語り部お宿の一夜集
見地話せんり
ある旅人が語る話
え、なんだ?
……まいった。
そうここから、遠くに離れた小国での話だ――
◆・◇・◆・◇
ある国に、良質な紙の原料となる草が大量に生える山があった。陽の光をあびて緑色にかがやくさまは見る者らの心をうるおし、多くの
こうして小国でありながらも豊かさはあり、観光と
それとは一夜にして根元を残すだけで、草がすべて
国は山を見張らせるなどの対処をおこなってはみたが、広大な山のすみずみまでも見張ることなどは当然不可能だと。子どもですら容易にも理解していた。
ろくな対策もとれぬまま、事件の解決糸口もみつからず無情に草はほとんど刈られ続ける。人々の胸の内に広がってく不安感情はいつしかに言葉となって、この事件の背景にと
『もしかして、
誰ともなしにつぶやいた、
しかしいくら村長が危機を
そんなとき一人の少年が、草を刈る者の正体を確かめようと決心する。この少年は幼いながらもかなり広い視野もつためそれなりに有名であり。何事であれ自分で見てから判断しなければ決して、好転しないと考える性質だった。
少年が山へいってみると、まあ見張りの少ないことと言ったらない。そのおかげでたやすく山中入ること叶う。それから以降
それも一般的な山羊なんかではなくて、群れは空中を
その言いようもなく神秘的な山羊の群れを見て少年自身の胸に、
少年はもう身を潜めることをやめその身を乗りだした。ひときわ身体が大きい山羊――おそらく群れの
「お食事中申し訳ありませんが、草を全て食べきる前に
主は言葉をじっと聴き入っているように少年を見つめる。そして一度高く鳴き声を挙げたとたん群れはいっせいに山の上空を翔け、いったんは去っていった。
そのときがきっかけだった。国が資源となる草を、不思議な山羊らと公平に分かち合うようにした結果。やはりかこの小国はより
◆・◇・◆・◇
なんだ、わりとよくありそうな話だって? そりゃあすまなかった。オレが知っているのはこれぐらいだよ。でもこれは、おとぎ話なんかじゃなくて――本当のこと。なんと言ったって、その小国って俺の故郷だからな! なに、その少年実際には昔の自分でないのか? さて、ご想像におまかせするかな。それ明言とかしない方がいいだろうし。ええっ、それはほぼ明言してるも同じだ? いやこりゃあまいったねぇ。
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