これもまた、禁断の恋

@Ailice_to_K

第1話 彼を好きになる前の話

私には付き合って一年になる彼氏がいる


身長がすらっと高くて、優しくて、毎日私に「好き」と「可愛いを」惜しまない人

ただ彼には1つだけ欠点があった


「ねぇ、足が痛い」

「もう腰も痛くて起き上がれない」

「仕事行きたくない」

「仕事辞めたい、転職したい」


私達は同学年、年は彼が2つ上

一緒に大学を卒業して働き出した


私は学生時代、良くアルバイトもしてきたし精神的には強かったから、運送業なんて大変な仕事に就いた今も毎日苦にならずに働いていた


けど彼といったらどうだ

毎日毎日仕事の愚痴ばかりをSNSで送ってくるし、会っても体調不良だ満身創痍だと私の話なんて1つも聞く耳を持たない


疑問を抱くには充分な理由だった

「私達、なんの為に付き合ってるの?」

それを、彼に伝えた

沢山縋られた

でももう、嬉しくなかった

もう愛せはしなかった


私は俗に言う、「バイセクシャル」だった

男性も女性も平等に愛せたし、身体の関係を持つことに違和感も無かった

長く付き合った彼と別れたあとにする事なんて男も女も等しく決まっている


適当なSNSの捨て垢

適当に持った別人のような自撮りに

ハッシュタグ「LGBTさんと繋がりたい」

そんな軽薄な内容の呟きにすら、沢山のいいねがついて、沢山のDMが来る


マッチングアプリなんてものもあった

でも、マッチングアプリでは男性としか出会えない

誰でも良かった、寂しさを埋めるためなら

男でも、女でも


そんな人はこの地球上には沢山いて、需要と供給が釣り合えばそれで良い

会いたいだの、寂しいだの、理由はそれだけで良い



そんな生活を数週間続けて、連絡も途絶えだしたある日

一人の「男性」から連絡が来る


「おはようございます!良かったら絡みませんかー?」

「ありがとうございます!今日は出かけるので帰ってからの連絡でも良いですか??」

「今日お休みなんだ!友達とですかー?」

「いいえ、一人です笑」

「え、じゃあ俺も行きたい」


本当に短いやり取りだったが、私と彼は会うことになった


待ち合わせの繁華街へ行くまでの電車で少ししたやり取りでわかったことは

彼はFtMであること

FtMとは心は男の子だが、身体が女の子として生まれてきた人の事であること

私より10も年上の33歳であること

私の住むところからバイクで1時間ほどの所に住んでいることだった


情報はこれだけ。でも充分だった

だって寂しさを紛らわせる為だけの相手だ

詳しすぎる情報なんて本来の目的を曇らせる

あくまでハマリ過ぎないように、気を付ける

ハマリ過ぎればきっと、また疲れてしまうから


私自身FtMに出会うのは初めてで、緊張していた。どんな人なんだろう


「私こんな服です」

メッセージと一緒に添付した写真を送ると

「あ、見つけた」

「え、どこですか?」

「あててみて?笑」

そんな私と目が合ったのは、一人の男性だった

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