第11話
リーベと漆黒の黒竜は間合いをとり、互いの力を測るかのように対峙する。
圧倒的な圧力を感じ、リーべの頬からは冷や汗が伝う。
リーベは対峙している間に、魔物の大群がスペランツァに押し寄せて来たのは、【四大災厄】である漆黒の黒竜が原因であると推察した。
故に、漆黒の黒竜さえ倒せばこの群れは統率を失う。
しかし、過去の歴史から【四大災厄】が人間が立ち向えたという記録はない。
歴史上最大の脅威。
その脅威を肌で感じたリーベは――。
「魔法剣、三式!! 【風刃】!!」
自らの恐怖心を拭うかのように、【四大災厄】である終焉の黒竜に向けて、先手の剣を振るう。
一撃で数十の魔物を屠った竜巻の刃を、終焉の黒龍一匹に放つ。
収束した風の刃は、終焉の黒竜の左脚を捉える――。
「!?」
が、終焉の黒竜の左脚に直撃した竜巻の刃は飛散した。
終焉の黒竜の左脚は無傷である。
「グアアァァ!!」
終焉の黒竜は叫ぶようにリーベを威嚇し、自らの爪を振るう。
リーベはかろうじではあるが、終焉の黒竜の鋭い攻撃をかわした。
【疾風の戦姫】と評されるリーベでなければ、かわせなかったであろう速度の爪。
その威力はリーベの全力を込めたスキルと同等、あるいは超える威力であった。
リーベが爪の攻撃をかわしたことで、黒竜の攻撃に巻き込まれた魔物達が無惨にも八つ裂きにされ、絶命する。
「……こちらの攻撃は通らず、向こうの攻撃に当たれば終わり……か。笑えないわね……もう!!」
リーベは終焉の黒竜からスペランツァの人を逃がすために、命を賭ける覚悟を決めたのであった。
*****
俺達は戦場の最後尾であるスペランツァの北門に着いた。
北門にはシュティレと共に急いで来たが、俺の走りが遅くてシュティレにおぶられた、なんてことはない。
そんな情けない話あるはずがない。
きっと夢だったんだ。
北門の前では、負傷した騎士や冒険者たちが、魔法での治療を受けている。
中には四肢を欠損した者や、はらわたを出しながらも生還した者も倒れ込んで呻いており、戦闘の激しさを物語っていた。
グロ過ぎる。怪我人に耐性がある俺でなければ吐いてたぞ。
北門に着いてから何処かに行っていたシュティレは、馬に乗って俺の元へと戻ってきた。
「後ろに乗って。馬で遠めから戦場を見て、リーベを探す。状況次第では、リーベを連れて何処かに逃げる。いい?」
「わかった」
俺は馬上のシュティレの後ろに飛び乗る。
俺達はスペランツァ北門を抜けて、戦場の外側から更に距離を空けて、馬で駆け始めた。
戦場を遠目から眺めると、明らかに戦況が劣勢なのはわかるが、戦場から遠くて良くわからん。
何か炎やら氷やら雷やらビームみたいなのが飛んでるっぼいが気のせいだろう。
「おい、遠過ぎて見えん。こんなんじゃリーベを探せないぞ」
後ろからシュティレを覗きこむと、シュティレの目は赤く光っていた。
お前はロボか。流石の俺も引くわ。
「あたしには見える。【遠視】のスキルがあるから。常時発動は疲れるけど、望遠鏡で覗くのと同じ」
……こうは言っているが、おそらくは俺のためだろうな。
戦場に近づけば近づく程、魔法やらの流れ弾に当たる確率が上がる。
俺が喰らえば即死だろう。
そのリスクを下げるためにシュティレは戦場から離れてリーベを探しているのだ。
「ったく、どいつもこいつも……」
「何?」
「何でもねぇよ」
「そう」
俺が悪態をついたのに気付くも、シュティレはリーベを探す。
俺も出来る限り協力するために、戦場を見渡すことにした。
「……ん?」
見渡していると、空をとんでもない速さで動くデカイ黒い何かと、これまたとんでもない速さで動く人間らしき豆粒が交戦しているようだった。
「おい、シュティレ。もしかしてあれじゃないか?」
あんな速さで動ける人間はリーベくらいしかいないだろう。
俺はその何か同士が闘っている方向を指差し、シュティレに確認させる。
「……確かにリーベ。闘っている相手は……ドラゴン?」
一瞬だけちゃんと見えたが、羽が生えた黒いトカゲのようだ。
どうやらドラゴンらしい。
爬虫類が空飛ぶなよ。何かと空飛びたがるな、この世界のヤツらは。
「ただのドラゴンならリーベの速度に付いていけるはずがない。スキルで鑑定してステータスを見る」
シュティレは黒トカゲに鑑定スキルを使用するため、目の赤い光を止め、今度は青く光らせた。
だからロボか、お前は。
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終焉の黒龍 レベル:999/999
HP:9999/9999 MP:9250/9250
攻撃力:9999
耐久力:9999
敏 捷:5668
知 性:5264
幸 運:0
スキル:【ブレス】【黒炎】【黒魔法】【飛翔】【鑑定】【障壁貫通】【絶対障壁】【自動回復】【魔物統率】【経験値百倍】
称 号:【四大災厄】
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「…………」
シュティレは突如、怯えるように震え始めた。
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