第99話 色欲の大罪武器の所持者

…白・黒~色欲戦~…


「が、がーんなんだな。か、可愛い女の子がいないんだな。」


肥満体の男が、白と黒のいる部屋に入ると残念そうな声をあげた。


ホーリードラゴンの白が、スロウスに確認する。


『スロウス様、このオークが色欲の大罪武器所持者なのですか?』


“…そのはず…”


白は身体中に神聖属性の龍気を纏うと、渾身のブレスの準備を始めた。


『では、早く終わらせましょう。あの右手に持っているのが大罪武器ですね。』


…ドラゴニックオーラ全開…

…収束スキル発動…

…発動短縮スキル発動…


≪ホーリーブレス≫


白の眼前に魔法陣が現れ、収束された聖なる息吹のレーザーが肥満体の男に放たれる。


肥満体の男は、よろめきながらもレーザーを回避し、右手に持っていた鞭を振り上げる。


「おっとっとぉぉぉ。ラストッ!“起きろ”ぉぉぉぉぉぉおおっ…ぎゃッ!…ラ、ラストォッ…!」


バシンッ!!!


シャドウドラゴンの黒が、影移動スキルを使い素早く肥満体の男に近づくと、尻尾で右手に持っていた鞭を叩き落とした。


「ぐべぇぇぇぇぇッ!」


さらに、男の巨体が白のブレスによって吹き飛んだ。


鞭は無言のまま地面に置き去りされる。


『これがなければ、お前は怖くない。』


黒は、鞭を咥えると自分の影に放り込み、尻尾で男の頬に往復ビンタを始める。


バシンッ!


「い、いたいんだな。」


バシンッ!


「や、やめてなんだな。」


バシンッ!


「お、おにぎりが食べたいんだな。」


バシンッ!


「ぼ、ぼくは叩いてもそんなに美味しくないんだな。」


バシンッ!



……


…………


バシンッ!


「おいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!やめろっていってるだろぉぉぉぉぉぉぉぉッ!いい加減にしろぉぉぉぉぉッ!なんで、さっきからボクチャンの魅了スキルが効かないんだよぉぉぉぉぉぉぉッ!…もういい死んじゃえッ!「臭い息」「体臭」「体液」スキル発動ッ!」


肥満体の男から茶色の水蒸気があがり周囲を溶かしながら広がっていく。


「あ~はっはっは~。死んじゃえぃ~。」


やがて、黒の体全体が茶色の水蒸気に包まれた瞬間、黒の姿が消えた。


「なにぃぃぃぃぃぃぃぃ?ど、どこに行ったんだな?」


白の隣に、本物の黒の姿が現れた。


『それは影分身だ。お前は今までただの分身に踊らされていたのだ。効きもしない魅了系のスキルを使いながらな。…もうゲームオーバーのようだ。魔王様のお命を狙った罪を償うが良い。』


白は、黒が時間を稼いでいる間に溜めておいた力を使い、強力なブレスを放つ。


『無駄な努力、お疲れ様でした。』


…ドラゴニックオーラ全開…

…収束スキル発動…

…浄化スキル発動…


≪ホーリーブレス≫


白の眼前に複雑な魔法陣が現れ、聖なる息吹が肥満体の男を包み込んだ。


「うぎょあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!はぁ…はぁ…はぁ…。」


肥満体の男は立っているのがやっとのような状態で息を切らしていた。。


『さすがにしぶといですね。それではもう一撃いきます。』


…ドラゴニックオーラ全開…

…収束スキル発動…

…浄化スキル発動…


≪ホーリーブレス≫


白の眼前に複雑な魔法陣が現れ、再び聖なる息吹が肥満体の男を包み込んだ。


「ぎょあぁぁぁぁぁぁぁッ!ふぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅ。」


『頑張りますね。それではもう一撃。』


…ドラゴニックオーラ全開…

…収束スキル発動…

…浄化スキル発動…


≪ホーリーブレス≫


白の眼前に複雑な魔法陣が現れ、再び聖なる息吹が肥満体の男を包み込んだ。


「ぎょあぁぁぁぁぁぁぁッ!ふぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅ。ぜい…。ぜい…。ぜい…。」


『気持ち悪いほど耐久力だけはありますね…。黒、手伝ってもらえますか。』


『魔王様が御造りになられた新しい属性…試してみるか?』


『ッ!ぜひ試してみましょう!』


『『いきますよ(いくぞ)ッ!』』


…ドラゴニックオーラ全開…


白と黒は、コウスケと混沌属性を生み出した時の感覚を思い出しながら、両者の魔力とオーラを混ぜ合わせる。


何層もの複雑な魔法陣が現れ、大気を激しく揺らす。


『『…あまねく世界の混沌よ…すべてを打ち消す力となれッ!』』


≪カオティック・ブレス≫


白と黒は、この世の理不尽に抗う渾身の一撃を放つと、あたり一面が混沌の光に包まれていく。


肥満体の男は、声を上げる間も無く迫りくる混沌の渦に飲み込まれていった。



混沌の光がおさまると肥満体の男は跡形もなく消滅していた。



『さぁ、主様のもとへ行きましょう。スロウス様、サポートありがとうございました。』


『“ノロイ”の効果のお陰で、怪しげな鞭をスムーズに叩き落とすことができた。』


“…いえ…お二人に比べたら…うんこみたいなもん…です…いや…ほんとに…”

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