矢田さんはヤンデレないっ!?
えちだん
第1話 告白 ー 刹那秀登 編 ー
僕の名前は、
ここ、桜場高校に通う高校一年生だ。
今日は朝から落ち着かなくて学校の授業では集中できておらず、今の僕のことを上の空という言葉が体を表しているようにしか見えないだろう。
「え~~と、ここは矢田、読み上げろ」
「はい」
そういうと僕の斜め前の席に座っている女性が立ち上がると同時に長い髪がふわりと揺れる。
彼女は透き通った声でつらつらと教科書の文字を読み上げていく。
僕はそんな彼女に目が離せないでいた。
彼女の名前は
彼女が僕がこうなってしまった原因であった。
今日の放課後、彼女に告白する。
そうして、放課後告白の時が来た。
あらかじめ手紙で指定しておいた校舎裏で彼女を待つ。
しばらくすると、僕の好きな人……矢田玲子が歩いてくる。
彼女は自分の前に立ち一言、
「何か用?」
と問いただしてくる。
ここに来るまでにいろいろと考えていた言葉は緊張で吹っ飛び、頭の中にペンキでもかけたかのように真っ白になってしまった。
額に汗がにじみ出て心臓の鼓動が早くなり、この場から逃げ出したくなる。
そうしてパニックになり彼女の顔をうかがうように見ると目が合った。
口の中にある唾液を音を立てて飲み込む。
目をそらさず、ただまっすぐ見つけて一言、自然と言葉が零れ落ちた。
「好きです。僕と付き合ってください」
その一言を口にした瞬間、永遠ともいえるような短い沈黙がその場に漂う。
心臓がこれでもかと暴れ始め、おかしくなりそうだった。
もう早く終わってほしいような、このまま時間が止まってほしいような感情が胸の中混ざりあっている。
「えぇ、付き合いましょう。」
ただ一言、彼女はそう返してくれた。
あまりの嬉しさにこの場で飛び跳ねそうになる。
だが、彼女はそんな自分を意に返さず、言葉を紡いでいく。
「でも、私すごく嫉妬する性格なの」
「へーそうなんだ!」
「そうなの、だから浮気したら私……あなたのこと許せないかも」
そういうと彼女は懐からカッターナイフを取り出しチキチキと音を立てながら刃を露出させる。
そんな彼女を見て僕、刹那秀登は……
「もちろんもちろん! 矢田さんにしか目に入らないからそんな心配しなくてもいいよ!」
「えぇ!?」
そういいながら彼女との距離を縮めていく。
彼、刹那秀登は言葉通り彼女しか目に入っておらず、手に持っているカッターなど眼中にもなかった。
恋は盲目というが彼の場合、物理的に周りが見えていなかったのである。
「急にこんなこと言われても信じられないかもしれないけど、矢田さんが傷つくことは絶対にしないから! だからこれから僕のことを知ってほしい!」
「あぅ……えと」
さらに彼女との距離を縮めていく。
先ほどとは打って変わって彼女の返事を聞くために顔を覗き込む。
しばらく見つめていると顔が徐々に赤くなっていき、真っ赤になってしまった。
そうすると慌てた様子で彼女が距離をとる。
「わ……わかったから! きょ、今日はもう帰るね!」
そういうと小走りで彼女はその場から立ち去ってしまう。
しばらくその場で彼女と付き合えたことに対して喜びを噛みしめていると一つ疑問が浮かぶ。
なんであんなに赤くなっていたのだろう?
「あっちもまんざらじゃなかったのかな?」
そんな自分に都合のいいことを考えながら自分もその日は帰路へと着いた。
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