綾部帝国〜南北朝時代〜

鷹山トシキ

第1話

 『獄門島』などを講義する大学教授の綾部一平あやべいっぺいは博多市にて愛する妻子とともに幸せな毎日を過ごしていたが、ある朝警察が自宅に突入して妻の海子うみこが殺人容疑で逮捕されてしまう。


 3年が経ち、一平は一人で息子を育てながら、妻の無実を証明するため懸命に奔走していた。しかし、裁判で海子に不利な証拠が提出され、覆ることなく遂に殺人罪が確定してしまう。絶望し、獄中で自殺未遂を起こした海子をみて一平は決断を下す。「彼女の人生と家族の幸せを取り戻す」それは命を懸けた決断だった。


 一平は生活の全てを犠牲にし、孤独や恐怖に苛まれながらも、海子を脱獄させることを考える。脱獄経験者、遠藤修えんどうおさむの「誰も信じるな」という忠告を聞き、綿密な脱獄計画を練り上げていく。家具を売るなどして逃亡資金を工面し、偽のパスポート、運転免許証、社会保障番号などを手に入れる。


 一平が準備を進める中、突然海子が別の刑務所への移送が3日後に迫っていることが判明する。逃亡資金は目標額を工面できておらず、銀行強盗まで考えるが、警備員の姿を見て思いとどまる。追い詰められた一平は麻薬密売人を襲撃して金を奪う。


 翌日、海子の健康診断結果を偽装、刑務所から大学病院へ移送されるよう誘導し、海子との合流に成功する。しかし、昨夜の麻薬密売人を襲撃した際に乗っていたワゴンから警察に脱獄計画を察知されており、すぐに追っ手がかかる。


 2人は地下鉄、車で逃走し、途中で息子と合流し、空港から国外への逃亡を図ろうとするが、警察も一平の自宅のごみから逃亡計画先が韓国であることを割り出していた。しかし、それは一平の偽装であり、計画どおりパリへ逃亡を成功させるのだった。 一方で、海子が殺人を犯したとされる現場で、刑事が海子の無実に繋がる証拠を掴みかけるが、惜しくも失われてしまうのだった。

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