカンドラ帝国を治める皇帝ベテルギアスその人だ。


 ベテルギアス帝は参加者たちをざっと見渡すと、高らかに声を上げた。


「皆、よくぞ集まってくれた。その鍛え上げた力、技術、その全てを存分に奮って我らを楽しませ、見事優勝してみせよ。これより、ギアルトリア魔闘会の開会を宣言する!……ふぅ、疲れた」

「帝王様、マイクまだ切れてません」

「あ、やべ」


 プチッとマイクが切れる。なんとも締まらないが、一瞬の静寂の後に観客は歓声を、参加者は雄叫びを上げた。


「ありがとうございました!では、今大会の試合運びとルールを説明させていただきます!まずは4ブロックに別れ、約40名余りによるバトルロワイヤルを行います!最後まで立っていた4名ずつを組み込み、12名によるトーナメント戦を行い見事全勝された方が優勝です!その際はクリスティーヌ騎士団長またはヨルン騎士団長に戦いを申し込むことができ、勝利の暁には帝王様から直々に『帝国最強』の称号を与えられます!」


『帝国最強』

 その言葉を聞いた参加者たちの顔つきが変わった。杖や拳を握る力を強め、その顔からは気迫と決意が伺える。


「試合運びとルールに関しては以上となります!では、これにて開会式は閉会となります!選手、退場!」


 扉が開かれ、次々に参加者たちが控え室へと戻っていく。全員が出ると、扉が閉まるとともに観客席を薄い膜が覆っていった。


「ただいま、参加者の魔法による被害を防ぐためにバリアを張っております!リングの作成も進めておりますので、もう暫くお待ちください!」


 参加者たちが出ていった大きな扉とは別の、東西にある扉が開き数人の係員が出てくる。彼らは持っていた魔石をばら撒き魔法力を流す。

 起動した魔石から大量の石が溢れ出し、係員たちは建築魔法で操り大きく頑丈なリングを作成した。


「リングの作成、バリアともに完了しましたので、これより第1ブロックのバトルロワイヤルを始めます!選手、入場!」


 大きな扉が開き、約40人の参加者たちが闘技場へと姿を現す。参加者たちがリングに上がると、観客はますます歓声を強めた。


「ギアルトリア魔闘会、第1ブロック、バトルロワイヤル!本日最初の試合です!それでは……試合、開始!」


 ゴングが鳴らされ、魔法力が開放される。ついにギアルトリア魔闘会が始まったのだった。

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