第3話 体型を何とかしたい
ふと鏡に映る自分を見る。そう言えば、1回目の生では、少しふくよかだった私。おデブと言うほどでもないが、美しいとも言い難い。あの頃の私は、どんな姿でも愛されると完全に勘違いしていた。
そうよね。やっぱり女性は美しくなくっちゃ。とにかく、もう少し痩せよう。でも、どうやって痩せればいいのかしら?
早速うら若きメイドたちを呼び出した。もちろん、その中にはルシアナも混ざっている。
「急に呼び出してごめんなさい!実は折り入って相談があるの!」
いつもの様に理不尽に怒鳴りつけられるのかと思ったルシアナ以外のメイドたちは、思いがけない私の言葉に一瞬目を大きく見開いた。
そう、私はルシアナ以外のメイドたちに、嫌われている。1回目の生の時、その事に気づきながらも、“メイドに嫌われても痛くもかゆくもないわ!”と開き直っていた。でも、結局私の傲慢な態度のせいで、この子達まで第二王太子の味方をする事になってしまったのだ。
そう、悪いのは私よ!決して裏切ったメイドたちが悪いわけではないのよ。決してね!だから今回の生では、絶対に失敗しない様仲良くしたいのだ!
「お嬢様、相談とは何ですか?」
相談があると言ったものの、一向に口を開かない私に業を煮やしたのか、ルシアナが私に聞き返して来た。
「実はね。私、もっと奇麗になりたいの。正直ちょっとぽっちゃりしているでしょう?だから、もう少し痩せたいなって思って。それから、もっと女性を磨きたいって言うか…でも、どうしていいかわからなくて。それで、うら若きあなた達にアドバイスを貰おうと思って!」
私の言葉にさらに目を丸くするメイドたち。口をあんぐり開けて固まっている者までいる。
「私本気なのよ。今まで傲慢な態度を取って居た事も、悪かったって思っているの!だからお願い!どんな事でもいいから、私にアドバイスをくれないかしら?」
しばらく沈黙が流れた後、1人のメイドが口を開いた。
「お嬢様は、その…好き嫌いが多いので、もう少し何でも食べると良いかと思います。後は、毎日の運動も大切かと…」
控えめながらもはっきりと答えるこの子は確か、私より5つ上のエレナだったわ。平民出身という事で、今まで随分とバカにしていた。それなのに、こんな私にアドバイスをくれるなんて、よく考えたらめちゃくちゃいい子じゃない!
「エレナ、アドバイスありがとう。運動とは具体的にどの様な事をすればいいの?」
私の言葉に、驚いた顔のメイドたち。
「そうですね。ウォーキングなどはいかがでしょう。後はダンスも良いかと」
なるほど、ウォーキングにダンスか。そう言えば、1回目の生の時は、ダンスが苦手だったわね。運動がてら、ダンスをマスターするのもいいかもしれないわ。
「ありがとう!そう言えば午後はダンスのレッスンがあったわね。しっかり練習して、汗を流すわ!他にも何かあれば教えて」
私の言葉におかしそうに笑うルシアナ。その姿を見て、周りは凍り付く。そう、1回目の生の時から、ルシアナは私に物怖じしなかった。何度怒鳴りつけても癇癪を起こしても、軽くスルーしていたのだ。
そんなルシアナの姿を気に入り、いつしかルシアナのみを信用するようになっていた。でも、そのせいでルシアナは他のメイドから距離を取られていたみたい。その事に腹を立てて、よく他のメイドを怒鳴りつけていたわね。
今思えば、そんな事をしたらルシアナの立場が悪くなるばかりなのに。本当に、あの頃の私はどうかしていたわ。
「ルシアナ、笑いすぎよ」
頬を膨らまして怒る私に、皆目を丸くしていた。
よし、食生活と運動が大切なのね。そして迎えた午後のダンスレッスン。それはそれは一生懸命練習した。でも日頃の練習不足のせいで、すぐにへばってしまったが…
それでも先生からは
「お嬢様、今日は一生懸命練習されて、素晴らしいですわ。まだまだ練習が必要ですが、その調子で頑張りましょうね」
と、お褒めの言葉を頂いた。
そして夕食時、嫌いなブロッコリーも人参も残さず食べた。もちろん、鼻をつまんでだが。その姿を見て、お父様とお母様が目を丸くしていた。
今までの私なら迷わず残していたものね。大好きなデザートも1皿で我慢した。
そして翌日から、メイドたちと一緒にウォークングを始めた。最初は怯えながら接していたメイドたちも、次第に慣れてきたのか
「お嬢様、もっと歩きますよ!」
「お嬢様、この食材がお肌にいいそうです!」
「お嬢様、お菓子の食べすぎです!このままでは、子豚になってしまいますよ」
などなど。私これでも公爵令嬢なんだけれど…と思う事もあったが、そのたびに自分を戒めた。
私の事を思ってアドバイスしてくれているメイドに文句を言ったら、また1度目の生みたいに何もかも失うわよ!ってね。
私の行動を見て、お父様とお母様も感動した様で
「ミシェル、最近随分ダンスや運動を頑張っているみたいね。野菜も食べるようになったし。何があったかは知らないが、とても良い事だよ」
そう言って抱きしめてくれた。
そんな日々を続けて1ヶ月が経過した。ぽっちゃりしていた体も随分と引き締まったうえ、なぜか肌も以前より奇麗になった。そして体力も付いたおかげか、ダンスも随分とスムーズに踊れるようになった。
「ありがとう。皆のおかげで、随分奇麗になったわ」
私は協力してくれたメイドたちを呼び出し、お礼を言う。
「これ、協力してくれたお礼。大したものじゃないけれど、王都で人気のアクセサリーらしいの。好きな物を1つ選んで」
私の言葉に嬉しそうに頬を緩め、アクセサリーを選び始めたメイドたち。
実は前々から一生懸命協力してくれる皆に、何かしたいとずっと考えていた。でも、誰かに何かをした経験がほとんど無かった私は、何をすれば喜ばれるのかわからない。そのため、お母様に相談したのだ。
そうしたら
「何かプレゼントを贈ればいいんじゃない?ミシェルも誰かから何かプレゼントされると、嬉しいでしょう」
そう言って頭を撫でてくれた。
結局自分では何を選べばいいかわからなかったので、お母様のアドバイス通り、アクセサリーにしたのだ。
今思えば、私って本当に人の気持ちがわからない人間よね。それにかなりの無知だし。本当に17年も生きて来たのに、何を学んできたのかしら…
自分でも呆れているところに、アクセサリーを選び終わったメイドたちが声を掛けて来た。
「お嬢様、素敵なプレゼントありがとうございます」
「「「ありがとうございます」」」」
みんなが笑顔で頭を下げる。その姿を見て、なんだか胸の奥が熱くなり、私も自然と笑顔になる。
「喜んでもらえて、私も嬉しいわ」
素直に自分の気持ちを伝えた。そうか、人に感謝されるのって、こんなに嬉しいものなのね。
「お嬢様、随分と体が引き締まって来ましたが、油断は禁物ですよ。これからも好き嫌いなく食事をし、毎日のウォーキングは欠かさず行ってください。いいですね!」
ルシアナに釘を刺されてしまった。
「もちろん!これからも頑張るわよ」
こうして、私の体型改造計画?は、何とか成功したのだった。
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