第77話 戦利品
ソニ子と風の精霊が空から帰ってきた。
『ピュイ(ただいま~)♪ピュイ(戦利品をどうぞ~)♪』
ソニ子の足には、青と白のボーダーの傘が握られており、誇らしげな顔でコウスケの目の前まで飛んでくると傘を放した。
傘は地面に落とされると、言葉を発する。
“痛ぇッ!”
それを聞いた斧形態のグラトニーが念動力を使い傘に近づく。
“エンヴィー 。やはり、あなたですか?”
傘も念動力を使い起き上がると、グラトニーと向き合った。
“よぉ。グラトニー。我王さ…いや、おめぇの主を見にきてやったぜぇ。紹介してくれや。”
グラトニーは重力魔法の魔法陣を展開すると冷たい口調で言い放つ。
“嫌です。これ以上、食王様にお仕えする大罪武器は必要ありません。大人しくお帰りなさい。ちなみに、敵として相対するときは、喜んでお相手いたしましょう。”
エンヴィーは重力魔法により地面に押さえつけられる。
“な、何言ってるんだぁぁ。ただテメェの真の主ってヤツを見にきただけじゃねえか?そもそも、そこの鳥とレヴィが戦っている時もオイラは手を貸しちゃいねぇし、テメェらと敵対するつもりは全く無ぇッ!十分に話し合いの余地はあるはずだッ!”
グラトニーは重力をさらに強めながら解説を始める。
“そこが問題なのです。いつものあなたであれば、レヴィとかいう所持者と一緒に始めから敵対してくる筈です。まして、話し合いなどしなかったでしょう。しかし、敵対しなかっただけではなく、大人しく捕まり話し合いまで始めようとしてきた…。あなたは、食王様の監視をしている間に気づいてしまったのではないですか?あの御方があなたが以前言っていた「我王様」であると…。あなたに恨みはありませんが、大人しく引いてください。食王様にとっての大罪武器は私のだけで十分なのです。ただでさえ、一度敵対してしまってクロンに差をつけられているっていうのに、あなたまで増えたら…。”
重力波が可視化されていき、黒い球体になった。
“ぐぅぅぅぅぅ。こ、これは重力転移!?テ、テメェ、「暴食」の大罪武器だよな?いつの間に「嫉妬」までするようになってんだよ?っていうか、それだけの理由で同じ大罪武器同士で争うなんておかしいだろッ!”
“ふふッ!私もクロンのことは言えませんねぇ。さて、重力転移はどこに行くか私でさえもわかりません。よい旅を楽しんで来てください。”
”テ、テメェッ!ふざけんなッ!よい旅って、この転移はそんな生やさしいもんじゃねぇだろ!?オイラだって我王様にお仕えしてぇんだよぉぉぉッ!仕方ねぇッ!我王様の手前、敵対はできねぇが自衛はさせてもらうぜッ!-メタモルフォーゼ-ッ!モード-グラトニー-”
傘形態のエンヴィーが発光し、グラトニーそっくりの斧に変形した。
そして、グラトニーと同じように重力魔法を展開し、重力の球体を相殺していく。
“ちぃッ!相変わらず「猿真似」が得意ですねッ!しかし、毎日、食王様の手料理を食べている私の力を甘く見ないでいただきたいッ!”
グラトニーの重力球が更に大きくなり、エンヴィーが押し負けてきた。
“な、何ッ!?オイラのメタモルフォーゼは相手の能力をそのままコピーするはずなのに、なぜ押し負けているんだ!?…って…我王様の手料理だとッ!テメェなに羨ましいこと毎日してんだよッ!”
“私には食王様の力が上乗せされているのです。わかるでしょう?真の主を見つけたときの大罪武器の力をッ!!!”
“ち、ちくしょうぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!!”
エンヴィーは重力球に覆われ、何処かに転移した。
“ふぅ。まさか、食王様が「嫉妬」の資格もお持ちとは…、気か抜けませんね…。”
(…今回のやり取りは聞かなかったことにしておこう…。)
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