第34話 ついにミシェルが俺のものになった~レオ視点~
ミシェルに婚約を申し込む日を迎えた。
「レオ、今日は出来るだけ早く帰って来いよ。ホテルまでは3時間くらいかかるからな」
「わかっているよ」
正直今日は騎士団の稽古を休みたかったが、そんな事をしてはユーグラテスに怪しまれる。仕方なく今日もいつも通り稽古場へと向かった。
「おはようレオ。明日はいよいよミシェル嬢が帰ってくる日だな。よかったな、レオ。やっとミシェル嬢に会えるな」
ジルが俺に声を掛けて来た。こいつにはこの2年半、主に情報を提供してもらうと言う協力を受けていたからな。
「ジル、今まで色々とミシェルの情報を提供してくれてありがとう。お前には感謝しているよ」
「はぁ、当たり前だろう。俺がシュミナに片思いしていた時、お前には随分世話になったんだからな。これでチャラだな」
そう言って笑ったジル。こいつ、本当にいい奴だな。
その後稽古が始まった。正直ミシェルの事で頭がいっぱいで身が入らない。
「レオ、もっと集中しろ!」
何度も騎士団長から注意を受けたが、どうしても今日は集中できない。
「はぁ、レオ。お前今日はもう帰れ。今のお前が稽古をしても、下手をすると怪我をするだけだ」
騎士団長の有難い言葉に従い、急いで帰る準備を始めた。そんな俺の前に現れたのは、ユーグラテスだ。
「レオ、今日は随分と稽古に身が入っていなかったようだね。まあ、明日ミシェル嬢が帰ってくるのだから、気持ちは分かるよ。僕も早くミシェル嬢に会いたいよ。きっと物凄く奇麗になっているんだろうね」
そう言うと、うっとりとした表情をするユーグラテス。ふざけるな!ミシェルを想像するな!ミシェルは俺のものだぞ!でも、まあいいか。今日正式にミシェルは俺のものになるんだ。
「悪いがユーグラテス。俺はもう帰るから。それじゃあ」
そう言い残し、急いで家に帰った。
「レオ、随分早かったわね。まだお父様はお仕事から帰って来ていないわよ」
母上が話しかけて来た。
「今日は稽古どころじゃなかったからね。団長に帰された。とにかく俺は今から準備をするから」
急いで部屋に戻り、汗を洗い流した。そして、ミシェルの瞳の色でもある青いスーツに袖を通す。
準備が整うと待ちきれず、玄関へと向かった。玄関でウロウロしていると、父上が帰って来た。
「なんだレオ。もう準備を終えたのか。そんなところでウロウロしていても、まだ出発しないぞ。呼びに行くまで部屋で待っていろ」
父上に言われ、仕方なく部屋に戻った。部屋に戻っても落ち着かず、部屋中をウロウロと歩き回る。
しばらくすると、やっと執事が俺を呼びに来た。
父上と母上と一緒に急いで馬車へと乗り込んだ。やっとミシェルに会えると思うと、やはり落ち着かない。もし、俺との婚約を断られたらどうしよう。いや、大丈夫だ。あいつはユーグラテスを嫌っている。
ジルの話でも、ミシェルは相変わらずユーグラテスが嫌いな様だし。きっと大丈夫だ。
「レオ、そんなに緊張しなくても大丈夫だ。ミシェルはきっと断らない」
「そうよ、レオ。ミシェルちゃんはきっと断らないわ」
どうやら俺が物凄く緊張しているのがバレていた様で、両親に励まされてしまった。馬車に揺られる事3時間、やっと今日ミシェルが泊まる予定のホテルに着いた。
ホテル側が準備をしてくれた部屋へと通される。そこには既にミシェルの両親も来ていた。
「わざわざこんな所まで来てもらって悪かったな。もうすぐミシェルも到着する様だから、座って待っていてくれ」
公爵に言われ、とりあえず座ったものの、もうすぐミシェルに会えると思うと、じっとしていられない。つい立ち上がり、ウロウロと歩いてしまう。
「おいレオ。目障りだ。じっとしていろ!」
父上に叱られ、仕方なく座った。その時だった。
コンコン
「失礼いたします。お嬢様が到着されました」
2年半ぶりに見るミシェルの専属メイド、ルシアナが呼びに来た。ルシアナを見た瞬間、本当にミシェルにもうすぐ会えるのだと実感した。
「ありがとう、ルシアナ。それじゃあ私たちはミシェルを迎えに行って来るから」
そう言い残し、ミシェルの両親は出て行った。
「いよいよね。きっとミシェルちゃん、めちゃくちゃ奇麗になっているのでしょうね。楽しみね。レオ」
母上が俺に話しかけてきたが、正直俺はそれどころではない。ミシェルに会えると言う喜びと、婚約を申し込むと言う緊張で頭の中がグチャグチャだ。
しばらくすると、公爵たちが戻って来た。部屋にゆっくり入って来るミシェル。
嘘だろう…
目の前に現れたミシェルは、あり得ない程美しく成長していた。腰まで伸びた美しいストロベリーブロンドにクリっとした瞳。乗馬をやっているせいか、引き締まったウエストに、ふっくら膨らみを帯びたバスト。
完全に見とれてしまった。
おっといけない、見とれている場合じゃなかった。
「ミシェル、久しぶりだな!随分奇麗になって、見違えたよ」
俺がミシェルに声を掛けると、“会いたかったわ”そう言って、俺に抱き着いて来たミシェル。久しぶりに触れるミシェルは、柔らかくて温かい。それに、いい匂いもする。全身から湧き上がる興奮を必死に抑え、俺もミシェルをギューッと抱きしめた。
ミシェルだ、やっと会えた!もう絶対に離したくない!そんな思いからギューギュー抱きしめた。
その後ミシェルといつもの様に冗談を言い合っていると、足元で犬が吠えた。犬の方を見ると、嬉しそうに尻尾を振ったモコモコの茶色い犬が目に付いた。
「お前がチャチャだな。ミシェルとずっと一緒に居てくれて、ありがとな」
チャチャを抱き上げ、お礼を言うと嬉しそうに俺の顔を舐めて来る。こいつ、可愛いな!ミシェルが可愛がるのも無理はない。
そんな俺たちに声を掛けてきたのは、ミシェルの父親だ。チャチャを床に降ろし、椅子に座った。
いよいよ本題に入る様だ。公爵がミシェルに、ユーグラテスがまだミシェルを諦めていない事、再び結婚の申し込みをしようとしている旨を伝えた。
ミシェル、また怯えるかな?そう思ったのだが、意外と冷静に対応していた。どうやらガーディアン嬢から事前に情報を仕入れていた様だ。
それに対し公爵が
「それじゃあお前は、第二王子との婚約を受け入れるつもりなのかい?」
なんて、ふざけた事を抜かしやがった。ふざけるな!そう抗議をしようとしたのだが、それより先にミシェルが全否定し、ホッとした。
そんなミシェルを見て苦笑いの公爵。そして、ついに俺との婚約話をミシェルに話した。かなり驚いた顔のミシェルが、俺の方を見た。
「ミシェル、俺は物心ついた時からお前が好きだ!この気持ちは誰にも負けない!絶対お前を幸せにする。だから、俺を選んで欲しい!それに、もし俺との結婚話を断れば、お前はユーグラテスと婚約する事になるんだぞ。嫌だろう?」
ミシェルに俺の気持ちを伝えた。ちょっと卑怯かもしれないが、ユーグラテスを引き合いに出した。そんな俺に、援護射撃を送ってくれた父上。
俺たちの言葉を聞き、なぜか泣き出してしまったミシェル。どういう事だ?そんなに俺との婚約が嫌なのか!俺の中で、不安が一気に沸き上がる。
そんな俺の不安を打ち消してくれたのは、ミシェルだった。
俺の前まで来ると
「レオ、私もあなたが大好きよ。こんな私で良ければ、よろしくお願いします」
そう言って頭を下げたミシェル。
今俺の事を好きだと言ったよな!という事は…
よっしゃーーーーー!!
嬉しくて目の前のミシェルをギューギュー抱きしめた。やった、これでミシェルは俺のものだ!もう二度と離さない!
一気に溢れ出す気持ちを押さえられない俺は、その後ミシェルを抱きかかえて離さなかった。
婚約の書類にサインをし、明日提出すれば正真正銘、俺とミシェルは婚約者同士だ。
もう二度と離さない!
ユーグラテスにも絶対に近寄らせない。ミシェルは俺のものなんだから!
そうだ!学院に入学したら、基本的にミシェルの側にずっと居よう。こいつは無駄に美しいからな!
変な虫が付いたら大変だ!ミシェルを抱きしめながら、そう心に決めたレオなのであった。
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