第31話 甘いは正義

スキルとアイテムの整理が終わり、昼食の準備をしていると、モンタが近づいてきた。


『コウスケ。殴り込みに行こうぜ。アイツらの居場所掴めたんだろう?オイラ、敵討ちをしなくちゃ気がすまないぜ!』


人化してリビングでくつろいでいるクロンが立ち上がりモンタに視線を向けた。


『モンタ。気持ちは解るが、攻めるよりも守る方が有利だ。下手に殴り込んで、相手に待ち伏せされていたら、目も当てられん。我らに出来ることは、可能な限りの備えを行いながら楽しく生活しつつ、時が来たら作戦を実行することだ。』


コウスケは、できあがった昼食をデーブルに置いて、モンタに話しかけた。


「ほら、今日のお昼は、肉まんとあんまんだよ。モンタ、大丈夫だよ。殴り込みはしないけど、嫌がらせはするから。モンタも参加するかい?」


モンタは、目を輝かせて頷いた。


『おうッ!…よ~し!オイラも食べるぞ~!って…おい!ユニは肉派だろ!!あんまん一人占めすんなよ~!』


ユニは、幸せそうにあんまんを頬張りながら、次のあんまんに手を伸ばしていた。


「甘いは正義なのです。モンタ、“いただきます”と言った瞬間から戦いは始まっているのです。感傷に浸っている暇はありません。」


(この世界には、果物以外の甘味が少ないのかな?甘味への食いつきがハンパじゃない。俺は肉まん派だから、ゆっくり食べれてうれしいけどね。しかし、ヒトと関わるのは嫌だけど、この世界を食材をもっと調べてみたいな。麦は見つかったけど、米と大豆はまだ見つからない。この2つは日本人として絶対に諦められない!)


争う2名を尻目に、クロンはワインの入ったグラスを傾けていた。


『しかし、敵の正体は、やはりダンジョンマスターかの?』


コウスケは、ハーブティーを飲みながら、いままで情報を整理する。


「そうだね。高レベルのモンスターを使い捨てにできて、高性能のメイド服を着たAランク以上の冒険者級の存在を眷属にしている…。俺のことを“侵入者”と呼んでたことなども考えると、ダンジョンマスターの勢力か、俺達と同じようにダンジョンを根城にしている勢力か、あるいはその両方という線も濃厚だね。でも、ブラフの可能性もある。」


(戦闘メイドに≪アルファ≫≪ベータ≫…と名前をつけるセンスを考えると、同郷かもしれないな。そうだとしたら、ユニークスキル持ちか…。そうなると、撤退も考えなきゃいけないな。)


『フハハ!深く考えてもムダということか。さて、それでは”嫌がらせ”というものの内容を聞かせてもらうとするかのぅ。』


「難しいことじゃないよ。いままでに造った拠点を転々としながら、たまに相手側に転移門をつないで攻撃するだけ。攻撃はなるべく上空から反撃を受けないように手短に不規則に行うだけだよ。あとの個別のケースは、いままでの作戦どおり。」


クロンは、飲み干したワイングラスにワインを注いだ。


『フハハ!シンプルで気に入った!新しい力を存分に披露してやろうぞ!』

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