第112話 閑話 天空龍

我は、人間界と魔界の中間にある龍脈を管理している天空龍。


龍脈とは、世界から湧き出る力が特に強い場所であり、世界中の龍脈のほぼすべてをドラゴン種が管理している。


そんな中、人間界にある龍脈を管理しているエルダードラゴンが倒され、新たな管理者が現れた。


新たな管理者は、前にあの龍脈の管理をしていた世界樹だった。


…アヤツめ…まだ生きておったか…


…昔、エルダードラゴンと一緒に人間どもをけしかけて枯らしたはず…


…ゴブリン並みのしぶとさよ…


…人間どもに任せたのが失敗だったか…


…今度は我が直々に消滅させてやらねばなるまいか…


世界樹は、世界の調律を行う存在で、いわば世界のパワーバランスを保つ役割を担っている。


ドラゴンにとっては厄介な存在だ。


世界樹は、龍脈の力、精霊の力、自然の力、魔の力などのエネルギーを偏り過ぎないように植物などの弱い生物にも分配するためだ。


…植物などの脆弱な存在に力を分け与えるなど愚の骨頂…


…まずは天空龍の種族スキル「龍脈管理」で龍脈の支配権を奪うとするか…


…うん!?逆に龍脈の支配権が少しずつ奪われている!?…


…バカな…


…世界樹に龍脈の支配権を操作する能力は無いはず…


…龍族と手を組んだか…


…ぐぬぬ…仕方ない…業腹だが、直接会って龍の権威を示してやるとするか…


…世界樹と新たな龍脈を支配下に置くのも悪くない…


…そうと決まれば、早速メッセージを送るか…


……


…返事がない…


…この天空龍を無視だと…


…モノを知らぬにも限度があるぞ…


…もはや慈悲は与えてやらぬぞッ!…


…我の自慢のドラゴン部隊を送り込んで壊滅させてくれるッ!…


…いけッ!ドラゴン部隊よ…


我は眷属のウインドドラゴン100体とグランドドラゴン100体を送り込んだが、1日も経たずに眷属との繋がりが消えた。


…バカな、通常種とはいえ“ドラゴン”が、たかが世界樹ごときに…


…やはり他の龍族と…


…ちッ!ちぃッ!ちぃぃぃぃぃッ!…


…もう許せんッ!我の腹心であるシルバードラゴン・ゴールドドラゴン・プラチナドラゴンの“三銃士”を向かわせるか…


…“三銃士”であれば、例え龍族であっても問題ない…


…いけッ!“三銃士よッ!”…


……


腹心の“三銃士”を向かわせると、また1日も経たずに“三銃士”との繋がりが消えた。


…はぁぁぁぁぁぁぁッ?…


…なんの冗談だ?…


…そもそも、“三銃士”が出発してそんなに経ってないぞ…


…“三銃士”が殺られたとしたら、龍脈にたどり着く前に瞬殺されたことになる…


…それはない…


…“三銃士”は3体で連携すれば、我に匹敵する伝説級ドラゴン…


…それを瞬殺できるヤツは人間界にはおらん…


…ま、まさか?眷属どもめ、裏切って世界樹側についたか?…


…龍脈の力を独占すれば、数百年で我に匹敵するほどになる可能性があるからな…


…くそぉぉぉぉぉッ!…


…こうしてはおれんッ!眷属共々、滅ぼしてくれるッ!…


我は管理している龍脈を飛び出し最高スピードで世界樹の管理している龍脈に向かった。



…よし。もう少しで着く頃だ…うん?…遠くに2体のドラゴンの姿が見える…


…やはり裏切ったかぁぁぁぁッ!…


…皆殺しだ、皆殺しだぁぁぁッ!…


2体のドラゴンも我に気づくとブレスの準備を始めた。


…無駄だッ!貴様らのブレスなどでは、我を倒すことは…で…き…な…いぃぃぃぃッ!?…


2体から発するオーラは、大気を揺るがし、遠く離れた位置からでも視認できる程だった。


さらに驚くべきことに、それぞれから発するオーラを混ぜ合わせ始め、今までに存在しなかった属性を生み出していた。


…あ、あのブレスの合体させる技術は“-双龍袍術-”ッ!はるか昔に2体の始祖龍が使っていたと言う伝説の技…


…そ、それに新たな属性だと!?…


2体のドラゴンから幾多の魔法陣が展開され、激しい閃光と共にブレスが放たれた。


…ちぃッ!…


―龍技-金剛龍璧-―ッ!


…この技は、“三銃士”の同時ブレスにも耐えられる無敵のバ…リ…ア…だ…


『…ぁぁぁぁぁぁぁ…!』


…声…が…出…せ…な…い…


…我…は…死…ぬ…の…か…


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