第100話 傲慢の大罪武器の所持者1

…ユニ・モンタ~傲慢戦~…


ユニとモンタとエンヴィーが迎撃用の部屋で待ち構えていると、扉がゆっくりと開き、悪魔族の女が静かに顔を出した。


「はぁ、まんまと分断されてしまったわね。でも、最初の相手が女の子と小猿なんて、運が良いのかしら?あら、エンヴィーもいたのね。元気にしていたかしら?」


迎撃用の部屋に入ってきた悪魔族の女は、周囲を観察しながらエンヴィーに話しかけた。


傘形態のエンヴィーも気さくに返す。


“まあな。ルシフも元気そうで何よりだぜ。プライドはどうだ?”


悪魔族の女ルシフが左手に持っていたレイピアから声が発せられた。


“まあまあってところかしらね。ところで、摯王様はどこかしら。私が挨拶に来たって伝えてくれないかしら。あの方も私が来たと聞いたら飛んでくるはずよ。”


エンヴィーの声色が変わる。


“随分、俗世に毒されちゃったね、プライド。君は大罪武器の役目を忘れただけじゃなくて、我王様のお側にいるには足りないものが多いね。”


ユニもモンタも同意する。


「この方達は似た者同士のようですね。どちらともコウスケ様には必要ありませんね。」


『けッ!オイラを小猿だなんて、コイツら目が腐ってやがるぜッ!』


ルシフは嬉しそうにプライドの切っ先をユニ達に向ける。


「クスッ。裏切り者と弱者の戯れ言など聞いても時間の無駄だから、そろそろいくわよ。プライド。」


“はぁ~い。-アクセラレーター-”


ルシフとプライドが赤く発光すると同時に、目では追えないほどのスピードでユニに接近し、武技を発動する。


「クスッ。この世界では、スピードが早い者が一番強いのよ。武技-シューティング・スター-」


スピードと正確性を重視した刺突がユニの右眼に向けて放たれる。


“メタモルフォーゼ「プライド」。-アクセラレーター-”


ユニとエンヴィーも赤く発光し速度を上げると、攻撃の軌道を完全に読み、最小限の動きで回避した。


そして、右手に持ったレイピア型のエンヴィーを構えて反撃を行う。


「スピードが大切ということはわかりましたが、スピードが同じの場合、何が勝負の決め手になるのですか?」


…武技ー五月雨突きー…


メタモルフォーゼしたエンヴィーから長雨のごとく繰り出される強力な突きの連続は、ルシフの体を大きく後方へ吹き飛ばした。


「がっ!!ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁッ!…………………

調子にのるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」


ルシフは立ち上がり、再びユニに接近しようと駆け出したが、巨大な障害物によって阻まれる。


ドスンッ!


ドスンッ!ドスンッ!


ドスンッ!ドスンッ!ドスンッ!


モンタはアイテムボックスからミスリルゴーレム軍団を取り出していた。


そして、念動力スキルでユニの肩の上に乗ると、右手で杖を振るう。


『モンタのゴーレム軍団出撃ッ!!!』


モンタの号令でゴーレム軍団が動き出す。


無数のゴーレム達はルシフの行動範囲を狭めるようにじわりじわりと囲うように追い詰め始める。


『ネェちゃん、スピードも大事だけどよぉ、数には勝てねぇ時もあんじゃねぇのか?今みてぇに。』


逃げる隙間を少しずつ埋められ、ついにルシフは壁際に追い詰められた。


「嘘でしょ…。神聖属性を纏った精密に動くミスリルゴーレムなんて、聞いてないわよッ!しかも、なに、あの本物のそっくりに動くベヒーモスゴーレムは!?反則じゃないッ!それに、短時間でエンヴィーをそこまで使いこなす大罪武器の所持者なんて聞いたこと無いわよ!」


ユニは無表情で否定する。


「私は大罪武器所持者ではありません。一時的に力を借りているに過ぎません。まぁ、厳密に言えば、あなたも大罪武器所持者ではありませんから、ある意味私と一緒ですけどね。」


エンヴィーもそれに続く。


“そのとおりだよ。俺たちは真の主様を見つけるまでの期間限定でしょうがなく一時しのぎでセブンウェポンなんてダサい連中に力を貸していただけ。プライドは忘れちまったみたいだけどな。”


モンタも腕組みしながら頷く。


『確かに…。お前らみてぇな、武器に頼っているだけの奴らなんて、その辺の雑魚と変わんねぇもんな。』


ルシフは、不敵に笑いながら上から目線で話を始めた。


「フフ…。そういうことでしたか。では、その真の主とやらに会わせなさい。私がその方を気に入れば配下になってあげるわ。」


“そ~よッ!私も同意見だわッ!”


モンタが溜め息をつきながら問いかける。


『じゃあ、お前ら。ひとんちに勝手に土足で上がりこんで、荒らしてくれた落とし前はどうつけてくれんだ?あぁん?』


ユニがモンタの台詞に少し驚く。


「モンタ。本当に親分みたいになりましたね。」


“モンちゃんは、グラトニーと紅ゴブという子分がいるからなぁ。”


『そうだぜ。立場がヒトをつくるってコウスケも言ってたしな。』


3人のやり取りに苛立ちが最高潮になったルシフが叫びだす。


「セブンウェポンに害をなす連中のアジトに乗り込んで何が悪いのかしら?御託いいから早くダンジョンマスターを呼んできなさいッ!」


“そ~よ。そ~よ。”


ユニとモンタとエンヴィーは冷たく言い放つ。


”『「それでは(じゃ)、コウスケ様(我王様)に害をなす連中を始末してもなんの問題もありませんね(ないね)。」』”

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る