長門有希の憂鬱Ⅰ
のまど
プロローグ
窓の外は
今年ももうすぐクリスマスだねー、などとクラスの女子がのたまっているのを、俺はぼんやりと
振り向いて後ろの席にいるやつに、今年のクリパはやっぱ部室でやるのか、と
「キョン、あんた進学するの?」
いきなりなにを言うかと思ったら。
「そりゃあ大学行きたいさ」
「どこ受けるの?」
「う……」俺の成績から言ってあまり
自宅から通える距離でそれほどレベルの高くない県立か、多少金かかっても親を
「もう二学期終わるんだし、まじめに考えなさいよね」
言われなくても分かってるさハルヒさん。俺だってもっと遊びたいもん。いかんせん、俺の学力が。
「あんた、あたしと同じ大学受けなさい」
「な、何を言い出すんだ」
「だってあんたがいないとサークルでSOS団やれないじゃない」
大学行ってまでやる気かこの女は。
「無理だ。俺の成績は知ってるだろ」
「今から必死で勉強しなさい。大学受験なんてね、日ごろのテストの
そりゃお前はいつでも成績が上位レベルにいるからそう言えるだろうが。
「別に同じ大学じゃなくったってSOS団は続けられるだろう」
「あんただけ
「シメシったってなぁお前……ヤーさまじゃあるまいし」ある意味ヤクザよりこわい集団だが。
だがまあハルヒがそこまで言うなら受けてやってもいい。こいつが望めばなんでも
それにしても、今が受験
「やれやれ。また
「あんた、
そんな
などと
── 部活が引けた後、
この時期になにかハプニングが起るとしたら、それは最悪の
「うーんっ。じゃ、そろそろ帰るわね」
ハルヒが
「
部室に入るなり
「これです」
「これがどうかしたのか」
「
「なんですかこれ?
「いいえ、知る限り、
「何が書いてあるんだ?」
「まだ数ページしか読んでないんですが、かいつまんで言えば我々SOS団、およびその周辺で起ったエピソードです。気になるのはあなたの
「まさか、俺じゃない。俺が作家志望じゃないことはいつぞやの
「分かっていますよ」
俺はパラパラとページをめくってみた。
「待ってください。内容はまだ読まないほうがいいかと。これからご説明します」
「
ハルヒが
「これ本屋に売ってるのか」
「いいえ、書店にはありません」
「あたしもたまに読むんですけど……これは見たことがないです」
「昨日僕の家の郵便受けに届けられていたのです。
「つまり直接手で届けたってことか」
「そうです」
「この、タニカワリュウって誰なんだ」
「たにがわ、ながる、です。現在のところ不明です。
「ペンネームじゃないのか」
「ええ、たぶんそうだと思います。
「どっかの
「
「お前やけに詳しいな」
「僕もやってますから」
そうだったのか。俺はリュックを
「ハルヒ本人に聞いてみればいいいじゃないか」
「それもまた困るのです。いいですか、この本が存在することによって二つのことが
「読んだお前自身は平気なのか」
「まだ全部は読んでいないので分かりませんが、今のところ平気みたいです」
「
「ライトノベルは……」ためすつがめすついじっていたが、やがて口を開いた。
「……趣味に合わない」いやそういうことじゃなくて。
「この本を構成する炭素、および鉄その他の
えーと、つまり?
「電子の
「つまりこれはこの世界のモノじゃないということですか」
「そう」
「
「この世界で物理的に見えるためだけのなんらかの
「まったく
「今報告した……ラノベはよく分からないと言っている」
いつも
「鉛筆……かして」
鉛筆?俺はペン立てにあったやつを渡した。
「何をしてる?」
「
鉛筆の
それから
「調べて」
「なるほど。ちょっとした探偵気分ですね。後で
「俺が触った
「それは
俺の個人情報がそんなところで使いまわされていたなんて恐ろしい。
「
「ごめんなさい。分かりません……。ひとつだけ、この本は未来には存在しない、みたいです」
「なんですって?」
どういうことだろう?俺だけピンと来てない。
「つまり、今から
「この
「ほかのどの時間平面上にも存在しない」
「こうは考えられませんか。この本は今、確かに我々の
「それも
「今、その本に関する情報が思念体において
ヤバい。これはなにかヤバいことが起る前触れだぞ。俺の中の何かがそう
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