第58話 神に連なるワルキューレ
自衛隊員に混じり、戦後処理をしていると鎌倉上空に人員輸送用の軽戦闘ヘリが現れる。
ヘリはゆっくりと高度を下げ、海岸の広い場所に着陸した。ドアが開き、数人のワルキューレが降りてくる。
全員が高天原女学院の制服に身を包んでいた。そして、その中の一人が少し怒ったように心愛に近付いていく。
「おっ! やっと来たかおっせーぞ」
「心愛! 毎度毎度貴女は勝手に先走って!」
「んだよ。そんなに怒るなって瑞菜~。甘いもの食べて落ち着け。な?」
「誰のせいだと……! パラシュートも着けずに高度千メートルから飛び降りたときはさすがに肝が冷えたのに!」
「そんなのあったら邪魔だし、何よりアサルトのジェット噴射を逆にすれば問題ねぇって知ってるだろ? 怒りすぎると禿げるぞ?」
「貴女のせいでしょうがぁぁぁぁぁぁ!!」
心愛の肩を掴み、前後に揺さぶる少女の出現に百合花たちがぽかんとしていた。
我が強いことで有名な聖蘭の綾埜や杏華ですら、目の前で繰り広げられる光景に何も言えないでいた。香織と葵に至ってはもう気にすることなく瓦礫の撤去作業に戻ろうとしている。
と、ようやく集団から少女が一人歩み出る。
「まぁまぁそこまでにしときなって。このままだとあーしらの印象が奇天烈ちゃんになっちゃうよ?」
「はっ! それもそうですね。それは困ります」
心愛の肩から手を離し、少女が衣服を正した。
百合花たちへと向き直ると、ピシッと背筋を伸ばし姿勢を整える。
「百合ヶ咲学園の皆様。それに、聖蘭黒百合学園の皆様。この度は私共のお見苦しい姿を見せてしまい、大変申し訳ございませんでした!」
「そこまでちゃんと謝らなくても……別に気にしてないから大丈夫だよ」
「ありがとうございます。……自己紹介が遅れていましたね。私は
「階級?」
「これは失礼しました。高天原女学院では、ホロゥ戦の戦績によるスコアや普段の態度によって生徒は階級に分けられるのです。上からグランドマスター、マスター、ダイヤモンド、プラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズとなっています」
「こいつ、お堅い生徒会長タイプで面倒なんだがグランドマスターでもトップクラスの戦績を叩きだしてるから強く言い返すことができないんだよな。ちなみに、俺の階級はマスターだぜ」
「階級……! なんと琴線にビビッと触れる響き……!」
綾埜が反応したことで、さすがにこの後に続く事の邪魔をさせるわけにはいかないと杏華が綾埜を退散させる。杏華も変わり者だが、礼儀はしっかりとしていた。
瑞菜が後ろにいた数人を横一列に並ばせた。その際、三人が渋々といった感じを見せていたため、これが校長と彩花が言っていた改革派とそうでない者の違いなのだと百合花は察した。
「皆さんに私たちのことを知ってもらいましょう。自己紹介をお願いします」
「じゃあ、あーしからいくわ。あーしは
「私は
「宮子は一年生。戦績は階級換算でダイヤモンドかマスターだと私は保証しますよ」
「私の名前は
「……」
「ほら。次、咲の番ですよ」
「チッ。……
「咲! ……先輩方も自己紹介をお願いします」
「……
「
「……すみません失礼な態度で」
「大丈夫大丈夫、気にしないで」
三人に変わって頭を下げる瑞菜を百合花が止めた。
咲たち三人と仲良くするのは難しそうだが、瑞菜たちとは問題なくやっていけそうだと考える。聖蘭と違って通訳がいらない分、他の百合ヶ咲の生徒も親しみやすいかもしれない。
「私は西園寺百合花です。よろしくお願いしますね」
「私は御劔杏華! 闇を引き裂く青き閃光の使い手にして、悪しき邪悪を裁く冥界よりの使者!」
「きも」
「お前何言ってんだ?」
「あー……そういや聖蘭はこのテンションだったわ忘れてた」
「咲! 心愛! 翼様! ほんとすみません申し訳ありません!」
「あんたら……覚えておきなさいよ……!」
「あはは……瑞菜さんも苦労してるんですね」
すぐに問題を起こしそうな仲間たちのフォローが仕事だと思うと、苦労が察せられた。
とりあえず、八人を校舎まで案内することにする。
これで百合花たちとしばらく合同で訓練する全員が揃った。この先の日々がどんなものになるか、集まった仲間たちを思い浮かべながら考える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます